英国出身の“デスマッチプリンス”は努力の人 来日3年、独学で学んだ日本語はペラペラ

タケダさん、逃しません! 流暢な日本語を駆使するイギリス・ウェールズからの刺客、ドリュー・パーカーが“クレイジーキッド”竹田誠志のノド元にドスを突きつけた。

狂気の表情で暴れるドリュー・パーカー【写真:柴田惣一】
狂気の表情で暴れるドリュー・パーカー【写真:柴田惣一】

外国人選手の中でも屈指の日本語力

 タケダさん、逃しません! 流暢な日本語を駆使するイギリス・ウェールズからの刺客、ドリュー・パーカーが“クレイジーキッド”竹田誠志のノド元にドスを突きつけた。

 愛妻の急死という不幸からデスマッチのリングに戻ってきたばかりの竹田。まな娘はまだ幼く、以前のようなペースで試合参戦とはいかない。状況を見ながらFREEDOMSなどに上がる目算を立てていたはず。

 ところが復帰早々、標的にされてしまった。大日本プロレスを離れ、世界のデスマッチ団体に爪痕を残した後、日本に再上陸してきたドリューである。以前から竹田を最終ターゲットとしていたが、その竹田が主戦場とするFREEDOMSのリングにスクランブル参戦してきた。

 竹田は大日本プロレス、FREEDOMSと日本が誇るデスマッチ団体だけでなく、米GCWのデスマッチ王座を獲得している。世界一のデスマッチファイターを目指すドリューにしてみれば、憧れであると同時に乗り越えなければいけない敵なのだ。

 竹田の半年ぶりの復帰戦7・10東京・後楽園ホール大会で、ドリューは6人タッグマッチで激突した。「さすが、タケダさんだった。半年のブランクも何も、一切、感じさせなかった。やはり、私のファイナルボスだよ」と振り返る。

 外国人選手がオーバージェスチャーを交えて英語でまくし立てるのも、視聴覚的に迫力があるが、流暢な日本語で冷静に言われるのは、背筋がゾッとするような、また別の意味で恐ろしさを感じる。

 それにしても達者な日本語を操るドリュー。多くのプロレス留学生が日本に修行にやってきたが、ここまでスムーズに話せる外国人はいなかった。大相撲から転身してきたキング・ハクや曙も、まるで日本人のようだったが、プロレス界しか経験していない選手の中では、ピカイチといって差し支えないだろう。

 日本語学校に通ったことはない。とにかく独学で日本語を学んできた。日本のデスマッチにハマり、2019年に初来日。20年に大日本プロレスの所属となったが、大日本プロレスの道場・合宿所で若手選手と共同生活を送ったことが大きかったに違いない。

 外国人がまるでいない環境が、ドリューを超スピードで日本人化させた。とにかくコミュニケーションを取らなくては、お話にならない。トレーニングや練習はもちろんだが、ヴィーガン(完全菜食主義者)とあって、食事をするにも制約がある。ヴィーガン用の食材、食事を提供してくれるお店を探すためにも、何かと説明しなくてはいけない。人間、食べたいものを食するためには、必死になる。必要に迫られたこともあって、ドリューは着実に日本語を習得していった。

 元より、日本の人や文化が大好きなことも大きかった。リング上ではド迫力のデスマッチ戦士だが、リングを離れれば温和でお茶目な好青年。日本語を教えてくれ、何かとサポートしてくれる人の輪はどんどん広がっていった。

 日本語力アップとともにファイトでも大活躍。昨年6月には大日本の一騎当千で優勝し、7月はデスマッチ王座を奪取。その翌日に渡米しGCWのデスマッチ王座に君臨するという太平洋を股にかける偉業を成し遂げている。今年になっても5月に大日本のデスマッチベルトを腰に巻き、6月にはGCWのトーナメント・オブ・サバイバルを制した。

 すでに世界のデスマッチ界に、その名を轟かせたドリュー。現在、欲しいのはKING of FREEDOM WORLD CHAMPIONSHIP(KFC)だが、KFC王者・正岡大介に8月29日、後楽園ホール大会で挑戦する。そして、竹田の首だ。

 異国で、いや、今や第二の故郷である日本で、さらなる飛躍を目論む“クレイジーガイジン”が赤々と燃やす野望が、現実となるのか。それこそ見逃せない。

次のページへ (2/2) 【写真】ドリュー・パーカーに狙われる竹田誠志
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