白井光浩が語る清水宏次朗という男「スーパースター」 “ビーバップ”で実現した再共演
1980年代に一世を風靡(ふうび)した映画「ビー・バップ・ハイスクール」シリーズ。そんな名シリーズのオマージュ作品「ビーバップのおっさん」(旭正嗣監督)が24日から全国で順次公開される。同作は「高校与太郎哀歌」で“城東工業のテル”こと藤本輝男を演じた白井光浩と主人公・加藤浩志を演じた清水宏次朗がダブル主演することでも話題だ。そんな白井にとっての「ビー・バップ・ハイスクール」、そして清水の存在とは――。本人を直撃し、現在の心境を聞いた。
「ビー・バップ」後は役者を離れていた白井「ずっと演技をやりたかった」
1980年代に一世を風靡(ふうび)した映画「ビー・バップ・ハイスクール」シリーズ。そんな名シリーズのオマージュ作品「ビーバップのおっさん」(旭正嗣監督)が24日から全国で順次公開される。同作は「高校与太郎哀歌」で“城東工業のテル”こと藤本輝男を演じた白井光浩と主人公・加藤浩志を演じた清水宏次朗がダブル主演することでも話題だ。そんな白井にとっての「ビー・バップ・ハイスクール」、そして清水の存在とは――。本人を直撃し、現在の心境を聞いた。(取材・文=中村彰洋)
「ビーバップのおっさん」は、白井が藤元輝(テル)を清水が愛徳浩(ヒロシ)を演じ、50代のおっさん2人を中心にアクションあり、笑いあり、涙ありの痛快人情活劇を展開。80年代の人気映画・ドラマなどをオマージュした場面がたびたび登場するなど、当時のファンにとってはたまらない内容となっている。
そんな同作は白井が企画から携わり完成させた渾身の一作だ。「私を主演に何かの映画を撮りたいとオファーをいただきました。私はいろんな作品に携わらせていただきましたけど、やはりどこかで『ビー・バップ』の“城東のテル”がつきまとってくるんです。そういった意味でもオマージュ作品になったことは自然の流れかなと思います」。
今作は不安障害で活動休止状態だった清水にとって久々の本編。白井の熱望でダブル主演というキャスティングが実現した。
「元々、私が清水宏次朗さんのファンなんです。私にとっていいお兄さんなんです。ご病気をなさっていましたが、だんだん良くなっていたのを見ていたので、生意気ですが何かきっかけになってくれたらなと思いました。足がかりの一つに使ってもらいたいと思い、提案させていただきました。清水さんは『お前が言うんだったら』ということで二つ返事で快諾でした。特に悩んでなかったと感じています」
3年ほど前からプライベートでも交流するようになっていた白井と清水。食事などを共にするたびに、清水が役者として活躍する姿を見たいという気持ちが増していった。「一緒に仕事をしたいというよりも“俳優・清水宏次朗”をもう1回見たかったんです。僕たちにとってはスーパースターですからね。その上でできれば共演もしてみたかった。そういう意味では全てがいい方向にいきましたね」。
2人だけではなく、80年代に活躍した直江喜一、村澤寿彦、杉浦幸らも集結。非常に良い雰囲気で撮影も進んだ。
「この映画で共演してくれた役者の皆さんがこの映画に出ることを楽しみに、喜びを持って撮影に臨んでくれてました。お客さんも同世代が多くなると思うので、僕たちが面白ければ絶対にお客さんも面白いはずなんです。なので、役者さんそれぞれがアドリブを膨らましてみたり、楽しんでいましたね。オマージュネタも当時演じていた本人が面白おかしくやっていることが本作の魅力の1つです。“本物のオマージュ”になっていると思います」
「ビー・バップ」は「やんちゃしてた人間ばっかが集まってました(笑)」
白井にとっても俳優デビューのきっかけとなった「ビー・バップ・ハイスクール」のオマージュ作品で主演を務めることは大きな意味があった。「ビー・バップ・ハイスクール」出演後は、表舞台から離れ、2012年の復帰までは一般職に就いていた。
「当時はVシネマにたまに出させてもらったり、市民劇団での演劇に携わらせてもらったりしていました。まったく作品に出ていないというわけではなかったです。ただ、家庭の事情もあって、私生活を重視しなければいけない状況になったんです。それが落ち着いたので2012年ごろから、1から勉強させてもらうところから始めさせてもらいました」
“休業中”も俳優への思いが消えることはなかった。デビュー当時を回顧しながら演技への思いを吐露した。
「ずっと演技をやりたかったんです。元々子どものときから目立ちたがり屋だったのもありますね(笑)。実は父親が日本舞踊の師範なんです。家に稽古場があって、お弟子さんが毎日のように来ていました。そういう家だったので芸事みたいなものは自然と隣にあったんです。私も幼少のときにやっていたんですけど、その後は少年野球が面白くなって全然やらなくなってしまいました。本当は跡取り息子にならなきゃいけなかったんですけどね。でも、18歳のときにその血が騒いだんでしょうね。『ビー・バップ』のオーディションを受けたらたまたまいい役をいただけることになりました」
当時は役と違わず“やんちゃ”していたという白井。「『ビー・バップ』のオーディションっていうのはやんちゃしてた人間ばっかが集まってましたからね」と笑い飛ばした。
俳優復帰後は、映画や舞台などに出演。若手に混ざりワークショップなども経験した。「いい経験になりましたね。感覚で芝居をしちゃっていた部分もあったので、いろんな人の演出を受けることによってさまざまな考えができました。四の五の言わずにいろんなところに顔を出してましたね」。
18歳当時は「お祭りに参加している感覚」で臨んでいた役者仕事。しかし、年齢を重ねるに連れてその思いは強くなっていた。「自分の本当にやりたいことってどういうことなんだと考えたときに行き着いたってことでしょうね。やっていて自分の中で1番楽しいし充実しています。もちろんつらいこともいっぱいありますよ。自分の思うような芝居ができなかったり、脚本を読み解くのもそんなに簡単ではないです。せりふ入れもそうですね。ですが、やりがいがあって、自分の中で1番楽しいです。役者をやれているのは幸せです」。
現在54歳の白井だが、3年前にはYouTubeチャンネル「テルチャンネル」を開設。自身の素を発信することにも力を入れている。企画なども自ら考え、日々更新を続けている。現在の登録者数は5万人超と好評。「そんなに見てもらえるとは思ってなかったので、予想外だった」と白い歯を見せた。
「最近では大きな作品にも出させてもらっていますし、1番やりたかったことが演技なのでもちろん続けていきたいです。役者ってのは、死ぬ瞬間は死人の役をやればいいわけです。理想は動けなくなって病床に寝ているところでカメラを回してもらって、ご臨終になりそうなじいちゃんの役ってのができるようになればいいかなと思いますね」
休業期間があったからこそ、大好きな俳優を続けられる喜びをかみ締めた。
□白井光浩(シライ・ミツヒロ)1968年3月26日、神奈川県出身。86年東映映画「ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎哀歌」で“城東のテル”こと藤本輝男役でデビュー。際立った存在感とせりふまわしで人気を博し注目を浴びテルの一挙手一投足をまねする「テルチルドレン」が公開当時、高校生を中心に急増。舞台にて芝居の幅を広げ、近年の代表出演作にTBSドラマ「99.9 刑事専門弁護士 完全新作SP」(2021年)、映画「99.9 刑事専門弁護士 THE MOVIE」(22年)がある。
□「ビーバップのおっさん」
出演者:白井光浩、清水宏次朗、直江喜一、村澤寿彦、杉浦幸、脇知弘、永山たかし、園田あいか、杉本愛里、岩田まあり、古今亭志ん輔(特別出演)、小沢和義ほか
製作:ラフター
エグゼクティブプロデューサー:塩月隆史
脚本:今井ようじ
監督・プロデューサー:旭正嗣
○8月11日には、大阪朝日生命ホールにてプレミア上映予定