夏ボーナス、コロナ禍前より大幅減も…新たに浮上した意外な使い道は? 専門家に聞く

新型コロナウイルス禍に加えて物価高騰による生活のひっ迫が続く中で、今夏のボーナス支給の時期を迎えた。民間機関の実態調査では、コロナ禍前後で支給率が8.3ポイント(%)増加するも、平均支給額は「13万円減少」のデータが判明。使い道は“国民性”とも言われる貯金が最多で、68.1%が半分以上貯金すると回答したことも明らかになった。調査を担当した、働き方や社会人に関するさまざまな事柄を研究する「Job総研」(運営元:株式会社ライボ)の堀雅一室長に、今夏のボーナス事情から見えてくる現状を分析してもらった。

専門家が今夏のボーナス事情から見えてくる現状を分析(写真はイメージ)【写真:写真AC】
専門家が今夏のボーナス事情から見えてくる現状を分析(写真はイメージ)【写真:写真AC】

2019年からの「コロナ禍前後」で変化の分析結果 物価高騰と記録的円安の影響拡大か

 新型コロナウイルス禍に加えて物価高騰による生活のひっ迫が続く中で、今夏のボーナス支給の時期を迎えた。民間機関の実態調査では、コロナ禍前後で支給率が8.3ポイント(%)増加するも、平均支給額は「13万円減少」のデータが判明。使い道は“国民性”とも言われる貯金が最多で、68.1%が半分以上貯金すると回答したことも明らかになった。調査を担当した、働き方や社会人に関するさまざまな事柄を研究する「Job総研」(運営元:株式会社ライボ)の堀雅一室長に、今夏のボーナス事情から見えてくる現状を分析してもらった。(取材・文=吉原知也)

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 今回の実態調査は、インターネット形式で全国の20~50代男女を対象に6月22~27日に実施され、回答数は734人。2019年夏ボーナスからの推移を含めて取りまとめたものだ。

 今年22年は全体の70%が「支給あり」と回答し、その支給額の平均57.8万円という結果に。21年は58.6%が「支給あり」で、平均58.3万円。一方で、コロナ禍「前」にあたる19年は「支給あり」が全体の61.7%で、平均は70.8万円だった。ボーナスをもらった人は増えたものの、平均支給額は相当額が減少。また、中央値はいずれも60万円だった。

 堀氏は「今年は低い金額をもらっている人が多く、高額をもらっている人の数は昨年とあまり変わっていない印象です。支給率は昨年からは約11ポイント増えており、一度ボーナスをカットした企業が再開したと推定しています。とはいえ、企業側は経営状況から今まで通りの金額は渡せないという現状があるようで、『コロナ支援金』といった名目で、少額のボーナス・一時金を渡すケースが増えています。こうしたことが支給の平均額減少の1つの要因になっていると考えられます」と指摘する。また、「2021年に転職を検討している人の率がぐんと増えたというデータが取れています。企業側からすれば、人材流失を防ぐために、従業員に言わば『気持ちだけでも受け取って』という意味合いを込めて、人材維持に努力をしている側面もあると思います」との視点を加えた。

 注目されるのは、ボーナスの使い道だ。「預貯金」が64%で最多。貯金に回す額(平均43.2万円)については「ほぼ全額」が35%、「半分以上」が33.1%で、ボーナス支給あり回答者のうち68.1%が「今夏ボーナスを半分以上貯金する」という傾向が見られた。

 なぜ貯め込むのか。これは、同機関が今年4月に発表した「2022年貯金実態調査」(全国の20~69歳男女で就業する社会人を対象に741人が回答)の調査結果から見えてくるものがあるという。貯金の平均額は、全体では1087万円で中央値は500万円だった。堀氏によると、コロナ禍前後の貯金額増減について、37.1%が増えた派、20.7%が減った派、「変わらない」は36.8%だった。「減った理由」の内訳では、コロナ禍が影響した収入減と失業による理由が合計58%で、「在宅時間が増えて生活費が増加した」が38.3%を記録。一方で増えた理由には「在宅が増えて交際費の支出が減った」が最多65.1%となるなど、貯金額増減の要因はリモートワークや在宅時間の増加に伴うことが顕著に見受けられた。

 こうしたデータを踏まえて、「この調査では、社会情勢の不安による『老後への備え』が貯金をする理由として一番大きいものでした。さらに、ウクライナ情勢、記録的円安、物価高騰が重なっていて、日本経済の不安定さを感じるニュースも多く、『将来への備えはやっぱり必要』という考えがより強まってきているのでは。コロナ禍で貯金を切り崩して生活している人もいる中で、貯金への意識が高まっていると思います」と分析する。

 ボーナスの使い道について興味深いのが、38.7%の「買い物」に続いて、32.7%の「投資」が3番手になったことだ。「ローンや借入の返済」は11.1%だった。ボーナスと言えば、住宅ローン返済の充当、“自分へのご褒美”の買い物に使うイメージがあり、もらったら直結で投資に回すのは意外にも思える。堀氏は「背景には、投資にリスクがあるというイメージが薄れてきている中で、昨今は仮想通貨ブームもあり、投資のハードルが下がっている側面が考えられます。将来を見据えての資産形成もあると思いますが、1つの仕事で生活を回すのがだんだん難しくなっており、副収入を得ようと投資を始めているケースが多いのでは。月のお小遣い稼ぎをしたいという人もいれば、なんとかしてお金を増やしたいという人もいると思います」との見解を語った。

 ボーナスから見る、日本人のお金の使い方、貯め方は今後どうなるのか。堀氏はまず、コロナ禍自体に対する意識の変化に着目。「我々は『脱マスク意識調査』を行っているのですが、今年5月の調査では約87%の人が『今後もマスクの着用を続ける』と回答しています。現在集計を進めている調査では、『必要な場面に付けていればいい』といった意識の変化が生じてきています。また、コロナ禍の影響を受けた勤め先への不安による人材流動は減ってくるのではないかと考えられます。それに、最近では働き方の自由度、福利厚生の充実の観点から転職するケースが見受けられます」と説明する。

 そのうえで新たなフェーズに入ってきていることも指摘し、「お金のことについては、コロナ禍というより、物価高騰の長期化や少子高齢化対策に対する不安を受けて、より貯蓄に回す傾向が強まるのではないかと考えています。それはある意味、『将来・老後のことを考えなければいけない』と自分のいまの経済状況を見つめ直すきっかけにもなっていると思います。ただその結果、『ここは切り詰められる、少しでも余った分は貯金に回そう』と考えるようになり、消費意識よりも“守り”に入っていくのではないでしょうか」としている。

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