変わる旅行のあり方、旅先での出会い求める動きも 専門家「あまり見たことがない傾向」

新型コロナウイルス禍で国内旅行はどのように変わっていくのか。キーワードは「サステナブル」と「つながり」。リクルートの「じゃらんリサーチセンター」がこんな分析結果をまとめ、発表した。需要に回復の兆しが見える中、旅行に出会いを求める傾向が浮き彫りになるなど、リフレッシュ以外の目的も多様化。調査を行った主席研究員の森戸香奈子氏に聞いた。

コロナ禍で「旅行」の目的に変化が(写真はイメージ)【写真:写真AC】
コロナ禍で「旅行」の目的に変化が(写真はイメージ)【写真:写真AC】

家族連れに人気 グランピングの認知度が上昇

 新型コロナウイルス禍で国内旅行はどのように変わっていくのか。キーワードは「サステナブル」と「つながり」。リクルートの「じゃらんリサーチセンター」がこんな分析結果をまとめ、発表した。需要に回復の兆しが見える中、旅行に出会いを求める傾向が浮き彫りになるなど、リフレッシュ以外の目的も多様化。調査を行った主席研究員の森戸香奈子氏に聞いた。(取材・文=水沼一夫)

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 調査は2022年3月に行い、7月6日にオンラインで開催された「観光振興セミナー2022」で結果が発表された。

 コロナ禍は国内旅行に大きな影響を与え、さまざまな面で変化をもたらした。旅行者は遠出から近場、3密の回避など、ウィズコロナ時代に合わせたレジャーの楽しみ方を追求。その結果は、調査データにも反映された。

 コロナ禍で生まれてきた新しい旅行スタイルの認知度では、グランピングが71.2%で1位となった。前回(20年3月)より約17ポイントの上昇。道具や食材を用意しなくても、気軽に豪華なキャンプを楽しめるグランピングは、家族連れにも大人気だ。森戸氏は「アウトドア自体がどんどん一般人でも楽しめるように進化して、マーケットのすそ野を広げてきた流れがまず一つある。そこにコロナのなるべく密にならないという需要が出現してグランピングマーケットが伸びている」と分析した。

 また、3位には居住する場所を変えて働くワーケーションが58%で入り、16%ほど増加した。「宿側、地域側からすると、例えば平日の需要を埋めたい、できれば1泊だけではなく連泊もほしいという願いが元々あった。提供側と旅行者の需要がうまくマッチングした理想的な旅行のスタイルの一つです。業界としては、どんどん促進したいし、もっと加速していってほしいという思いはあります。ただ、マーケットとしてすごく大きいわけではないので、十分な需要が存在しているかこれから開拓していかなければならない面も強い」と、解説した。

 一方、今後、定着する旅のスタイルとしては、「サステナブル」と、「つながり」をキーワードに挙げた。

 サステナブルは若い世代を中心に、自然資源の保全やRe活用など、観光地の持続可能性を意識する旅行者が増えているという。

 森戸氏自身も、高校生に向けて行った講演で驚いた経験がある。「SDGs(持続可能な開発目標)が旅先で気になったシーンはありますか?と質問したんですよ。だいたいの方は、環境に関することをコメントされるのですが、『いまだにパンフレットを配っている』というコメントがありました。我々が想像するよりもはるかにSDGsへの意識が進んでいます」

 確かに紙でできているパンフレットはサステナブルではないかもしれない。限りある資源の有効活用が叫ばれる中、それだけで、旅先の候補から外れてしまう可能性もあるわけだ。

コロナ禍で減った人付き合い 旅に求める傾向も

「紙を減らすというよりは、デジタルにどんどん持っていこうという動きはやっぱりあります。スマホの中で完結するのは非常にストレスがない。アプリだったり、SNSを介しての情報提供は非常に効率的で、旅行者側からしても自分たちの旅行スタイルに合致しているという意味でどんどん加速している」。紙にQRコードを貼ってウェブと連動するハイブリッド型の情報発信が急速に普及しているのは、その一例だ。

 さらに、コロナ禍で人付き合いが減ったぶん、旅行につながりを求める傾向が顕著になった。感染拡大期ではできなかった高齢の両親を誘っての旅行や家族旅行はもちろん、観光地での交流など「新しい出会い」を求める兆しが見て取れるという。

「今まであまり見たことがない傾向ではあります。私も旅行によく行く方にインタビューすることが多いのですが、旅行好きの人って、必ずしも旅先の出会いを求めているわけではなくて、本当にレジャーとして旅行がただ好きなだけであって、別に地域との結びつきを求めているわけじゃないっていう方がほとんどですね。ただ、今回のこの定量調査では明らかに地域との何かしらの接点を求めている人が一部いるということを感じます」

 晩婚化や未婚化の影響で、単身世帯が増えていることも一因として挙げた。「単身世帯が増えているということも、社会的な背景に一つあるかなと思っています。ご家族とお住まいの方でしたら、家族で行ったり、パートナーがいる方はパートナーと旅行されたりとなるんでしょうけれども、単身の方はどこにそのつながりとかコミュニティーとか所属感みたいなものを持ったらいいのかなと検討している人たちは一定数いるんだろうなと思います」と話した。

 日本は世界経済フォーラムが5月下旬に発表した21年の旅行・観光開発力ランキングで初めて世界首位に立った。インバウンド(訪日外国人)の回復も含めて、旅行業界の期待が膨らむ中、これまでとは異なる国内旅行の楽しみ方にも注目が集まりそうだ。

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