54年前のポルシェパトカーは現存でたった1台 警察学校時代の“運命の出会い”

日本で現存する1台だけの「ポルシェ912 クーペ」のパトカーが、必要な整備や登録を経て2年前から公道を走っている。神奈川県警が実際に使用していた希少車。オーナーで、元同県警警察官の倉林高宏さん(63)にとっては青春の1台でもある。

倉林高宏さんのポルシェパトカーは赤色灯もばっちり健在だ【写真:ENCOUNT編集部】
倉林高宏さんのポルシェパトカーは赤色灯もばっちり健在だ【写真:ENCOUNT編集部】

京都、愛知、神奈川、静岡の各府県警計4台が導入されたが神奈川県警の1台のみ現存

 日本で現存する1台だけの「ポルシェ912 クーペ」のパトカーが、必要な整備や登録を経て2年前から公道を走っている。神奈川県警が実際に使用していた希少車。オーナーで、元同県警警察官の倉林高宏さん(63)にとっては青春の1台でもある。(取材・文=吉原知也)

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 激レアのポルシェパトカー。1968年式で同年から導入。高速道路の取り締まりと警戒を中心に活躍し、73年にエンジンが故障。その後は警察学校のロビーに約26年間展示されていたという。

 ちなみに、ポルシェ912のパトカーは京都、愛知、神奈川、静岡の各府県警に1台ずつ計4台が導入されたが、京都、愛知、静岡の3台は既に廃棄処分になっている。

 高校卒業後に警察官を拝命した倉林さん。交通畑で、白バイ隊員として19年間活動した経験を持つ。実は新人時代の1年間、このポルシェパトカーに接している。「警察学校の学生時代に、初めて見た時は、あっパトカーがあるな、ポルシェなんだ、程度でした(笑)。それよりも、メグロの白バイの展示に目が行っていましたよ」。当時は学生たちが毎日車体を磨き、倉林さんは休みの日に座席に座って昼寝をしていたという。

 そんな思い出の1台が展示の役割を終え、廃棄処分されると聞いた倉林さん。現存1台ということを知ったことで、「スクラップになることは避けたい」と奔走。民間の解体業者の手に渡ったところで、業者を約半年かけて説得。譲り受けた。

「静岡は赤色灯が2つ付いているんです」

「車に乗っているより、直している方が好き」というほど、幼少期から機械いじりが大好きで、バイク・車の修理が趣味。このポルシェパトカーはエンジンのオーバーホールなど、十数年かけて、約400万円を費やして走れる状態に復活させた。

 ボディー塗装は当時のまま。「神奈川県警察」の文字も残っている。実際に走行する場合は、文字の一部を隠し、今も点灯する赤色灯はカバーで覆い、ドライブを楽しんでいる。それに、助手席側のボンネットに付いているサイレンも“現役”だ。

 現在はできる限り多くのカーイベントに参加している。多くの人に見てもらい、驚いてもらうことが何よりの喜びだ。「ラジオは付いてないし、もちろんクーラーもない。それでも、快適に乗れますよ。エンジン音がいいんだよね」と顔をほころばす。

 今はもう存在しない、ポルシェパトカーたちに思いをはせており、「京都、愛知の車体はフェンダーミラーで、スピーカーの位置が神奈川と異なっている。それに、静岡は赤色灯が2つ付いているんです。当時の警察官募集パンフレットの表紙に描いてあって、最近入手したんですよ」と教えてくれた。

 希少過ぎる1台。小さな孫が気に入ってくれていることも、貴重車オーナーとしてはうれしい。「基本的には十分に楽しんでいる私の代は私の代で、あとは次の代に任せます。ただ、このクルマにはずっと走っていてほしいですし、これだけ貴重なものなので、できれば引き継いでいってほしいです」と話している。

次のページへ (2/2) 【写真】パンフレット表紙のレア画像
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