M-1は情報戦? 実力派漫才師が明かす賞レース舞台裏「ライブで話題にならないと厳しい」

M-1グランプリ――。それは漫才師ならば誰もが目指すといっても過言ではない最高の舞台だ。霜降り明星、ミルクボーイ、マヂカルラブリー、錦鯉。頂点に立った芸人たちは、一夜にして人生が変わる。そんな夢の舞台に向けて、すでに鍛えだした芸人たちがいる。ライブの名は「漫才至上主義」。M-1王者になるため、東京からは「ダイヤモンド」「シシガシラ」が大阪からは「チェリー大作戦」「黒帯」が集結した。東阪、色の異なる4組にライブの手応えやお互いの印象、“M-1”について話を聞いた。

サッカー部のような陣形で映る「漫才至上主義」のメンバーたち【写真:ENCOUNT編集部】
サッカー部のような陣形で映る「漫才至上主義」のメンバーたち【写真:ENCOUNT編集部】

M-1グランプリへ向け、東阪漫才師4組がライブ「漫才至上主義」を開催

 M-1グランプリ――。それは漫才師ならば誰もが目指すといっても過言ではない最高の舞台だ。霜降り明星、ミルクボーイ、マヂカルラブリー、錦鯉。頂点に立った芸人たちは、一夜にして人生が変わる。そんな夢の舞台に向けて、すでに鍛えだした芸人たちがいる。ライブの名は「漫才至上主義」。M-1王者になるため、東京からは「ダイヤモンド」「シシガシラ」が大阪からは「チェリー大作戦」「黒帯」が集結した。東阪、色の異なる4組にライブの手応えやお互いの印象、“M-1”について話を聞いた。(取材・文=島田将斗)

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◇ ◇ ◇

――直近のライブの手応えはいかがだったでしょうか?

(ダイヤモンド・小野竜輔)そうですね、気合いだけは入っていたんですけれど、手応えはなかったです。ライブ自体は盛り上がったんですけれど個人的なものです。受けの量、やや受け、その後に出たチェリー大作戦、シシガシラ、黒帯がドカ受けしていたので。ライブ自体は4回目にして拍手笑いでした。

(ダイヤモンド・野澤輸出)いっぱいお客さんも入って盛り上がってよかったです。あったかくてやりやすくて良かったですね。東京がお客さん1番入るので。

(チェリー大作戦・宗安)東京がめちゃくちゃ温かいんで、最近のやつで言えば1番盛り上がったんちゃうかなと思いますね。

(チェリー大作戦・鎌田キテレツ)すごい盛り上がって、小野さんが「キテレツ」って言って僕が「キテレツ」って繰り返すだけのノリがあるんですけれど、あれを1回目の漫才至上主義のライブで変な空気になってしまったんですけれど、今回みんな笑っていたのでお客さんも含めてチーム漫才至上主義が出来上がってきたかなと思いますね。

(黒帯・てらうち)僕らのネタが仕上がってるって声がえぐいので、盛り上がってんのは僕らのおかげなんかなと。方々からおもしろいって声が聞こえるので、このまま盛り上げていけたらと思います。

(黒帯・大西進)俯瞰(ふかん)で見て、私情とかなく僕らが1番人気あるのかな。大阪やったら本格派でやっているつもり。大阪ではあんなウケないですね。東京、ちょっと“異常”でした。2.5乗でした。

(シシガシラ・脇田浩幸)前回の東京公演より人数が増えてて……。(全員から減っていたことを指摘される)えっと増えてて、M-1を目的としたライブなんで、こっからどんどん盛り上がっていくライブであるためにやっていきたいと思っています。

(シシガシラ・浜中英昌)長尺がミソなので、良い意味で長くダラダラとできるんでこのライブは。

ダイヤモンド「決勝、行けそうな気がします」【写真:ENCOUNT編集部】
ダイヤモンド「決勝、行けそうな気がします」【写真:ENCOUNT編集部】

初対面のコンビも存在、それぞれのマネジャーが立ち上げた企画

――このメンバーで集まると初めて聞いたときの心境は。

(小野)それぞれのマネジャーさんたちが立ち上げてくれたライブなので、ありがたかったですね。まぁでも、シシガシラはちょっといらないかな。

(浜中)違う違う違う。俺らが最初に言われたんですよ。東阪でユニットを……。(とうさかと言いつっこまれる)『東阪でライブをやるので誰がいいですか?』と聞かれてまずダイヤモンドをとなって、大阪で同じ感じの人が良いなということでM-1の動画を見ておもしろいなと思ったチェリーと黒帯を推薦して組まれた形です。

(脇田)ライブで初めて会ったところもあるよね。刺激しあってる感じはします。

――やりづらさはあったのでしょうか。

(小野)最初、チェリー大作戦は会ったこととかなくて宗安がめっちゃ見た目怖いんですよ。嫌なやつだったらどうしようって。尖り散らしてて、あいさつもろくにできないやつだったらどうしようと思ってたら、立っ端小さかったのでかわいいなって。その日に飲みに行きましたもん、すぐに仲良くなりました。

――ライブのなかでチームワークが強くなったりとかは?

(小野)全然1回目よりいいですよね。

(大西)ちょっと見慣れてきましたよね。

(浜中)誰がどこで出るとかもそうだよね。

――M-1に出場するうえでチームワークだったり、仲間は大事なのでしょうか?

(小野)でも、それぞれのネタを見て、『こうしたらいいじゃないですか?』とかは言いやすくなっていると思います。そういうのもありつつも何となくみんな自分たちが上に行くとも思っている。

(大西)落ちる方にアドバイスしたりとかね。でもなんか事務所側はライブ2回ぐらいで様子見してくるのかなと思ったら、ずっとやってくれんやなって思いますね。こういうのって3回ぐらいで終わるとかよくあるんですけれど。

(小野)スケジュールみたことある? 来年の3月まで入っていたから。

(脇田)あれじゃない? 結果残すでしょうっていう見込みじゃない?

(てらうち)もしくは結果出せへんから、わざと入れてるという可能性もある。暇やろこいつらみたいな。

(小野)漫才ブーム続いているじゃないですか、そんな感じで続けていきたいですね。

シシガシラ「バキバキに仕上がったネタが3本あります」【写真:ENCOUNT編集部】
シシガシラ「バキバキに仕上がったネタが3本あります」【写真:ENCOUNT編集部】

東京と大阪の違いを実感「大阪のお客さんは認めてくれるまで笑わない」

――関西の2組にお聞きします。お笑いライブにおいて、東京と大阪の違いは何でしょうか?

(大西)大阪のお客さんは認めてくれるまで笑わないんですよ。

(宗安)外に興味ないですよね。大阪のお客さんって大阪の人が好きみたいな。

(大西)1回ダイヤモンドとツーマンライブをやったことあるんですけれど、満席なるんかなと思ってたんですけれど、半分ぐらいしか入ってないってこともありましたね。

(宗安)「いつものメンバー」「この組み合わせ」、大阪の人はそういう感じに見に行っているのかもしれないですよね。

(大西)まぁお金にシビアな街なので絶対失敗したくない、確約された笑いを求めてるのかもですね。東京はカジュアルというか。大阪から出た人はみんなそう言いますね。「東京でライブに出たらめっちゃウケる」みたいな。

――東京の2組はどう感じていますか?

(小野)この前行かせてもらったときにまだ受け入れてもらえていないなという感覚はありました。逆に大阪でめっちゃウケたらそのネタは使えるのかなって感じはしますね。そういうネタが作れたらなと。

(浜中)東京は拍手笑が多いイメージ。大阪もウケてはいるんでしょうけれど、拍手笑いは少ないイメージですね。良い悪いとかじゃなくて芯で笑いを見ているみたいな。

(大西)ちゃんとネタをみている感じはします。ライブでネタがあんまりウケなくても、コーナーはめっちゃウケたりはあるんで。

チェリー大作戦「M-1だけが売れる道」【写真:ENCOUNT編集部】
チェリー大作戦「M-1だけが売れる道」【写真:ENCOUNT編集部】

M-1は“情報戦”、勝利のカギは「良いネタ作ればいいってもんじゃない」

――東京と大阪でチームを組むメリットは何ですか?

(小野)それぞれのお客さんに知ってもらえるというのはデカい。後は情報交換ですね。東京・大阪で誰が仕上がっているとか。

(脇田)こっち(東京)で仕上げた分を大阪の人に見せるから新鮮な反応が見られるよね。

(小野)東京だけでやっていると知っているネタだとその時点で笑ってしまうお客さんもいると思うんですよね。逆にウケなくなってたりもするので、そういうのを試せる場があるのはデカいですね。

――M-1って“情報戦”なんですか?

(小野)情報戦も大事っていう説がずっとあるんですよ。僕らも去年の秋ぐらいに、マヂカルラブリーさんに『お前ら、話題になっているのか』って言われて、『なってないですね』って答えたら『じゃあ無理だろ』って言われました。無名のやつが行くにはそれぐらいライブシーンとかで話題になっていないと厳しいってことだそうです。

――点数をつけるのは審査員、ライブシーンの話題性は関係あるのでしょうか?

(小野)見に来るお客さんが味方になっているかっていうのはちょっとあると思います。『この人たち、決勝行ってほしい』みたいなのってあると思うので。シシガシラさんとかはずっと『決勝行ってもおかしくない』って言われているのに行けてないので(笑)。

(脇田)良くねーな。

(小野)3年ぐらいずっと行けてないですよね。脇田さんは大阪で金属バットさんに『俺ら仕上がってるよ』って自ら広めています。

(てらうち)確かに回ってきてる。作戦成功やな。

(野澤)でも、相席スタートの山添寛さんも決勝行ったときに自分で仕上がってるって言っていたらしいので。広めていたというお話は聞いたので、あながちその作戦は間違っていないのかも。

(大西)お客さんも勘違いしますしね。ネタ見たときに仕上がってんねやって。

(小野)「これが仕上がっているんだったら、これをおもしろいと思わないと」みたいな風にお客さんも思いますからね。

(宗安)M-1ってそんな心理戦やったの? 間違ってたわ、はよ教えといてくれ。

(小野)良いネタ作ればいいってもんじゃないんです。

(脇田)古い! 古い!

――M-1決勝の舞台で話題になる“トップバッター不利説”は本当なのでしょうか?

(小野)トップバッターを決勝で引いたら、優勝はもう諦めると思います。つめあと残しにどう振り切るかじゃないですかね。

(脇田)決勝行った人がみんな言う。後は運だから良いこといっぱいやる。

(小野)そうですね、徳を積む作業です。決勝行った人なんて全員おもしろいことが確定しているんで、後は運。どの流れでネタをするとか。だからみんな決勝行った人は急に1000円くれたりします。それが合ってるのかは分からないですけれど。

(大西)関係ないっていうのは嘘ちゃうんかなって思います。

(小野)絶対100点は出ないですからね。

(宗安)中川家さんはトップバッターで優勝でしたっけ。

(野澤)それいつも言われるんだよな~。

(大西)誰かが負わないといけない。

(てらうち)大会を盛り上げるにシフトするんじゃないですか。

(浜中)モグライダーさんが1番いいパターンだったよね。

黒帯「あと4年なんで1番真剣に漫才するかな」【写真:ENCOUNT編集部】
黒帯「あと4年なんで1番真剣に漫才するかな」【写真:ENCOUNT編集部】

戦いが始まればライバルに、それぞれの意気込み

――M-1グランプリへの意気込みは?

(小野)頑張ります。絶対に。緊張しないように。でも本当にちょっと予選を大阪で受けようかみたいな話も出たりでなかったりしたので、そういった意味でも漫才至上主義で大阪行かせてもらっているのもありがたいです。作戦も考えつつ決勝に行きたいですね。

(野澤)毎年、準々決勝で落ちてるんですけれど、なんとなく今年行けるんじゃないかって思っていますね。分かんないけれど、感覚。決勝、行けそうな気がします。

(宗安)M-1だけが売れる道。それ以外はちょっとキツイ。今年ここで見せて、僕らをなめてる大阪の社員にギャフンと言わせたい。お客さんなしでもいいです。客席に社員を座らせたい。

(鎌田)今年はでも今までにないくらいネタを試す機会があった。この漫才至上主義の舞台、大阪でも機会をいただいている。それに答えたいなと。優勝はちょっとあれか、決勝……。優勝したいけれど、優勝できなかったらなめてる社員さんをギャフンと言わせたいですね。コンビで同じ気持ちでやっているので。

(てらうち)今までで1番、今年状態は良さそう。精神的にも環境的にも。僕ら地下が長かったので、どんだけやっても意味ないみたいなお笑いが多かったんです。でも、今年は全然その感覚はないし、僕ら性格的にスポーツマンじゃないので、ガッツリ仕上げるとかそういうのは苦手なので、できるだけ今年は楽しめればというぐらいでやっています。勝てたら楽しい時間が多いんで。

(大西)コンビで仲が悪い時期とか良い時期とか波あって、結構仲悪くなって仲良くなったりするんで、M-1のときに仲良くしてた方が漫才もウケるんでそろそろけんかしといた方が……。今日も相方が衣装忘れたんですけれど、その辺を突いていこうかなと。あと4年なんで1番真剣に漫才するかなって。あと4回なんで、4回ぐらいだったら頑張れるかなって、あと10年言われたらしんどいですけれど。4年というのはピークを迎えるのにちょうどいいですね。

(脇田)僕らもラストまで11年しかないんで。そろそろこの辺で決めとかないとなっていうのはあるんで。

(小野)ハゲが禁止になるかも分からないしな。

(脇田)去年の長谷川まさのりさん(錦鯉)の枠が空いたので、まさにその席を取りに行く。今まで確実に今年が1番、通しをしてもらっているなというのがあります。ここで結果を出さなきゃいつ出すんだって自分でも思っているので、優勝します。

(浜中)バキバキに仕上がったネタが3本あります。

(一同)心理戦や!

(浜中)ハゲもそうですけれど、ハゲ以外も考えつつ、M-1勝負できたらなっていうのは思っているので。その辺でうまいことやってM-1で「夢ドリーム」で優勝できたらと思っていますね。

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