元自衛隊「対テロ部隊」の日本人がウクライナで“極秘任務” ロシア侵攻前に現地入りした驚きの理由
国外脱出「難民列車」で感じた富の差 切符購入の裏事情
男性はポーランド国境に近い西部リビウにいたが、ロシアの爆撃で、街中に空襲警報が鳴り響いた。「向こうの人は戦争慣れしているので、空襲警報が鳴ったらすぐ地下に逃げ込むというスタイルでした。外でタバコを吸っていても、みんなダッシュで中に入っていきましたね」。ガソリンスタンドは封鎖され、換金はできなくなった。「現地の協力者が3人いたんですけど、誰に連絡しても、ガソリンが手に入らないからどこも行けないと言われました」
駅は戦火を逃れて国外に脱出しようとする人々と、反対にキーウ方面に向かうため仮眠を取る兵士などでごった返した。「キーウから逃げてくる人は、ハンガリー行きのチケットを買うんですよ。でも、みんな途中のリビウで1回降りるんです。何で降りるかというと、みんなポーランドに行きたい。ポーランドは米軍がいるし、難民に対して手厚いことをしてくれるからです」
ハンガリー行きの切符は高額だが、その分、座席を確保できる可能性があった。「ウィーンに行く電車は距離があるのでもっと高いです。だからそれを買えている人たちは基本お金を持っている人たち。そうじゃないと、そもそも向こう(キーウ方面)から電車すらも乗れない」。経済的な格差が命の選別を生んでいると感じた。
男性たちもハンガリー行きの切符をポーランドに向かう乗客から名義変更して購入した。「寝台列車しかないんですけど、3人部屋のところに10人くらいいて、ずっと立ちっぱなしでした。原因は分からないですけど、途中で止まったりして全然進まなくて、ブダペストに着くまで24時間ぐらいかかったという状態です」。乗客はほとんどが女性や子どもで外国人の男性の姿もあった。人道上の配慮で、リビウから切符を買えない人々も乗せていたという。
ブダペスト滞在中は、ウクライナにUターンする可能性もあったため、引き続き情報収集を行いながら待機したが、やがて帰国となった。