【週末は女子プロレス#49】アイドルにバレエ挑戦…たどり着いたプロレス 中野たむが目指す「電車の中吊り広告」

リング上でポーズを決める中野たむ【写真提供:スターダム】
リング上でポーズを決める中野たむ【写真提供:スターダム】

「コズエンで名実ともに一番をめざしたい」

 そんな思いを確信したのは、星輝ありさ(引退)と闘うようになってからだという。スターダム旗揚げメンバーの星輝は12年6月に引退も、6年半のブランクを経て復帰、パートナーに同じく1期生の岩谷麻優を選んだ。これが当時、岩谷と組んでいた中野のジェラシーを駆り立てた。星輝とは感情爆発の対戦を経て、タッグも組むようになった。

「星輝とはお互いの人生を背負って闘いたいと思ったんですよね。コイツの人生に中野たむっていう選手を刻みつけたいってホントに思った相手でした」

 そこから生まれたワンダー・オブ・スターダム王座、通称・白いベルトへの執念。星輝引退後は彼女の思いも背負ってベルトへの執着心をあらわにした。やがてスターダムに参戦したジュリアにジェラシーを抱きながら、ベルトを懸けた3度目のシングルで白いベルト初戴冠。21年3月3日、スターダム初進出の日本武道館、そのメインでジュリアの髪を切り、勝利を飾ったのが中野だった。

 以来、中野は白いベルトを「呪いのベルト」と呼び、挑戦者との人間ドラマを紡いできた。なつぽいとはアクトレスガールズ退団時の因縁、上谷沙弥とはアイドル志望者をプロレスに引き込んでしまったという罪悪感。岩谷とは「アイコンの座」をめぐる争い。また、中野率いるCOSMIC ANGELS(コズミックエンジェルズ=コズエン)のウナギ・サヤカ、白川未奈とも同門ならではの感情ドラマがあった。

 これらの闘いを通じ、中野は白いベルトを独自の色に染め上げた。最高峰とされるワールド・オブ・スターダム王座、いわゆる赤いベルトとの差別化を確立させたのだ。現在、白いベルトは“全力王者”上谷に引き継がれている。中野が抱いた罪悪感は完全に払拭されたと言っていい。これもまた、2人がたどり着いたプロレスによって映し出された人間ドラマだった。

 4・29大田区では、突如、COLOR’S(カラーズ)の4人(SAKI、清水ひかり、櫻井裕子、網倉理奈)が登場、コズエンとの対戦をアピールした。カラーズはアクトレスガールズのブランドがプロレス活動停止とともに独立した形で、団体は中野の古巣でもある。とくに清水は、デビュー当初の中野が大ベテラン伊藤薫にやられる姿を見てレスラーになろうと決意した。立ち上がり向かっていく姿勢に感銘を受けたのだ(「週末は女子プロレス♯44参照」)。

「それはうれしいですね。ひかりもダンスやボーカルグループで挫折を繰り返してきた人生だと思うから、私の人生に共感してくれたのかなとは思います。最近のことはまったく知らないけど、ひかりとは正面から向き合いたいですね。ただ、カラーズって(ジュリアとの因縁からスターダムにやってきた)プロミネンスとは違って、すごく明るいユニットですよね。『(軽いノリで)対戦させてくださぁ~い』って。そこは正直、ちょっと物足りないかな。だってここは闘う場所だし、スターダムって全員が敵だから、浮ついてたらすぐにつぶれちゃう。カラーズの4人には覚悟をしっかり見せてほしいなってところがあります」

 過去のいきさつがあるからこそ、カラーズとのドラマにも期待を寄せる中野。SAKIらとの対戦をいい意味で利用し、コズエンをより発展させていくつもりだ。

「コズエンで名実ともに一番をめざしたいです。たとえばメンバー全員がベルトホルダーになる。そこからコズエンにしかできないことって何かと考えたときに、ベルトホルダー全員でグラビアしたいって思いがあります。(全員のベルト姿で)写真集を出して、ラッピングカー出して、電車に中吊り広告も出したい(笑)。個人的には白いベルトという一番の夢を達成したけど、まだ取れてない、どうしても欲しかったベルトがあるんですよ。赤いベルトももちろん取りたいけど、これは赤ではない、欲しかったベルト。狙っていきたいと思ってます。諦めてまった夢を回収するのが中野たむですから!」

次のページへ (3/3) 【写真】大胆コスでリングで闘う中野たむの全身ショット
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