【週末は女子プロレス#49】アイドルにバレエ挑戦…たどり着いたプロレス 中野たむが目指す「電車の中吊り広告」

スターダムの中野たむが電車の中吊り広告に登場。団体の親会社ブシロードのトレーディングカードゲームのPRで、メインキャラクターに抜てきされたのだ。中野は先に自伝「白の聖典」(彩図社)を出版。ブシロード体制になったときに電車の中で広告を見つけたときの驚きを記述している。

コズエンでのグラビアが目標と語った中野たむ【写真:新井宏】
コズエンでのグラビアが目標と語った中野たむ【写真:新井宏】

リングで向き合って見えるもの「試合を通じて人生があらわになる」

 スターダムの中野たむが電車の中吊り広告に登場。団体の親会社ブシロードのトレーディングカードゲームのPRで、メインキャラクターに抜てきされたのだ。中野は先に自伝「白の聖典」(彩図社)を出版。ブシロード体制になったときに電車の中で広告を見つけたときの驚きを記述している。

「当時は、ブシロードが電車に広告を出すくらいすごい会社だなんてまったく知らなかったです。広告が偶然目に入ったとき、スターダムがブシロードになるんだったら、もしかしたらスターダムも山手線に広告が出ちゃったりするのかな? とちょっと考えましたね。でもまさか、そんなわけないよなって思いながら、電車を降りました」

 ところが2年半後、その「まさか」が現実となる。しかも中野の“ソロ”ではないか。

「私、中野たむがババ―ンと出てます(笑)。これって出る前に一切連絡とかなくて、友人から『たむちゃんが電車にいたよ!』みたいな感じで写真が送られてきたんですよ。もうビックリして。それを見て初めて知ったんです。いつの間にか撮影された写真が使われてて、会社からも連絡はなく。そういうもんなんですかね(苦笑)」

 とはいえ、これは夢がかなった瞬間でもあった。まさか自分が車内広告で多くの人の目に留まろうとは思いもしなかった。

「出ちゃった、どうしよう、世界中の人にたむちゃんが見つかっちゃう(笑)。正直、最近は夢にも思わなかったことが現実になるんだなっていうことの連続です」

 中野は幼いころから人前でパフォーマンスする仕事に憧れを抱いていた。バレエ、ミュージカルダンサー、アイドル。しかし、どれも陽の目を見ず、屈辱を味わうことの方が圧倒的に多かったという。そしてさまざまな偶然が重なり、たどり着いたプロレス。レスラーデビューは2016年7月18日、アクトレスガールズでの安納サオリ戦。ここで中野は、いままでの道がすべてプロレスにつながっていたと実感する。

「全然歯が立たなくて太刀打ちできなくて、苦しくて、逆エビ固めを決められて、ホントに苦しくて何度もギブアップしそうになる。それでも藁にもすがる思いでロープをつかむ。でもまたやられてしまう。必死な思いで立ち上がるんだけど、またやられる。苦しい。でもギブアップしたくない、続けたい、勝ちたい。なんかこれって、諦めたくなくて立ち上がり続けてきた、いままでの私の人生そのものだなって感じたんです。最後の最後でつかんだプロレス。そこで初めて、プロレスって人生なのかなと思いました」

 自伝「白の聖典」には彼女のプロレス観が記されている。デビュー戦の気づきから闘っていくうちに対戦相手の人生も見えてきた。

「試合を通じて人生があらわになる。選手の経験してきた挫折、葛藤、未来への覚悟が如実に反映されますよね」

 必ずしもレスラー志望者同士とは限らない。本来なら出会うはずのないような境遇の人たちがリングで向き合い、それぞれの人生をぶつけ合って闘う。それがまた、プロレスでもある。

「対戦相手の人生もリングで試合をしていくことで垣間見えるんですよね。たとえば、この人は生真面目な闘い方から、すっごい生真面目な人生を送ってきたんだろうなと闘ってて感じたり。いい加減な人生送ってきた人はいい加減なプロレスします、ホントに。それでも強い人はもちろんいるけど。また、この選手とは手が合う合わないというのも、その人の人生と共鳴しますね。ジュリアなんかはまったく違う人生を歩んできたけど、紆余曲折の人生をお互いに歩んできて、まったく違う人生が共鳴するというんですかね、まったく知らなかった人生をリングで知れるのもプロレスですね」

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