「もともと人間が苦手だった」 吉田類が振り返る「酒場放浪記」がはじまるまで

オカモト“MOBY”タクヤ(左)と吉田類【写真:山口比佐夫】
オカモト“MOBY”タクヤ(左)と吉田類【写真:山口比佐夫】

僕は健康な酔っ払いで良かった

MOBY「ところで昨年『リモート飲み会』を開催しましたよね。酒場に直接足を運ぶ飲み方とは対極にあたるようなスタイルですが、実際にやってみていかがでしたか?」

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吉田「1000回記念の時に僕のアトリエからやったんですが、大きなテレビ画面を置いてそこには九州から北海道まで、あとロサンゼルスからの参加者もいました。そんな離れた人たちとつながれるのはオンライン飲み会だけですからね。僕は大きな画面に映っている参加者のみなさんの顔を見ながら、参加者のみなさんは僕のアトリエや猫を眺めながら乾杯して、TV放送からだけでは絶対に味わえないような親近感が生まれました。MOBYくんはリモート飲みはやった?」

MOBY「僕はクイズが大好きなので、クイズマニアを集めてオンライン飲み会をしながら『早押しクイズ大会』を開催したことがあるんです。めちゃくちゃ盛り上がりましたよ(笑)」

吉田「それはきっと酒の効果で余計な先入観や雑念が消えるんでしょうね。やっぱり人間の感性って大事だよね」

MOBY「感性の話で言うと、以前類さんが『こんなに肥沃な土地は世界を見渡しても日本しかない』っておっしゃっていた言葉が今でも印象に残っているんです」

吉田「これまでいろんな国を回ってきて、日本に戻ったときにあまりにも美しい自然を見てあらためて感性が磨かれたんですよ。それで日本の豊かな自然を世界的に紹介できる場所はどこかと考えた時、まずは北海道だということに気が付いたんです。それをぜひ本に残したいと思って8年前から『旅人類』というムックを作ってきたんですが、ようやく今年3月に全8巻が完結しました」

MOBY「今日お話をうかがって類さんは常に人生の登山をしているように見えてきました。類さんが目指している山の頂は、どんな景色なんでしょうね?」

吉田「ゴールはないんですよ。死ぬまでその登山を楽しむってことなんじゃないのかな。頂上まで登るという目的はあるけれど、途中で息絶えてもそれも人生ですから。今年73歳になりますが、詩人は死ぬまで言葉を紡がなかったら詩人じゃないのでね。それが最期までできるかどうかってことなんでしょうね。

 僕が若い頃に描いた絵は、シュールで常人が理解できないような絵だったかもしれないけど、今は猫や犬といった動物や自然を愛する中から湧き出てくる絵しか描けない。でもそれがとっても楽しい。僕が元気な理由は、いつも登っているからなんです。だからいつか楽しく下れるわけでね。それが人生だと思っています。

 これだけ飲み歩いて乾杯した数はギネスブックに乗ってもおかしくないかもしれないけど、それでよぼよぼになっていたら意味がない。健全な肉体に健全な精神と健全な肝臓が宿っているのが理想でしょ。そういう意味では僕は健康な酔っ払いで良かったと思っています(笑)。

 肉親との縁が薄かった分、旅で出会った人たちとの魂の触れ合いから『魂の家族』がいっぱいできました。だからマイナス要素なんて何ひとつないんですよ。まだまだ旅も登山も続いていきますし、いろんな人との出会いもまだまだあるってことも分かっていますから」

□吉田類(よしだ るい)高知県生まれ。BS-TBS「吉田類の酒場放浪記」、NHK「ラジオ深夜便」に出演。登山も続けており、2022年春から放送開始のNHK総合「にっぽん百低山」に出演。日本各地の低山の魅了を堪能している。また酒場や旅をテーマに講演も行う。俳句会を開催し俳人の顔も持つ。著書は「酒場歳時記」(NHK出版)、「吉田類の旅と酒場俳句」(KADOKAWA)、「酒場詩人の美学」(中央公論新社)等。近年は画家としての活動を再開し、7月には東京の銀座三越で個展を開催予定。

□オカモト”MOBY”タクヤ 1976年7月6日生まれ。ロックバンド「SCOOBIE DO」のドラマー兼マネジャー。ABEMA、SPOTV NOWにてMLB中継の解説・実況を担当。他にも酒場に関する執筆やクイズ作家など多方面で活躍。2021年、テレビ東京系ドラマ「生きるとか死ぬとか父親とか」で俳優デビュー。「SABR(アメリカ野球学会)」会員、「野球文化學會」会員。著書は「ベースボール・イズ・ミュージック! 音楽からはじまるメジャーリーグ入門」(左右社)。

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