天心の妹分から女帝へ 寺山日葵が追いかけてきた神童の背中「恵まれた環境にいた」

那須川天心は同門としても団体の選手としても大きな存在だった

 妹分としてデビューした寺山にとって天心はどんな兄貴分だったのか。同門ファイターとしてだけでなく同じ時代を生きた選手としても大きな存在だったことを明かした。

「天心が誰よりも練習をしていて、一切妥協をせずにやっている。あそこまで強い人が近くにいて、自分がさぼれるわけがなかったし、きつくて心が折れそうなときもそれ以上にやっている存在が近くにいて、自分も負けてられないなと思えました」

 追いかけてきた背中に「そういう存在が近くにいるって当たり前のことじゃない。恵まれた環境にいたんだなというのはすごく実感していましたね」と感謝もしていた。

 引退を報告した寺山に天心は金言を残した。

「お前は自分で時代を作る人間ではない、置かれた場所で精いっぱい輝くことはできる人間」。厳しそうに見える言葉も自信を持てない性格の“妹分”へのエールだった。

「『例えば10人の人がいるなかで、新たな時代を切り拓けたりできる人って1人か2人しかいない。それが格闘技界では俺(天心)だとする。時代は切り拓けないけれど、拓かれたなかで、チャンスをつかんで活躍するのって3人ぐらいしかいない。残った人は挑戦している人を笑うか、そもそも挑戦しても失敗する人か何もしないやつしかいない。

 時代は切り拓けないけれど、拓かれたなかでチャンスをつかんで活躍する選手は多くない。お前はそれができる人間だから、今後の人生でも今までやってきたことを糧に頑張っていけよ』と言ってくれました」

 寺山は「SNSでは天心偉そうだなとか言われてましたけれど、それを言っていいぐらいの活躍をしている」とうなずく。

 RISEに参戦している女子格闘家としても大きな存在であることは間違いなかった。「天心がいなかったらRISEもここまで大きく爆発することもなかったですし、それこそ女子のトーナメントなんて開かれることはなかったと思うんですよ」と熱を帯びる。

 さらに「天心が先頭でRISEを引っ張ってくれて、他の選手も負けじとその背中を追ったし、私もそうだった。天心のおかげで盛り上がっていろいろな人が見てくれて興行も開催されたと思っています」と続けた。

 格闘技一筋での引退は不安だった。最後も背中を押してもらった。「天心にそう言われたら『次の人生でも大丈夫なんかな』って思えました」。

 お前はチャンスをつかんで活躍できる人間――。今の寺山の目には自信が見える。“神童”が認めた“女帝”はどんな未来を切り拓くのか。21歳のこれからを見守っていきたい。

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