【週末は女子プロレス#43】総試合数は900に到達、すぐやめるつもりだった松本都が歩んだ13年間

“崖のふち”という響きを気に入っているという【写真:新井宏】
“崖のふち”という響きを気に入っているという【写真:新井宏】

“崖っぷち”じゃなく“崖のふち”にした理由は…「耳障りが可愛い(笑)」

 とはいえ、都はそれ以来、何があっても自信満々。11年5月、試合に負けてアイスリボンを退団させられるも、新団体、崖のふちプロレスの旗揚げをその場で宣言。崖っぷちに追い込まれていた都の起死回生策だったが、それにしても崖っぷちではなく“崖のふち”としたところに、独自のセンスを感じさせる。

「対立していた藤本つかさに負けてしまい、ムシャクシャして団体を旗揚げしたのが崖のふちプロレスでした。崖っぷちじゃなく崖のふちにした理由ですか? そんなに深い理由はないんですけど、語感ですかね。崖っぷちだとホントに危ない感じだけど、崖のふちならなんか柔らかいような感じもするし、耳障りが可愛いかなと思って(笑)」

 団体とはいえ、選手は都たったひとり。それでも前代未聞のアイデアでカルト的人気を呼んでいく。旗揚げ戦は菊地毅を招聘したワンマッチ興行。プロレスだけではなく、さまざまなゲームで5番勝負を展開、王道・全日本出身の菊地に「こんなのプロレスじゃねえよ~!」と言わしめた。その後も都はグレート・サスケや真琴ら男女問わず、なにかと訳ありなレスラーを上げ、鈴木みのるとも対戦した。基本的には1対1のワンマッチ興行で、ここでしか見られないプロレスとプロレス以外のなにかを織り交ぜ、カオスな空間を作り上げていったのである。

 アイスリボン退団後の19年11月には、DDTの高木三四郎に崖のふちを“事業譲渡”。プロレス界のニュースをネタにしながら、崖のふち女子プロレスとして完全復活。男子が出ても団体名が女子プロレスなのは……これもまた深い理由はないらしい。

「名称を略したとき、崖女(がけじょ)っていう響きがいいんですよ。それだけですね(笑)。ただ、一人になったときに高木さんから『崖のふちを買いたい』『事業譲渡してほしい』と言っていただいて、最初はよくわからなかったんですけど、ちゃんとした会見とかあってビックリしたし、高木さんがおっしゃるなら間違いないと思って、ノリ?(笑)……ノリではないんですけど、やらせていただきました。レッスルユニバース(サイバーファイトの動画配信サービス)で旗揚げ戦が見られるのも高木さんのおかげ。本当に尊敬してます!」

次のページへ (3/4) ふざけているようで「対戦相手の見たことのないところを引き出したい」
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