現地の日本人ボランティアが訴える今後のウクライナ報道の在り方「現状伝え続けて」

ロシアによるウクライナ侵攻が始まって1か月あまり。日本でもウクライナ難民の受け入れが始まっており、今後は物資だけでなくさらに長期的な支援が求められる。ウクライナが今何を求めていて、日本からできる支援にはどのようなものがあるのか。そして、報道に求められる役割とは。現地で支援活動を行う日本人ボランティアの伊藤翔さんに聞いた。

「大きな音がトラウマになっている子も」ウクライナの今
「大きな音がトラウマになっている子も」ウクライナの今

現地ウクライナで支援活動を行う日本人ボランティアの伊藤翔さん

 ロシアによるウクライナ侵攻が始まって1か月あまり。日本でもウクライナ難民の受け入れが始まっており、今後は物資だけでなくさらに長期的な支援が求められる。ウクライナが今何を求めていて、日本からできる支援にはどのようなものがあるのか。そして、報道に求められる役割とは。現地で支援活動を行う日本人ボランティアの伊藤翔さんに聞いた。

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 もともと日本で経営者をしていた伊藤さんは昨年10月、黒海を挟んだウクライナの隣国ジョージアに移住。3月3日からボランティアとしてウクライナに入国し、ロシア軍が迫る中、車での支援物資の輸送や避難民のサポートなどの活動を自己資金で行ってきた。

「戦闘が始まってすぐ、食糧、衣類、生活用品など世界中がいろんなものが一斉に届きました。今は住民一人ひとりまで行き届いており、これといって足りないものはありません。ただ、難民キャンプはどこもキャパオーバー。有事の寄付は長くは続かないので、これから金銭面での支援がより必要になってくると思います」

 金銭的な支援と同じく、今後求められるのが難民の精神的なケアだ。すでに日本にもウクライナからの難民が訪れているが、慣れない異国の土地ゆえ、ちょっとした声掛けが大切だと伊藤さんはいう。

「戦闘地域にいた子のなかには、段差での車の揺れや大きな音がトラウマになっている子もいる。日本であれば震災のときの経験を生かして、専門家による心のケアもできると思います。専門家でなくとも、社会であたたかく迎え入れてあげる、何か困っていたら助けてあげるなど、自分にできることをするだけでもいいと思います」

 ロシアの侵攻開始から1か月以上がたち、東部マリウポリなど一部を除き、住民の大規模な避難は峠を越えた。戦況はこのまま長期化か停戦かの二択の状況を迫られている。伊藤さんは、メディアに対しても、この先こそ一過性でない継続的な報道が必要だと訴える。

「これは仕方ないことかもしれませんが、メディアはどうしても話題性のあるセンセーショナルな情報を優先する。だからこそ多くの人の目に触れ、情報の価値が高まるというのも分かります。ただ、話題性を求めるあまり、すぐに飽きられて忘れ去られてしまうという危惧もある。このまま戦争が長期化したり、あるいは停戦したりして熱が冷めれば、募金はガクッと減るでしょう。そうなったときこそ継続的な報道で難民の現状を伝え続けてほしい。これは情報を受け取る側の課題でもあると思います」

 避難が完了したから、停戦交渉が成立したからといって、すぐに日常が戻ってくるわけではない。伊藤さんはウクライナの本格的な復興を見据えなら、リビウで難民のための食堂開設の準備を進めている。

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