ゼレンスキー大統領の通訳務めた在日ウクライナ人の矜持「国のために命落とすことが当たり前」

ロシアがウクライナに侵攻を開始し、17日で3週間が経過した。長期戦の様相を呈する中、在日ウクライナ人の戦いも終息が見えない。2019年にゼレンスキー大統領が来日した際に、通訳を務めたウラディーミル・ミグダリスキーさん(京都情報大学院大学准教授)は、母と弟を南部の港湾都市オデッサに残す。毎日横になるものの、「1、2時間しか寝られていない」と話すほど、気が休まる時間はない。「私も自分のママを呼びたい」と、日本への避難を願っている。

オデッサのシンボルであるデュック・ド・リシュリュー像の前でミグダリスキーさん(右)と弟のダニールさん【写真:本人提供】
オデッサのシンボルであるデュック・ド・リシュリュー像の前でミグダリスキーさん(右)と弟のダニールさん【写真:本人提供】

「私は来日するまで山を見たことがなかった」

 ロシアがウクライナに侵攻を開始し、17日で3週間が経過した。長期戦の様相を呈する中、在日ウクライナ人の戦いも終息が見えない。2019年にゼレンスキー大統領が来日した際に、通訳を務めたウラディーミル・ミグダリスキーさん(京都情報大学院大学准教授)は、母と弟を南部の港湾都市オデッサに残す。毎日横になるものの、「1、2時間しか寝られていない」と話すほど、気が休まる時間はない。「私も自分のママを呼びたい」と、日本への避難を願っている。(取材・文=水沼一夫)

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 1998年から23年間、日本に住んでいるミクダリスキーさんは日々、母国ウクライナの状況を心配している。テレビ画面にはニュース3番組を同時に映し出し、音声を切り変えている。「今、向こうが寝れるのは1日に2、3時間くらい。私も同じく寝ていません。横になっているのは6、7時間ぐらいはあるのはありますけど、1、2時間しか寝られていない。だから向こうが緊張している時間は私も分かっている。応援は本当にできないけど、気持ち的には一緒にいる」。以前はロシアのチャンネルもつけていたが、遮断されてしまったという。「このチャンネルは、ロシア国内だけれども反政府の情報、正確な情報を流そうとして一生懸命頑張ったYouTubeチャンネル」。代わりに米国経由のウクライナ情報に耳を傾け、正確な情報を入手しようと試みる。

 戦況の行方もさることながら気になるのが、生まれ故郷オデッサの情勢だ。日本に来日する前の26歳まで、大学職員として働いていた。黒海に面した港町は、25年の映画「戦艦ポチョムキン」の中で階段から乳母車が転げ落ちるシーンが撮影されたことで有名。「オデッサは草原と港。水平線が見えます。私は来日するまで山を見たことがなかった。人口は100万人を超えて、経済的に唯一の重要な港です」。65年に横浜市と姉妹都市を結び、交流を図ってきた縁で、ミクダリスキーさんも日本に興味を持つようになった。少林寺拳法に打ち込み、今では准師範六段を取得。元K-1ファイターの故アンディ・フグさんを尊敬している。

 オデッサには母と弟夫妻が3人で暮らす。毎日チャットで連絡を取り合い、安否を確認している。2月28日にはオデッサ州のズミイヌイ島(スネーク島)を守っていたウクライナの国境警備隊13人がロシア軍艦と対峙。服従を要求されたが、兵士の1人が「ロシア軍艦よ、地獄に落ちろ」と拒否し、一時は全員の死亡が報じられた。

「この島にロシアの軍船が近づいた時点で攻撃。私にとって、オデッサ人としてそれ以上は何も聞きたくない。私にとってこれは戦争。それ以上、何も見せられなくても十分です」。ロシアの理不尽な行動に、ミグダリスキーさんは憤る。

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