なぜ那須川天心は成り上がれたのか 才能を見出したRISE伊藤代表が“理由”激白

昨年12月24日に行われた、天心(左)VS武尊会見
昨年12月24日に行われた、天心(左)VS武尊会見

那須川天心に殺意は足りず? 「違う方向走っていたことがあった」

4・2決戦で、RISEラストマッチを行う天心の相手が風音に決まっているが、風音は昨年、国内の強豪8人で争われた「-53キロトーナメント」を勝ち抜き優勝。特に準決勝・決勝は1日に2試合を行い、決勝ではかつて天心と対戦経験があり、優勝候補と呼ばれていた志朗を下した。

伊藤代表は、「天心も国内のそうそうたる面々が出場したトーナメントに優勝したことで風音を認めた」と話していたが、それは天心がワンデートーナメントの過酷さを知っていたからにほかならない。

そういった思いがどこまで詰まっているのか、天心はRISEラストマッチの会見上、「自分の試合を見返して“殺意”が足りない」(天心)と話し、「ちょっと守りに入っていた」と反省したのか、風音戦と武尊戦は「破壊というか常に攻める、倒しにいかなきゃと」という言葉を発している。

これに関して伊藤代表は、以下のような見方をした。

「今までの天心にそれ(殺意)はあったと思うんですよ。それが競技競技してたというか、一時期、天心は違う方向に走っていたことがあった。だから天心は原点に戻るってことでしょうね。要するに、もともと一緒にやってきた仲間だけど、殺意を持つってことは、一切情は出さないぞっていう。その決意みたいなもんだと思います。今まで以上に、ホントにいくよっていう。RISEの最後の試合だし、次の試合(武尊戦)もあるし」

あらためて記述するなら、天心は常に「やる側」の理屈をいかに超えるか。それを意識してリングに立ってきた気がする。だからこそのワンデートーナメントであり、体重差や得意のキックを封印されたフロイド・メイウェザー戦であり、堀口恭司とのキックルール戦にしても、ポジティブに引き受けなくてもよい試合だったかもしれないが、「観る側」を楽しませるために実現させてきた。

伊藤代表は言う。

「彼は格闘技界と世間をつないだ人間の1人だと思う。僕もファイターはそうあるべきだと思う。やっぱり格闘技という小さな村にいても、仕事も限られちゃうし、知名度も限られちゃう。そこをいかに出るか。それを天心はやってきた。それをしなかったら選手ははじけられないですよね」

ではなぜ、多くの選手が天心のようにはじけること、つまりは「やる側」の理屈にとどまっているのか。

「勝ち負けばっかりとか、何かを気にしすぎちゃっているからじゃないかな。ただ、そこに飛び込んだら、勝ち負け以上のものが絶対にあるんですよ。例えば絶対にメイウェザーなんかとやらないよっていう、僕みたいな感覚じゃない人もいるかもしれないけど、僕はそういう話が選手に来たら、飛び込めよ。こんなチャンスないよ。カネを払ったってできねえよ。やるべきだよって言うでしょうね。おいしくない? って。そういう選手がチャンスをつかんでいきますよね」

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