ゲレンデBGMは時代の“映し鏡” 有名スキー場に聞いた雪山を盛り上げる選曲手法とは

北京五輪の“五輪イヤー”にスキー・スノーボードのシーズン到来で、冬レジャーに注目が集まっている。ゲレンデのムードを演出する大きな要素が、「BGM」だ。冬の名曲や定番Jポップのイメージが強いが、時代時代のはやりが色濃く反映される側面があり、来場者にとって楽しみの1つでもある。雪山を盛り上げる“ゲレンデソング”のチョイスや趣向を凝らした工夫について、施設運営の仕掛け人に聞いた。

“ゲレンデソング”は時代を反映。苗場スキー場は60周年の記念イヤーを迎えている【写真:苗場スキー場提供】
“ゲレンデソング”は時代を反映。苗場スキー場は60周年の記念イヤーを迎えている【写真:苗場スキー場提供】

全国ブランドの苗場スキー場&高鷲スノーパーク  「あえてこれはない」の“選曲” 客リクエストの多様化も

 北京五輪の“五輪イヤー”にスキー・スノーボードのシーズン到来で、冬レジャーに注目が集まっている。ゲレンデのムードを演出する大きな要素が、「BGM」だ。冬の名曲や定番Jポップのイメージが強いが、時代時代のはやりが色濃く反映される側面があり、来場者にとって楽しみの1つでもある。雪山を盛り上げる“ゲレンデソング”のチョイスや趣向を凝らした工夫について、施設運営の仕掛け人に聞いた。(取材・文=吉原知也)

 バブル期のスキーブームを象徴すると言えるのが、1987年に公開されたホイチョイ・プロダクションで知られる映画「私をスキーに連れてって」だろう。松任谷由実「BLIZZARD」「恋人がサンタクロース」は印象深い。さらに、“冬の女王”と呼ばれた広瀬香美のアルペンCMソング「ロマンスの神様」(93年)、「ゲレンデがとけるほど恋したい」(95年)。90年代は強力ラインアップばかりで、globe「DEPARTURES」(96年)、GLAY「Winter,again」(99年)も。「Choo Choo TRAIN」(ZOO、EXILE)も“テッパン”の1つで、ゲレンデ映えする楽曲たちが彩ってきた。

「あえてこれというものはないんです」。2021年で60周年を迎えた苗場スキー場(新潟県)の担当者は、選曲について意外なことを明かしてくれた。BGMは特別に選ぶわけではなく、その時々、その時代のヒットチャートを流すのが基本だという。かつてはCDを再生していたが、現在は有線放送「USEN」ではやりの楽曲のチャンネルを流している。全国的に有名な老舗ゲレンデのやり方はずっと変わらない。

 苗場ではアニーバーサリー企画として、今年3月までの期間限定で、日によって時間帯を決めて「80年代、90年代ヒット曲特集」を流すプログラムを実施している。ゲレンデに刻まれた歴史を懐かしんでもらおうという狙いがあるという。一方で、隣接するかぐらスキー場の「田代エリア」では、「BGMなし」の工夫も。滑って降りてくると苗場プリンスホテルが見えるリゾート感満載の苗場ゲレンデとは打って変わって、田代エリアは自然あふれる景色が最大の魅力だ。担当者は「眺望をストレートに楽しんでいただくために、濃霧などで視界不良の場合を除いて、音楽は流していません」と説明する。

 さらに、苗場スキー場の担当者は興味深いポイントを教えてくれた。「ゲレンデは、非日常の空間です。リフトに乗りながら聞いた曲を『いい曲だな』と思って、帰りの車の中でラジオで聞いて『ヒットしているんだ』と知り、後日にカラオケで歌う。皆さんそんな経験をしたことがあると思います。友達や家族、恋人と一緒に楽しんだゲレンデの思い出は、いわば記念日。ゲレンデで聞いた曲がその人の記憶に残り、その曲を何度も聞いたり歌ったりすることが重なり、ヒットの流れが生まれる側面があるのではないでしょうか」。

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