朝倉海の発した「1日に2試合は絶対やっちゃダメ」は是か非か 歴史的背景から考える
世界を震撼させたUFCとK-1におけるワンデートーナメント戦
この大会、当時、まず誰もが驚いたのは、現在では当たり前になってしまった、オクタゴンという八角形の金網のリングだった。
ここに対戦する両者が放り込まれたばかりではなく、反則は目潰し、かみ付き、金的攻撃のみで1ラウンド5分の無制限ラウンド制という前代未聞づくし。しかも無差別級での試合に加え、決着は選手のギブアップかノックアウト、セコンドのタオル投入によるストップのみ。
これにグローブおよび道着・シューズ等の着用は自由という形式で争われたため、中には片手だけボクシンググローブを着用して出場する選手までいたのだから、文字通り、“あり得ない場面”ばかりが現出されていく。
そして、この際に用いられたのが、世界の精鋭ファイター8人によるワンデートーナメント戦だった。
結果、決勝戦でジェラルド・ゴルドーを下したホイス・グレイシーが栄えある第1回の優勝者に輝き、グレイシー一族の存在を満点下に知らしめることになる。
まさに「格闘技界を震撼させた日」。
この日を境に、格闘技界の歴史がこれ以上ないほどに大きく動いたことがこれまでにあっただろうか。
最大の理由は、格闘技に精通する者であれば、誰もが1度は空想するルールの大会が、現実のものとなって出現したからに他ならない。
そこから、それこそ世界中に存在する腕に自信のある猛者が、いかにこのルールを攻略できるのか。四半世紀以上にわたって試行錯誤が繰り返された結果、現在ではその攻略法に則って、試合が展開されているように思う。
それはこの試合形式とワンデートーナメントの“歴史”が始まった瞬間であり、ここから現在に至るまで切っても切れないものとなった瞬間だった。そういう認識が大前提としてあったからこそ、朝倉海の発言に違和感を覚えてしまった自分がいたのである。
さて、UFCがこの世に誕生する半年ほど前、やはり現在の格闘技界を語るには欠かせない大会が、こちらも世界規模で開催される。
それが第1回K-1グランプリ(1993年4月29日、東京・代々木第一体育館)である。
細かな説明は省くが、要約するとこの大会は、それまでヒジありで争われていたキックボクシングの試合からヒジ攻撃を禁止したK-1ルールを採用した。