朝倉海の発した「1日に2試合は絶対やっちゃダメ」は是か非か 歴史的背景から考える
大みそかの「Yogibo presents RIZIN.33」(さいたまスーパーアリーナ)からひと月が経過した。その間、最も物議を醸したのは、もちろんシバターによる八百長騒動になる。しかしながら個人的にそれをしのぐインパクトがあるものが存在した。それこそが朝倉海が年明けに口にした「1日に2試合はやっちゃダメ。限界を超えてる」だった。今回は個人的になぜその発言が衝撃的だったのか。格闘技界における歴史的背景を絡めながら話を進めていく。
朝倉海と扇久保の口にした正論
大みそかの「Yogibo presents RIZIN.33」(さいたまスーパーアリーナ)からひと月が経過した。その間、最も物議を醸したのは、もちろんシバターによる八百長騒動になる。しかしながら個人的にそれをしのぐインパクトがあるものが存在した。それこそが朝倉海が年明けに口にした「1日に2試合はやっちゃダメ。限界を超えてる」だった。今回は個人的になぜその発言が衝撃的だったのか。格闘技界における歴史的背景を絡めながら話を進めていく。(文=“Show”大谷泰顕)
「1日に2試合はやっちゃダメ。限界を超えてる」
これは年明け5日に朝倉海が自身のYouTubeチャンネルで発した言葉である。記者がこれを目にしたのは、その動画から作成された記事のタイトルにあった活字が最初だった。
その後、実際に動画を見てみるとガラリと印象が変わっていくのだが、本音をいえば、その活字のタイトルを目にした際の衝撃というか落胆は尋常ではなかった。正直な話をすると、動画を見るのが怖くて、ようやく見ることができたのはここ数日のこと。そのため、この記事を書くのがこのタイミングになってしまったわけだが、個人的にはその間、勝手に憤慨しつつショックを受けていた。
いったい朝倉海は何を考えているのか。そんな当たり前のことをどうして口にするのか。限界を超えたことに挑むからこそ、人に“何か”を与えることができるのではないのか。これだからゆとり教育は……!! 大げさに書くとすれば、そんな雰囲気だろうか。
実を言うと、朝倉海とバンタム級グランプリ決勝戦を闘った扇久保博正も、自身のYouTubeチャンネルで同様の発言をしている。
誤解なきように説明していくと、朝倉海も扇久保も決して間違ったことを口にしてはいない。コロナ禍で強豪外国人選手が来日しにくい状況とはいえ、それだけ現在のRIZINのバンタム級戦線がハイレベルにあり、かつ選手生命をおびやかす、拳を壊す確率を懸念してのもの、という意図は十分に理解ができる。
それでも、発信力のあるファイターがそういった正論を口にすると、いつの間にかその流れができてしまい、今後そういった試合形式を行うことが難しくなっていくのではないか。身勝手ながらそんな思いが脳裏をよぎった。
そもそも論をひも解くために、現在のRIZINの採用しているMMAルールの成り立ちを振り返ってみよう。「1日に2試合」が生まれたのは、そういった歴史的背景に根ざしたものになるからだ。この試合形式は、第1回のUFC(1993年11月12日、米国コロラド州デンバー)で、史上初となる世界規模の大会に採用された。