「ADHD診断」がトレンド入り 専門家は「医者でも判断基準は曖昧」と指摘

注意欠陥・多動性障がいなどの発達障がいを指す単語「ADHD」。ネット上では20問程度の設問から当てはまる項目を選ぶだけで簡易的な自己診断ができるアプリやセルフチェックシートも複数存在する。SNS上ではこの診断結果を投稿する動きもあり、27日には「ADHD診断」がトレンド入り。当事者からは「簡単にADHDを名乗らないでほしい」と疑問の声も上がっている。

「ADHD診断」が話題となっている(写真はイメージ)【写真:写真AC】
「ADHD診断」が話題となっている(写真はイメージ)【写真:写真AC】

当事者からは「簡単にADHDを名乗らないで」と批判の声も

 注意欠陥・多動性障がいなどの発達障がいを指す単語「ADHD」。ネット上では20問程度の設問から当てはまる項目を選ぶだけで簡易的な自己診断ができるアプリやセルフチェックシートも複数存在する。SNS上ではこの診断結果を投稿する動きもあり、27日には「ADHD診断」がトレンド入り。当事者からは「簡単にADHDを名乗らないでほしい」と疑問の声も上がっている。

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「計画を立てて物事を進めることが苦手だ」「落ち着きがなく、じっとしていられない」。ネット上では、こうした設問に「あてはまる」「ややあてはまる」「あてはまらない」「どちらともいえない」などの選択肢を選んでいくことで、「ADHD度数」を診断する自己判断サイトが多数存在する。診断結果は100点満点で点数が高いほど重症とされ、「正常な方よりもかなり高い点数のため、ADHDの可能性が非常に高いです」「ADHDは薬物治療等で抑制する事はできますので、できるだけ早く専門医に相談することをお勧めします」などのアドバイスが表示される。

 こうした診断サイトの中には、診断結果をSNSに投稿できるものもあり、ネット上では「やっぱオレADHDだったわ」「やば!思ったより点数高いんだけど」という自己診断の感想をつぶやく声も。一方で「こんな簡単なテストでADHDを名乗らないでほしい」「ADHDを健常者のおもちゃにするな」といった批判の声や、さらにその批判を揶揄(やゆ)した「ADHDマウント」というスラングが生まれるなど、物議を呼んでいる。

 そもそも、ADHDとは簡易的なチェックシートで自己診断できるものなのか。ADHDを持つ子どもやその親を支援するNPO法人「あではで神奈川」の篠山淳子代表は「ネットの診断はおろか、医者によっても診断基準は曖昧です。ある病院で診断されなくても、別の病院で『ADHDですね』ということは往々にしてありますし、その逆もしかりです。中にはろくに診察せずに診断書を書く医者もいます」と実態を語る。

「まず、厳密にはADHDは病気ではありません。忘れっぽかったり、不注意だったりといった個性のひとつで、それがひどくて社会生活に支障をきたすような人でも生きやすいように、便宜的に作った障がいの概念がADHD。診断名がついて楽になるという人がいる一方、中には『この子はADHDだから』とその子の個性を病気と捉えてしまう親もいて、それは非常に残念なこと。環境と自己肯定感を養ってあげることが重要です」(篠山氏)

 発達障がいをもつ大人を支援するNPO法人「DDAC」の松下芳文氏は「正直、この診断では自分がどうなりたいかという結果が出るだけでしょう。自分はADHDだと思いたい人ほど高い数値が出るようになっています」としつつ、自己診断の意外な有用性を語る。

「私たちも研修でチェックシートは使いますが、注意すべきはむしろ自己診断の結果が低い人なんです。傾向として、最初から『自分は変わっている』『ADHDかもしれない』と思っている人は、うまくいかなくても障がいのせいにできるのでそこまで苦労されていない。そこに気づかない人、ご自身のことを把握できていない人ほど思いつめて、うつになってしまう。本当に苦しんでいる方は、ADHDや発達障がいについてよく知らない人かもしれない。そういう人が障がいに気づくきっかけとしては、こういったアプリも有意義なのかもしれません」(松下氏)

 今では広く知られ、潜在的にはかなりの割合でいるともされるADHD。人によって程度の差も大きく、社会としてもさらなる理解が求められそうだ。

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