コロナ禍をアイデアで切り開くプロレス団体 今だからこそできるファンサービスを実践

ノアの公式グッズ「ペンライト」は様々な色に変化【写真:柴田惣一】
ノアの公式グッズ「ペンライト」は様々な色に変化【写真:柴田惣一】

コロナ禍でファンも工夫する応援方法

 素晴らしい試合ももちろん印象に残るが、ファンサービスもいつまでも心に残るもの。高校時代、スター選手にサインしてもらった友人が今でもTV番組やCMなどで見かける度に「あの選手にサインしてもらったんだよ。握手もしたんだ。手がすごく大きかった」と家族に自慢しているという。ずいぶん前の話なのに、忘れ得ぬ素敵な思い出なのだろう。

 いずれにせよ、ファンからしてみれば声援やブーイングしたくとも、今は拍手しかない。全日本プロレスの宮原健斗とファンの間であうんの呼吸がある。三々七拍子が自然発生し爆発する。選手それぞれにそれぞれのリズムで手拍子を送るのも面白いかもしれない。

 また、どうやらファン発信らしいが、ペンライトによる応援も広がってきた。多くの色を選択できるペンライトを用意し、好きな選手のカラーにして振る。今では公式グッズにオリジナルペンライトが加わっている。選手からもわかりやすく、自己主張できるとあって高評価を得ているようだ。

 選手のTシャツを着こみタオルを振る。デコレーションしたうちわを掲げる。声を出さなくとも応援はできる。ファンの熱い思いには頭が下がる。

 また「売店に出ていない選手のサイン承ります」というサービスも展開されている。試合順の関係などで売店に出られない、控室にいる好きな選手にサインしてもらえるというもので、好評を得ている。

 マスクをファンにプレゼントしている団体もある。

 こんな時代だからこそ、また心がすさんでしまう世相だからこそ、ファンサービスが身に染みるし、ファンもなお一層それを求めているのではないだろうか。

 自由に声を上げられた当時の応援合戦は、いささか過激になることもあった。コールが何度も発生し、ヤジを飛ばし合い、ブーイングも激しかった。だがコロナ禍の会場の拍手による応援を目にするにつれ、あの熱気が懐かしくなるのは私だけではあるまい。

 声を出しての応援、そしてサインボールの投げ入れなどリング上と観客席を結ぶファンサービスの復活はいつになるのか? ぐっと堪えて待つしかないが、明けない夜はない。その日を楽しみに、プロレスの力を信じるしかない。

次のページへ (3/3) 【写真】藤波辰巳(現・辰爾)の公式サインボール
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