「日本人とは何か」ディーン・フジオカ、異色の忍者アクションで出した答え
アクション・バイオレンスという手法「文化の側面をあぶり出すには、暴力がわかりやすい」
アクション・バイオレンスという手法を使った理由は何か。「日本で仕事を始めたときにアクションのレベルが高いのに、アクション作品が少ないと思っていたので、アクション俳優やスタントマンにスポットライトを当てるのは、ロマンチックだと思いましたし、忍者ショーをやっている人の舞台裏は観客を引き込む手法としても面白いなと思いました。文化の特性はいろんなところに現れると思うんですけど、暴力もその一つ。人を殺傷するために武器は文化によって違うし、暴力を行使する方法も違う。日本の独特なもので言えば、『ハラキリ』。文化の側面をあぶり出すには、暴力がすごくわかりやすいと思ったんです」。
観客は日本人だけではなく、海外も意識している。「テーマは宗教と暴力。“日本語人”が見ても楽しめるエンターテインメントだと思うし、日本には全く興味がない人、“ニンジャ、スシ、サシミ”ぐらいしか知らない人も楽しめるようなコンテンツを作るべきだと思いました」。
このディーンの思いに賛同した松永監督も2019年、新進芸術家海外研究制度によって、1年間ロサンゼルスに留学した経験も持つ。
「ディーンさんは日本発信でありながら、発信先は海外も見ている。それは日常的にやってきたからこそ。僕はロスに留学した際、向こうの人たちからは『世界のマーケットに載せたいんだったら、ジャンル映画を作るべき』と強く言われていて、ちょうどいくつかやろうとした企画が、コロナでダメになった時に、この話をいただきました。表面上は“忍者アクションムービー”というジャンル映画にはなっていますが、その奥には人間ドラマを始め、いろんなものを詰め込んだ作品にはなっている」と松永監督。
ハリウッドではトム・クルーズ、ベネディクト・カンバーバッチを始め、スターたちが映画製作にも積極的だが、日本では貴重な存在とも言える。ディーンはこう話す。
「映画製作は、やりたい人はやるべきだとは思いますが、意味を見いだせない人は無理だと思います。この映画も企画から完成まで3年以上かかっていますし、作品を作るのは文字通り命がけ。精神的にもすごい負荷がかかる。なぜ、この作品を世に生み出すのかを明確に持ち続ける人はやるべきだと思います」