コロナ禍で「結婚式をやる意味があるのか」 プランナーが現場で直面する苦悩、打開策とは

新型コロナウイルス禍は3年目となり、人生の門出を祝う結婚式に影を落としている。コロナ流行後のブライダル業界の経済損失は約1兆円の試算がある中で、結婚式の現場はどのような影響を受け、どう苦難を乗り越えようとしているのか。全国的に活躍するフリーウエディングプランナーの佐伯エリさん(41)に聞いた。

コロナ禍の結婚式について語った佐伯エリさん【写真:ENCOUNT編集部】
コロナ禍の結婚式について語った佐伯エリさん【写真:ENCOUNT編集部】

NHK「プロフェッショナル」で紹介された佐伯エリさん 「結婚式は人と人の思いが交差する場所」がモットー

 新型コロナウイルス禍は3年目となり、人生の門出を祝う結婚式に影を落としている。コロナ流行後のブライダル業界の経済損失は約1兆円の試算がある中で、結婚式の現場はどのような影響を受け、どう苦難を乗り越えようとしているのか。全国的に活躍するフリーウエディングプランナーの佐伯エリさん(41)に聞いた。(取材・文=吉原知也)

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 群馬県を拠点にする佐伯さんは結婚式場での約15年間の勤務を経て、2018年に独立。新郎新婦に丁寧に寄り添うスタイルに定評があり、手がけた件数はこれまで約2000件。先日はNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」に取り上げられた。ところが、独立して1年のタイミングで、コロナショックに見舞われた。20年春から延期が続出。コロナ禍以降は無期限延期にしている顧客が3分の1の割合に。「終わりが見えない」苦境に陥った。

 直面したのが、コロナ禍で結婚式を挙げていいのかと頭を抱える新郎新婦たちの苦悩だった。「私たちプランナーは無責任に『やりましょう』と言えないし、『やめましょう』なんて口にできない。そんな中、感染リスクの捉え方はカップル間でも差が出てきます。片方は楽観視で片方は心配でたまらないというケースもあり、難しい調整が多々あります」と語る。

 ある20代カップルの事例が印象深いという。1度目の緊急事態宣言によって街から人の姿が消えた20年5月、新婦は「ぎりぎりまで粘って待ちたい」と結婚式の開催を望んだが、新郎は「ゲストに迷惑がかかる」と延期の考え。「打ち合わせで何度も、『どうにかやりたい』とぽろぽろ涙を流していた新婦の姿を今も覚えています」。新郎にも事情があった。おばあちゃん子だったためどうしても祖母に晴れ姿を見せたい意向があり、高齢者の感染リスクを気にしていた。結局、感染状況を鑑みて秋に延期。改善せずその年は断念。1年越しとなる21年5月に無事に結婚式を挙行することができた。

 新郎の90歳の祖母は出席できた。しかし、新婦の祖父はその間に亡くなった。21年は喪中だったが、新婦の母は「やっていいよ」と若い夫婦の背中を押してくれたという。「娘のこれから先を思う、お母様の気持ち。私も2児の母なので、身に沁みました」と振り返る。

 2011年の東日本大震災当時は、計画停電など物理的な制約に苦労したが、コロナ禍は感染症という特徴だけでなく、心理面の影響が大きいという。結婚式を延期している顧客に「また考えてみるのはどう?」と聞いてみるも、「そういう気持ちになれない」との返事を受けることもあるという。佐伯さんにとっても心痛は重なっていく。

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