映画、ドラマのメインストリームを走る有村とインディーズ映画で確かな演技力を見い出された石橋は初共演。互いの印象はどうだったのか。

「有村さんはすごいところでやってきた方。本当にいろんな人から、いろんなことを求められる立場だと思いますが、それにすごく人間らしく答えている感じがしていましたが、実際にお会いして、なるほどって思いました。自分と向き合いながら闘っている感じがすごいなぁと。私も見習わなければと思いました。懐の深さが感じられて、本当にかわいい人なのに、すごくかっこいい」（石橋）。

「石橋さんの一ファンだったんです。『石橋さんが、みどりさん役』と聞いた瞬間に『やった！』と思いました。お芝居の中の石橋さんはかれんで、凛としていて、自由さもあります。現場では静かに自分自身と向き合っている。人に対するリスペクトが強く、石橋さんにしかない空気感がありました」（有村）。

　ドラマでは、コンビニのアルバイトをしながらも、無給で保護司を勤め、外見は髪を縛り、めがねをかけた真面目な佳代と、行動も言動も自由奔放で金髪姿のみどりが対照的に描かれる。

「原作を読んだインスピレーションのまま新鮮な気持ちで役に入りたい、と思っていました。前科者と言われる彼らも、元は被害者。ちょっとしたことで加害者になってしまう。資料を読んでいるうちに、自分でも経験したような、どうしようもない気持ちになり、そのせつない気持ちを抱えたまま入ることができました」（有村）。

「今まで舞台では金髪もあったんですけども、映像では初めて。あそこまで変わると、もう変身する感じで、よし、みどりになるぞ、という感じでした。歩き方、話し方などの無意識の部分で、それまでの境遇が見えてくる。前科者というレッテルを自分が貼ってはいけない。その人の心にあるものは何か。なぜ罪を犯すことになったのか。みどりの場合、その根本にはお母さんに愛されなかった過去があります。罪を犯そうが、犯さまいが、背負った過去は誰にでもあることで、自分自身でも納得がいきました」（石橋）。

　岸監督の演出は段取りだけ行い、テストなしに本番を撮影するという独自のやり方だ。有村は「監督は役者を信頼する方。未完成さを楽しんでいるところがあり、自分自身も楽しく過ごすことができました。『今の佳代はかわいかった』『きれいだった』と言ってくださるんですが、それは人間的な影が出た時なんです。そんなふうに言ってくださる監督さんはいなかったので、妙に照れくさかったです」とほほ笑む。石橋も「テストしないのは緊張しましたが、それは役者を100％信頼しているから。ここにいても、いいんだという気持ちになって、岸さんがOKというなら、何でもいいと思えました」と振り返った。

「WOWOWオリジナルドラマ　前科者－新米保護司・阿川佳代－」は毎週土曜午後10時30分放送・配信中。各話放送後、WOWOWオンデマンド、Amazon Prime Videoで見逃し配信される。1～4話一挙放送を12月18日午前11時～WOWOWプライム［第1話無料放送］で実施。ドラマ版の3年後を描き、森田剛、磯村勇斗ら豪華共演が話題の映画版は22年1月28日公開される。

□有村架純（ありむら・かすみ）1993年2月13日、兵庫県出身。2010年に「ハガネの女」でドラマデビューし、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」（13）で注目。「映画 ビリギャル」（15）では、第39回日本アカデミー賞優秀主演女優賞と新人俳優賞をW受賞。同作と「ストロボ・エッジ」（15）で第58回ブルーリボン賞主演女優賞。主な映画は「何者」「夏美のホタル」「アイアムアヒーロー」（16）、「3月のライオン」、「ナラタージュ」（17）、「コーヒーが冷めないうちに」「かぞくいろ RAILWAYS わたしたちの出発」（18）、「フォルトゥナの瞳」（19）など。17年にはNHK連続テレビ小説「ひよっこ」で主演。今年も「るろうに剣心 最終章The Final／The Beginning」「花束みたいな恋をした」などに出演した。

□石橋静河（いしばし・しずか）1994年7月8日、東京都出身。15歳から4年間のバレエ留学より帰国後、2015年の舞台「銀河鉄道の夜2015」で俳優デビュー。初主演作「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」(17)で第60回ブルーリボン賞新人賞をはじめ数多くの新人賞を受賞。ほか出演作に映画「きみの鳥はうたえる」(18)、「人数の町」(20)、「あのこは貴族」（21）。舞台は「神の子」(20)、「未練の幽霊と怪物」（21）など。赤名リカ役を務めたドラマ「東京ラブストーリー」（20）、「大豆田とわ子と三人の元夫」など話題作も多数。