北野高校から慶大、ニューヨーク大学留学 芸名から本名に戻した28歳女優の現在地

女優を志したきっかけを語った阿部純子【写真:荒川祐史】
女優を志したきっかけを語った阿部純子【写真:荒川祐史】

転機は河瀬直美監督の「2つ目の窓」、米国から帰国後は芸名から本名に改名

 撮影はコロナ禍前の2020年2月。ロケ地は車を止めて、さらに徒歩20分という雪深い山奥だった。「監督が何年もかけて探したという場所で、演じる上でも大変助けになりました。私は登山、ハイキングが好きなので、ワクワクしましたが、スタッフさんは大変だったと思います。笠松さんとは初共演ですが、ご自身も絵が得意だったので、私の似顔絵を描いてくださったりと、すぐに打ち解けました。いろんなスキルをお持ちの方だな、と思いました」。

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 小さい頃の夢はピアニスト。小学校の時にスカウトされ、当初はモデルとして活動。1つの作品で複数の役を演じたのは、1人3役だったデビュー作「リアル鬼ごっこ2」以来。本作では、原点に立ち返る思いもあった。名門・北野高校から慶応大学に進学した才女でもあり、将来の可能性は無限大にあったはずだが、なぜ女優となったのか。

「スタッフさんに、ものすごく映画好きの方が多くて、いろんな映画を紹介してもらったり、現場にいるうちに、新しい世界を見つけた気がしたんです。その最初に味わった楽しさ、ドキドキが今も忘れられないんだと思いますね」

 転機になったのは河瀬直美監督の「2つ目の窓」だろう。雄大な奄美大島を舞台に、16歳の少女が、命の大切さ、無情さを目の当たりにしながら、同い年の少年(村上虹郎)に恋をする青春ストーリー。当時、「吉永淳」の芸名で、文字通りの体当たりで演じ、カンヌ国際映画祭への参加を始め、第4回サハリン国際映画祭では主演女優賞を受賞した。

 この経験が、米ニューヨーク大留学にもつながっている。「1人で映画祭にも行かせていただきました。映画好きの方とか、お芝居がお好きな方が世界中にたくさんいて、プロフェッショナルだからこその世界があるんだなと思いました。当時は英語が話せなかったので、いろいろ話しかけてくださるのに、分からなかった。憧れの方が近くにいるのに、話せないのは悔しかった。留学は、日本語だけじゃなく、いろんな方とお芝居できたらいいなと思ったからですが、感情というものは世界共通。肌の色が違ってもしゃべる言葉が違っても同じなんだなっていうことを知ることができたのが大きかったですね」と振り返る。

 2015年の帰国後は芸名から本名の「阿部純子」に改名し、心機一転を図った。「それまでは、仕事をしている私と、学校に行っている私は別の人のように考えていたんですね。でも、1人の人間としてどう生きていきたいのかを考え、すべてのことは延長線上にあるんだ、と思えるようになったんです」。今後については「目の前にあるお仕事を一つずつ精いっぱいやっていきたいですね。今回の舞台が終わった時に自信になっていれば」と阿部。今回の舞台初挑戦もひとつのターニングポイントになるだろう。

□阿部純子(あべ・じゅんこ)1993年5月7日、大阪府出身。2010年、映画「リアル鬼ごっこ2」のヒロイン役で女優デビュー。主演を務めた「2つ目の窓」では第4回サハリン国際映画祭主演女優賞、第29回高崎映画祭・最終新人賞を受賞。同年に渡米し、ニューヨーク大演劇科に留学。主な作品に「孤狼の血」「海を駆ける」「ソローキンの見た桜」「罪の声」「461個のおべんとう」「燃えよ剣」など。「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア 2021」ではオフィシャルコンペティションの審査員を務めた。

ヘアメイク 長谷川大志
スタイリスト 菅沼愛

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