【週末は女子プロレス♯26】女優志望だった女子レスラー 高瀬みゆき、団体活動停止もプロレス継続へ

退団を考えたことがあることを明かした高瀬みゆき【写真:新井宏】
退団を考えたことがあることを明かした高瀬みゆき【写真:新井宏】

「出ていった選手が外で活躍するのは悔しい? いいえ、逆にうれしいですよ」

 とはいえ、何とか解散には間に合った。12・5大阪で5か月ぶりに復帰を果たす(SAKI&高瀬組vs谷&向後組)。アクトレスガールズ最後の後楽園となる12・13ではPUREーJのLeonが保持する無差別級王座に挑戦する。しかもこの試合は、高瀬の希望で実現。11月23日、PURE―J板橋に乗り込み挑戦を直訴、「東京での復帰戦はあの人と」と言っていたのが、Leonだったのだ。

「Leonさんが私がプロレス好きになる原点、火をつけてくれたんです。デビューした頃は練習の場がなくて出稽古に出ていました。そこで場所を提供してくださったのがJWP(現PUREーJ)さんで、とくにLeonさんは、私がプロレスをもっとやりたいというエネルギーを受け止めてくださって、イチから丁寧に教えてくださったんですよ。Leonさんって何年たっても進化し続けているし、まじめに努力する必要性を見せてくれたんです」

 もともと女優志望でこの世界に入った高瀬。ある日、スタッフとの関りからアクトレスガールズの坂口敬二代表を紹介され、「プロレスやってみない?」と声をかけられる。当初は観戦こそしたものの断っていたのだが、半年後に「すごく変わってるからまた見に来てよ」と誘われ会場へ。そこで高瀬は衝撃を受けた。選手たちが見違えるように輝いて見えたのだ。

「半年でこんなに人が変わるってことは、すごく一生懸命に生きているんだなと思いました。私は人生において、誰と一緒にいるかというのをすごく大事にしているんですね。何をするかよりも誰といるか。こういう本気の人たちと一緒に活動したいと思って、練習に参加したのがプロレスラーになったきっかけです」

 旗揚げ当初は何かと批判もされたアクトレスガールズだが、時間がたつにつれて周囲の見方も変わってきた。いまではほとんどの女子団体でアクトレスガールズ出身者が成長、活躍している。安納サオリ、中野たむ、万喜なつみ(現なつぽい)、有田ひめか(現ひめか)、角田奈穂ら枚挙にいとまがないほどだ。要は“離脱の歴史”でもあるのだが、プロレス団体としてはある意味宿命。むしろ“人材の宝庫”と言ったほうが適切だろう。現在の女子プロ界において、芸能分野からの参入が新人誕生の主流にさえなっているのだから。

「出ていった選手が外で活躍するのは悔しい? いいえ、逆にうれしいですよ。だってアクトレスガールズで育った選手じゃないですか。ここで育って外に出たら活躍できる。だからこの団体は素晴らしいんだぞと証明してくれるわけですから。むしろ誇らしかったです(笑)」

 実際、高瀬も退団を考えたことがある。自身の立ち位置に疑問を感じたからだ。「他団体で挑戦できるのに自分の団体でチャレンジできない。もっともっと刺激がほしいのに…」。代表がドン引きするほど号泣して訴えた。が、彼女は団体に留まった。19年12月、エースと言われた安納の退団がきっかけだった。「どうしてここでやってるの? と聞かれたこともあります。だけどここで残らなければ誰が後輩に教えてあげて誰がプロレスの希望を見せてあげられるんだろう? 誰がアクトレスガールズの熱いプロレスを担うんだろう? と考えたときに、これは抜けられないと思いましたね」

 以来、高瀬の試合は団体をけん引するような頼もしさに満ちていく。安納退団発表の前にAWGシングル王座を初戴冠。しばらくは高瀬がエースとしての役割をしっかりとまっとうした。しかし今年4月にSAKIに敗れベルトはBeginningからColorsに移動。ケガによる空白も痛かった。解散までに取り戻したい気持ちはある。が、これに関してはむしろ後輩に託したいとの思いが強い(自身は他団体PUREーJのベルトを取りにいく。これもまた未来へつなぐためだ)。

「プロレスを続けようという子にSAKIさんからのベルト奪取を託したいと思っています。SAKIさんからの勝利に真剣に向き合ってほしい。私は先輩のベルトに挑戦し、刺激をもらって成長につながりました。そこを経験していない子がまだ多いので、ここはぜひ経験してほしいなって。アクトレスガールズの終わりではなく未来につなげてもらいたいから、新しいスタートのためにベルトに挑戦する子が出てきてほしいなと思ってます」

 解散はさみしいけれど、再びリングに上がれる喜びをかみしめている高瀬。復帰を控える彼女に話を聞いていると「もうワクワク、ワクワクです(笑)。かなりテンションが高まってきています!」と待ちきれない様子だった。もともとさまざまなリングに呼ばれていただけに、彼女が具体的にどの道を選ぶかは間もなく判明するだろう。たとえどのリングを選んだとしても、熱いファイトが復活するのは間違いない。来年からは、アクトレスガールズを先に出ていった選手たちとの競争にもなる!

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