6歳から合唱団 多摩美在学中から女優デビュー 26歳が映画で“大役”をつかむまで
バイオリンは3か月前から特訓、演奏は音楽に動きを合わせる「あてぶり」
バイオリンも3か月前から特訓。劇中の楽器は母が昔使っていたものだ。「母と父が子どもの時に習っていて、楽器自体は実家にあったのですが、私はまったくの初めて。先生が、『練習から本番まで1個の楽器でやらないと全然違うから、練習を始める前にまず楽器を決めるところから始めた方がいい』と言ってくださったので、母のバイオリンを使うことになりました。父も母もバイオリン自体にはあまりいい思い出はないみたいで、おばあちゃんが喜んでいますね」と笑う。
劇中の演奏は、音楽に動きを合わせる「あてぶり」。「最初は振りさえできれば、と思っていたんですが、きれいな形ができてたら、音は出るんですよ。だから、思っていたよりも高い完成度まで持っていかなきゃいけないんです。」と茶目っ気たっぷりに振り返る。
人気者、実力者に混じってのキーパーソン役での出演、バイオリン、そして、ネーティブの京都弁。すべてが初めての挑戦だった。「メインのキャストの方々が私のキャリアとか本当に関係なく対等に一緒に作ってくださったので、普段通り、作品のことだけを考えることが出来ました。小夜役を演じてみて、私はこんなに人に優しくできていたかなと我が身を振り返ったりしましたが、共通しているのは、何かをすごく好きになった経験をしていることでした」。
川添の場合、それは6歳のときから始めた杉並児童合唱団だった。「舞台に立って、表現の楽しさを知るきっかけを作ってくれました。何度かやめたいと思ったこともあったんですが、なぜか戻ってきてしまう。京都弁も、耳から音を覚えることも得意だったので、その経験も役に立ちました。そういう意味では、自分がやってきたことがすべて役に立った。自分の原点を見つめ直す作品になりましたね」。
その後は多摩美術大学映像演劇学科に進学。「大学に入ったのは表現を学びたいと思ったからです。ただ仕事として、できるとは思っていなかったんです」。
大学では、教壇に立つ青山真治監督との出会いもあった。「周りは映画オタクの子が多かったので、青山さんのことを神のようにあがめている人もいましたね。私も、もちろん知っていました。年に1本、青山さんが学内のスタッフを使って、作品を作る授業があって、『役者になるべきだよ』と言われました。最初は、いやですと言っていたんですが、2年くらい経った3年の冬に覚悟を決めました」。