【気になる人】50億円の借金、懲役370年求刑の村西とおるAV監督が語る地獄から這い上がる原動力とは

9月に「全裸監督が答える不道徳で世界一まっとうな人生相談」(講談社)を上梓
9月に「全裸監督が答える不道徳で世界一まっとうな人生相談」(講談社)を上梓

下を見ろ。オレがいる

 人生、壁にぶつかるのは当たり前です。その時どうするか。故・野村克也氏(享年84)はスランプに陥った時には近場の大きな病院の待合室に行ったそうです。そこには重度の障がいを持った4、5歳の息子を連れた20代の母親がいる。自分は末期がんを患いながらも、なんとかしてこの子を助けたいと思って踏ん張っている。病院にはそういう人たちがたくさん来ているわけです。そういう人たちを見ると、スランプなど屁でもなく思えるのです。野村氏は病院に行って元気をもらって帰るんです。

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 失敗してつらい出来事にぶつかり、絶望して死んでしまいたいと思った時は、自分よりもっとつらい経験をしている人がいるということを忘れないこと。そんな時は、この私のことを思い出してください。「下を見ろ、オレがいる」。地獄の淵まで行った私でもこうして生きてきているじゃありませんか。

 もはやこれまでと思っても、いやまだまだ頑張れるかもしれないと思い続けること。ポジティブに勇気をもって乗り越えていかないと。

これからも最前線で生きる

 そんな気持ちで私はこれからも最前線で生きてまいります。60代になってリタイアして庭いじり、孫の世話、居酒屋での一杯の年金生活。それも一つの人生ですが、しかし私は85歳が最高峰と思ってやっております。体力も精神力も創造力もまだまだ衰えるものではありません。

 私の仕事の場合、昔の名前でメシは食えないんです。今日唯今がすべて。今日唯今現役でやっていて、現在においても果たして信長でありえるか、秀吉でありえるか、家康でありえるか、それを作品で証明しないといけない。最前線の20代、30代、40代の監督と伍していかないと。視聴者の皆さんは有名な村西監督だからというふうにはゲタを履かせては見てくれない。シビアです。73歳でもやっぱりあんたが大将と言われないと私の存在の意味がないんです。ですから私は現役として真剣白刃取りの境地で今も生きているのです。それは私の誇りとするところですね。

□村西とおる(むらにし・とおる) 1948年9月9日、福島県いわき市生まれ。高校卒業後、百科事典のセールスマン、テレビゲームリース業、ビニ本販売などを経て、AV監督に。88年、AVメーカーのダイヤモンド映像を設立するが、通信衛星放送事業に失敗するなどし、92年に倒産。96年、世界初のアダルトDVDを制作。2018年にNetflixで本人がモデルのドラマ「全裸監督」(主演山田孝之)が世界配信(190か国)。21年6月には「全裸監督2」が配信された。9月に夕刊紙「日刊ゲンダイ」連載の人生相談をまとめた「全裸監督が答える不道徳で世界一まっとうな人生相談」(講談社)を刊行。

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