世界大会進出のeスポーツ選手、“原動力”は仲間の存在「恩を返すためにも勝ちたい」

“世界行き”を懸けた戦いで実感したのが、仲間の存在の大きさだった【写真:ENCOUNT編集部】
“世界行き”を懸けた戦いで実感したのが、仲間の存在の大きさだった【写真:ENCOUNT編集部】

「ここまで来ることができたのは、僕一人の力ではない」

 プレーオフは水煮にとって、仲間の存在の大きさを実感する戦いでもあった。シャドウバースに限らずカードゲームは基本的に1対1の個人競技だが、1人ではなくチームやコミュニティー単位での切磋琢磨(せっさたくま)は珍しいことではない。プレーオフ前の1週間は、非常に濃密なものになったという。

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「僕が所属しているコミュニティーの一つのメンバーに、毎日調整を手伝ってもらっていました。もともと、僕から声をかけることは少なかったんですが、今回は思い切ってお願いしたら、毎回人が集まってくれたんです。『仲間っていいな』と思いました。内容に関しては、3つ目のデッキ候補だった『アクセラレートエルフ』の練習にあてたのですが、画面共有でプレイを見てもらったり、指摘してもらったり、試合後にはリプレイを見ながら選択肢の検討をしたりして練度を上げていきました。プレーオフにエルフを持ち込んで勝てたのも、その1週間があってこそ。本当に仲間っていいものだと伝えたいですね」

 その効果は、実力の向上以外にも表れた。プレーオフの水煮は、先にラウンドを取られたり、カード運に恵まれなかったりと、決してすべてが順調だったわけではない。3本先取のルールの中、決勝では2本を先に取られながらも、逆転優勝を果たしている。劣勢でも丁寧なプレイが崩れなかったのは、メンタル面でも仲間たちとの時間が「かなり大きな支えになっていました」と明かす。

「決勝では2本先に取られてしまい、『集中できていないんじゃないか』とも自分で思っていたんですが、『ここで負けたら仲間に申し訳ない』という気持ちもあり、切り替えて雑なプレイをしないように心がけていました。プロリーグでもそうですが、仲間の思いを背負っていると、『どうしても勝ちたい』という思いが強くなりますね」

 あらためてプレーオフの戦いを振り返り、「仲間のためだったり誰かのために何かするのが、僕にとっての原動力かもしれないです」と認識した水煮。世界大会へのモチベーションも、仲間たちへの思いがベースとなっている。

「もちろん競技プレイヤーとして世界大会に出たい、世界で上に立ちたいという思いはありますが、それよりも世界大会まで一緒に調整してくれた人たちのために勝ちたいという思いのほうが強いですね。個人の競技ではありますが、ここまで来ることができたのは、僕一人の力ではない。恩を返すためにも勝ちたいという思いです」

 仲間とともに高みに駆け上がり、世界への挑戦権を手にした水煮。謙虚かつ不屈のメンタリティーは、eスポーツの舞台で世界を目指すプレイヤーたちのお手本になるものだろう。

「競技を続けていれば、負けることやつらいことはたくさんあると思います。ただ、そこで折れず、諦めず、挑戦し続けた人が上に行ける。諦めずに頑張ってほしいですし、楽しむ心を忘れずにゲームをプレイしていけば、おのずと道は開けるんじゃないかと思っています」

 世界大会「Shadowverse World Grand Prix 2021」は11月にDAY1とDAY2、12月にGRAND FINALが開催される。

□水煮/1988年2月3日、山形県生まれ。横浜F・マリノスeスポーツ「シャドウバース」部門にチーム発足から所属し、ローテーション担当として活躍中。「Shadowverse World Grand Prix 2021 JCGオンライン予選大会 プレーオフ」で優勝を果たした。
ツイッター:https://twitter.com/mizuni00

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