伝統の「いかめし」守る女性社長 レポーターとの“二足のわらじ”は「どちらも本業」

経営については無知からのスタートだった阿部商店の3代目・今井麻椰さん【写真:安藤かなみ】
経営については無知からのスタートだった阿部商店の3代目・今井麻椰さん【写真:安藤かなみ】

「レポーターは副業ではありません」 二足のわらじにも前向き

 もともと、父からはいかめし屋をやるにしても「全然違う畑の仕事をしてから」と言われていて、それはどんな仕事なんだろうと考えていました。メディアには興味がありましたが、表に出るよりも制作側に行きたかったんです。でも、アメリカでの経験で、「自分が伝える側になるのはどうだろう」と思うようになりました。

 日本に戻って、アナウンサーを養成する学校の短期集中講座に通ってみたら、周りはみんな大学1年生でした(笑)。それでもBSフジの学生キャスターに合格して、半年間活動しました。研修も受けて、生放送も経験。ここまで来たら本気でやろうと思ってキー局のアナウンサー試験を受けてみましたが、新卒ではないこともあって不採用に。フリーのアナウンサーになりましたが、そう簡単に仕事なんて見つからない。「もう辞めようかな」と思っていたときに、Bリーグ開幕とともに始まったバスケットボール番組のアシスタントMCのオーディションに受かりました。

 そういった縁があって、バスケの会場にいかめし屋を出店させてもらうこともあります。バスケファンがいかめしのファンになってくれることは、初代や父にはできなかったこと。新しい層のファンを獲得することはいかめしにとっても大きいです。物産展では接客が命です。商品の提案など、購入につながる細かい接客も、レポーターの経験が生きていると思います。

 ただ、レポーターとして活動しながら、社長業もやっていくことについてはさまざまな意見がありました。世間というよりは、一緒にいかめしをやっている人の中から「レポーターをやめて、いかめしに絞ってほしい」という声もあって、最初はすごく悩んでいましたね。でも、レポーターをやることが自分の原動力になっていますし、いかめしにとってもプラスの効果を生んでいます。メディアに出ることで、1人でも多くの人がいかめしを知ってくれているということを、最近は周りの方も理解してくれていると思います。

 もちろん、どうしても華やかでチャラチャラした世界に見えてしまう人もいると思います。私にとってレポーターは副業ではありません。とても奥深いお仕事です。社長としての基礎を固めながら、いかめしの業務を日々全うし、どちらも本業として真剣に取り組んでいます。

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