藤井聡太3冠誕生! 叡王戦第5局は効果実感しにくい中盤の一手が効いた 真田圭一八段解説

真田圭一八段
真田圭一八段

59手目に藤井2冠の秀逸な手があった

 勝負の分岐点は58手目△7五銀だったと思う。この手は2枚銀が五段目に並ぶ迫力満点の形。豊島2冠の打倒藤井の考え方は、積極的に前に出て、リスクを取っても攻撃的に行く。これがタイトル戦期間中、一貫していたと思う。ここで代えて△5三銀と銀を引けば、善悪は別として全く違った展開になっただろう。

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 一方、藤井2冠の方はどうだったか。その後の展開を見る限り、65手目▲6七銀引と73手目▲6六金から続く▲5六金。この金銀の捌きがうまかった。だが、真に秀逸だったのは将棋ソフトも推奨する▲6七銀引の前に、59手目▲2四歩から続く▲2五歩と継ぎ歩攻めしたところにあったと思う。この攻めは次に▲2四歩△2二歩と2筋を詰めた時に、後手玉が遠くて響きが薄く効果を実感しにくい。だがここを境に、以降は一手ずつ指し手が進むたびに、藤井2冠の方に形勢が傾いていった。

 本局でも、藤井将棋の大きな武器である中盤力をいかんなく発揮して、終盤は圧倒しての勝利となった。これでダブルタイトル戦は藤井2冠が防衛と奪取、新3冠誕生を10代で達成という結果となった。

 勝ち将棋はほぼ不利な局面を作らず勝利するという、デビュー以来変わらない安定した内容で、トップ棋士である豊島2冠を圧倒。だが1か月後にはこの両者は竜王戦に舞台を変えて三たびタイトル戦で激突する。豊島竜王は、ここでもし敗退すると無冠に転落してしまう。棋士人生の意地をかけて立ちはだかるだろう。

 藤井新3冠は、もし竜王奪取すれば4冠王となり、8大タイトルの過半を手に入れることになる。そうなれば、史上初の8冠王が見えてくる。そんな壮大な夢にもつながる、藤井新3冠の誕生。この夢は果たしていつまで続くのだろうか。

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