【週末は女子プロレス♯13】タイガー・クイーンが衝撃デビューも…“仕掛け人”酷評の真意とは

7・29後楽園でタイガー・クイーンは鮮烈なデビューを果たした【写真:新井宏】
7・29後楽園でタイガー・クイーンは鮮烈なデビューを果たした【写真:新井宏】

“過激な仕掛け人”新間寿会長はクイーンの初陣に疑問を投げかける

 ところが、初代の生みの親でもある“過激な仕掛け人”新間寿会長だけは異論を唱えた。「本当にいい試合とは何十年を経ても人々の記憶に残る試合のこと。果たして今回の試合は、そういう試合だったでしょうか? 一発で決まる緊張感こそプロレスの神髄」と、クイーンの初陣に疑問を投げかけたのだ。確かにそうだろう。ストロングスタイルプロレスとは昭和のストロングスタイル復興をテーマとした団体である。だからこそ、アントニオ猪木vsストロング小林、アントニオ猪木vsモハメド・アリなどのビッグプロジェクトを提供してきた新間会長の言葉は説得力に満ちている。

 しかしながら、極論すれば現代のプロレスは当時とはまったくの別物。試合は次々と消費され、名勝負が生まれにくい環境にある。ゴールデンタイムでのテレビの地上波放送もなく、視聴方法はジャンルにかかわらず多種多様、7・29後楽園が全国に届いたとは言い難い。当時はテレビのほか、試合数も多く全国展開で興行が開催されていた。

 それでもやはり、クイーンの話題性はこれまでのストロングスタイルプロレスの域を飛び越え多くの人たちに波及した。会場に足を運ぶファンがこのリングでもっとも見たいこと。それは、初代タイガーの四次元ムーブなのではなかろうか。とはいえ、佐山は現在欠場中。たとえリングに上がっていたとしても、年齢を考えれば当時の完全再現は難しいと言わざるを得ないだろう。まな弟子スーパー・タイガーはその名のごとくUWF時代の格闘スタイルの伝承であり、空中殺法まで求めるのは無理がある(両方こなした初代タイガーのすごさがあらためて浮き彫りにされる)。そこで登場したのがクイーンなのだ。

 しかも、女性版としてデビューさせたのがいかにも現代風ではないか。世界最大のプロレス団体WWEでは、いまや女子の試合がメインを飾るのも当たり前。クイーンのデビュー戦はWWE殿堂者・新間会長の鶴の一声でメインに抜てきされた。他団体に先駆け世界の潮流に日本で初めて追い付いたのが、昭和を追求していたストロングスタイルプロレスだとすれば、それはまさに痛快の一言だ。

 クイーンへの高評価は、団体そのものまで動かした。クイーンの試合数を増やし経験値を上げるため、急きょ9・5新木場1st RING大会の開催を決定したのだ。しかも再びメインイベント。いまやストロングスタイルプロレスのエースと言ってもいいだろう。

次のページへ (3/4) ディアナの佐藤綾子はクイーンの“ライバル候補”
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