朝倉未来は引退? 現役続行? 挫折で分かれる格闘家としての真価

総合格闘技イベントにおいては18年ぶりと言われた13日のRIZIN東京ドーム大会が終わった。選手・主催者・関係者、そしてファンにとってはそれぞれ悲喜こもごもの結果になったのではないだろうか。

総合格闘技における18年ぶりの東京ドーム決戦。そのメインには朝倉未来の姿があった【写真:(C)RIZIN FF】
総合格闘技における18年ぶりの東京ドーム決戦。そのメインには朝倉未来の姿があった【写真:(C)RIZIN FF】

朝倉海の見せた「攻防」という「風車の理論」

 総合格闘技イベントにおいては18年ぶりと言われた13日のRIZIN東京ドーム大会が終わった。選手・主催者・関係者、そしてファンにとってはそれぞれ悲喜こもごもの結果になったのではないだろうか。

 事実、私も懐かしさや感慨深さがよみがえってきた。もちろん、郷愁に近い感情だけではない。

 観客は主催者発表で9317人。コロナ禍での開催を思えばおんの字とも言えるが、榊原信行CEOが大会の最後にあいさつしたように、「できれば5万人入れたかった」のが本音。その点は現場と世論の様子を見ながら、しかるべきタイミングを考えて行くに違いない。

 そして、メインでは朝倉未来がクレベル・コイケの三角絞めでタップせずに締め落とされた。榊原CEOは、「PRIDE1」(1997年10月11日、東京ドーム)で実現した高田延彦VSヒクソン・グレイシー戦での高田完敗を引用しつつ、「圧倒的現実を突きつけられた瞬間」と表現した。

 そこで考えると、日本においては、プロと名の付くファイターが集結するリングにおける最大の見どころは、いかに「場面」を作り上げるかではないかと思う。

 例えばプロレス界における「最強」の1人として存在していた、高田がヒクソンに完敗を喫した場面以上の「場面」は、少なくとも私の経験では存在していない。

 そして場所を東京ドームに限定すれば、例えば、船木誠勝はヒクソンに絞め落とされてリング上で失神する「場面」を作り上げた(2000年5月26日)し、桜庭和志はホイス・グレイシーと90分闘い抜いて勝利し、グレイシー一族の「不敗神話」を打ち破る「場面」を作り上げた(同年5月1日)。

 その点で言えば、今回の朝倉がコイケに締め落とされた「場面」は、かなりの“ハイライト”として格闘史に記憶されるに違いない。

 一方、弟の朝倉海の試合(渡部修斗に1R勝利)には、プロ格闘技の試合ではなかなかお目にかかりにくい、「攻防」を現出させた。アントニオ猪木流に言えば、「相手が5の実力なら9まで引き上げてから10で倒す」といった「風車の理論」にも通ずる試合展開を見せつけたのだ。

 要は、それだけ実力差があったという証拠だが、その姿は、まさにRIZINのエースらしさを感じさせる堂々としたものだった。つまり、昨日の東京ドーム大会においては、勝敗こそ違えど、朝倉兄弟の凄みが十二分に伝わっていたと感じるのは私だけではないだろう。

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