ピン芸人→演劇人→映画監督 デビュー作で映画祭3冠の奇才・31歳新人監督の素顔

新人監督の登竜門・映画と音楽の祭典「MOOSIC LAB [JOINT] 2020-2021」で準グランプリなど3部門に輝いた映画「彼女来来」が18日から東京・新宿武蔵野館ほかで順次公開される。本作はある日、突然、恋人が入れ替わるという奇妙なストーリーだが、31歳の新人監督・山西竜矢氏もピン芸人から演劇界に進み、俳優・演出家として活躍する変わり種だ。

映画「彼女来来」で初監督を務めた山西竜矢氏【写真:ENCOUNT編集部】
映画「彼女来来」で初監督を務めた山西竜矢氏【写真:ENCOUNT編集部】

映画「彼女来来」で初メガホン、山西竜矢氏「100%幸せな時間って、続かない」

 新人監督の登竜門・映画と音楽の祭典「MOOSIC LAB [JOINT] 2020-2021」で準グランプリなど3部門に輝いた映画「彼女来来」が18日から東京・新宿武蔵野館ほかで順次公開される。本作はある日、突然、恋人が入れ替わるという奇妙なストーリーだが、31歳の新人監督・山西竜矢氏もピン芸人から演劇界に進み、俳優・演出家として活躍する変わり種だ。(取材・文=平辻哲也)

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「彼女来来」はある日、突然、恋人が同じ名前のまったくの別人に入れ替わったら……という不条理劇。映画「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」の俳優・前原滉が主演し、失踪する恋人・茉莉役を、昨年に「事故物件 恐い間取り」「みをつくし料理帖」など6本の出演映画が公開された超売れっ子の女優・奈緒、ナゾの女マリ役をカンテレドラマ「そして、ユリコは一人になった」の女優・天野はなが演じた。

 それにしても奇妙な話だ。まったく別の女が恋人と同じ名前を名乗って、居座り続けた時、主人公はどう反応するのか。拒絶する? 受け入れる? 「自分の恋人がある日、少し似たまったく別人に入れ替わったら、どうなるんやろう、となんとなく思ったんです。僕は、よく恋人に『好きだ』と口にするんですけど、相手が変わっても毎回同じことを言ってるなって。もちろん、その時は本気だけど、俯瞰(ふかん)で見たらすごい怖いことじゃないか、と。人が入れ替わった時に、人はどうなるのか。そう考えた時、状況によっては意外と受け入れちゃうんじゃないかと思ったんです」

 MOOSIC LABでは、前原が最優秀男優賞、天野が女優賞を受賞しているが、出演シーンの少ない奈緒も印象深い。奈緒については「天野さんと奈緒ちゃんが仲良くて、2人そろっているところに会ったことがあって。その時、顔は似ていないのに、なんとなく雰囲気が似ているなと思ったんです。役柄的にニュアンスが近い2人がいいなと思っていたので、お声かけしたら、台本を読んだ上で出ていただけることになって。奈緒ちゃんは聡明(そうめい)なお芝居をされます。こっちが求めていることを、あざとくなく押さえていく。すごく信頼できる女優さんです」

 山西監督はユニークな経歴の持ち主だ。小さい頃から芸人に憧れ、同志社大学在学中の2年間はピン芸人として活躍。不条理劇の本作でも、その独特の笑いのセンスは垣間見える。

「芸人さんはみんな好きで、お笑いマニアだと思います。1番好きなのは千鳥さん。デビュー間もない頃からのファンです。僕自身は演劇寄りの1人コントをやっていました。それで、徐々に演劇にも興味を持って、シフトチェンジしていきました。演劇集団『劇団子供鉅人』に参加して東京に出てきたあと、自分が代表の演劇ユニット『ピンク・リバティ』を立ち上げました。作ってきたものは、どの作品も、物語のテーマ性は似通ったところはあると思います」

次のページへ (2/3) 演劇出身、今後は映像にも力「表現手法は全く違うけど、根本的な部分は通じている」
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