「ドラゴン桜」が描く自己肯定感 東大専科の学習意欲を高める“ARCSモデル”とは

俳優の阿部寛が主演するTBS系日曜劇場「ドラゴン桜」(午後9時)の第7話が6日に放送され、東大模試をいきなり受けることになった専科の生徒7人の混乱する姿が描かれた。「この模試で合格の見込みがないと判断された者は東大専科をやめてもらう」と言い放つ桜木(阿部)。衝撃を受けた生徒たちは怒りと戸惑いをあらわにするのだった。現在の学力では何人かの生徒は最低のE判定になることは明白だ。しかし、裏を返せば模試の判定によって目標達成への主観的な確率が得られる。桜木の狙いを深読みしてみた。

「ドラゴン桜」指導法には裏付けアリ?(写真はイメージ)【写真:写真AC】
「ドラゴン桜」指導法には裏付けアリ?(写真はイメージ)【写真:写真AC】

米教育工学者ジョン・M・ケラーの動機付けに関する学習理論

 俳優の阿部寛が主演するTBS系日曜劇場「ドラゴン桜」(午後9時)の第7話が6日に放送され、東大模試をいきなり受けることになった専科の生徒7人の混乱する姿が描かれた。「この模試で合格の見込みがないと判断された者は東大専科をやめてもらう」と言い放つ桜木(阿部)。衝撃を受けた生徒たちは怒りと戸惑いをあらわにするのだった。現在の学力では何人かの生徒は最低のE判定になることは明白だ。しかし、裏を返せば模試の判定によって目標達成への主観的な確率が得られる。桜木の狙いを深読みしてみた。(取材・文=鄭孝俊)

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 授業内容が簡単すぎると生徒のモチベーションは低下する。難し過ぎても低下する。退屈な授業も同様だ。そこで桜木が導入したのが英語特別講師の由利杏奈(ゆりやんレトリィバァ)のリスニング力強化指導だ。ダンスを踊りながら英語楽曲を聴き取るという驚くべき勉強法「ぼそぼそシャドーイング」が始まった。最初は呆気にとられていた専科の生徒たちも、早瀬菜緒(南沙良)が「何これ? チョー受ける!」と目を輝かせるなど次第に引き込まれていく。

「注意」「関連性」「自信」「満足」で学習意欲が向上

 奇抜でポップな勉強法だが、ドラマを盛り上げる思いつきの演出ではないように見える。アメリカの教育工学者ジョン・M・ケラーは「ARCSモデル」という動機付け理論を提唱している。「ARCS」の「A」は「Attention」(注意)の頭文字で、「R」は「Relevance」(関連性)、「C」は「Confidence」(自信)、「S」は「Satisfaction」(満足)となる。大学の学習論や教員育成プログラムでよく紹介される学習理論だ。

「ぼそぼそシャドーイング」はまず「A」で説明できる。エフェクトやサウンドで生徒たちに刺激を与え、不思議な光景が目の前で始まったことで生徒たちは英語教師に“注意”を向け、新鮮な驚きが沸き起こる。それによって学習意欲が向上するのだ。桜木が「リスニングの第一段階はボソボソから始めるんだ」と説明すると、生徒の天野晃一郎(加藤清史郎)は「どういうことですか?」とけげんそうに聞き返す。これに桜木は「泳げない人間が完璧なクロールで最初から泳ぐことはできないだろ。まずはバタ足から、水に慣れることから始める」と種明かしすると、生徒たちは納得したようにうなずいた。

 このように桜木は思考を促す問いかけを連発することで生徒たちに認知的刺激を与え探求心を喚起させている。生徒の瀬戸輝(※2高橋海人、King & Prince)が「ボソボソしゃべって役に立つのかよ」と悪態をつくが、それは瀬戸なりの疑問の提示であり思考の結果である。同時に桜木は「ARCSモデル」の「R」も実践している。授業内容が東大合格に役立つという“関連性”を明確に示すことで授業の目的志向性を高めているのだ。

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