【プロレスこの一年♯45】震災の思いぶつけ合った杉浦と鈴木のGHC戦 「ALL TOGETHER」開催 11年のプロレス

今からちょうど10年前の2011年5月8日、NOAH有明コロシアム大会でGHCヘビー級王者・杉浦貴と挑戦者・鈴木みのるが壮絶なしばき合いを展開した。この年の3月11日、東日本大震災が東北地方を中心に甚大な被害をもたらした。影響はプロレス界にもおよび、興行開催の是非が問われるとともに、復興支援への動きも活発となる。このような状況下でプロレスに何ができるのか? プロレスの役割とは何なのか? 杉浦と鈴木はプロレスを行うことについて、お互いの価値観をぶつけ合う舌戦を試合前から展開しており、当日のリング上はまるで果たし合いのような光景にもなっていた。試合はナックルで殴り合う壮絶さから、最後は杉浦がオリンピック予選スラムで鈴木をピンフォール。王者がGHCヘビー級王座を防衛すると、両者がノーサイドで握手をかわす感動的場面が現出した。試合後の鈴木はバックステージで涙ながらにコメント。プロレスを盛り上げようとする思い、プロレスができることに対する感謝の気持ちは根底で一緒だったのだ。3・11によってプロレス界はどう対応したのか、今回は2011年のプロレスを振り返る。

壮絶な殴り合いとなった杉浦貴と鈴木みのるのGHC戦(写真は2011年5月)【写真:平工 幸雄】
壮絶な殴り合いとなった杉浦貴と鈴木みのるのGHC戦(写真は2011年5月)【写真:平工 幸雄】

震災への思いをぶつけ合った2011年5月8日のGHC戦

 今からちょうど10年前の2011年5月8日、NOAH有明コロシアム大会でGHCヘビー級王者・杉浦貴と挑戦者・鈴木みのるが壮絶なしばき合いを展開した。この年の3月11日、東日本大震災が東北地方を中心に甚大な被害をもたらした。影響はプロレス界にもおよび、興行開催の是非が問われるとともに、復興支援への動きも活発となる。このような状況下でプロレスに何ができるのか? プロレスの役割とは何なのか? 杉浦と鈴木はプロレスを行うことについて、お互いの価値観をぶつけ合う舌戦を試合前から展開しており、当日のリング上はまるで果たし合いのような光景にもなっていた。試合はナックルで殴り合う壮絶さから、最後は杉浦がオリンピック予選スラムで鈴木をピンフォール。王者がGHCヘビー級王座を防衛すると、両者がノーサイドで握手をかわす感動的場面が現出した。試合後の鈴木はバックステージで涙ながらにコメント。プロレスを盛り上げようとする思い、プロレスができることに対する感謝の気持ちは根底で一緒だったのだ。3・11によってプロレス界はどう対応したのか、今回は2011年のプロレスを振り返る。

 この年のマット界は、新日本にとって通算20回目となる1・4東京ドーム大会で幕を開けた。メインは、前年10月に全日本・小島聡の手に渡っていたIWGPヘビー級王座を棚橋弘至が奪回、通算5度目の戴冠を成し遂げた。この大会では、アメリカ遠征を終えた岡田かずちかが凱旋(がいせん)帰国。タッグマッチで杉浦&高山善廣組と対戦し、高山のエベレストジャーマンでピンフォールを奪われた。新日本1・23後楽園では、田口隆祐&プリンス・デヴィットのApollo55がDDTの飯伏幸太&ケニー・オメガ組を破り、IWGPジュニアタッグ王座を奪還している。

 旗揚げ10周年となるZERO1の3・6両国国技館で故・橋本真也の息子、橋本大地が蝶野正洋を相手に待望のデビューを飾った。その5日後、ZERO1の記者会見中でもあった午後2時46分、東日本大震災が発生。石巻の会場に向かっていた全日本の選手バスが巻き込まれるとともに、電車で移動していた近藤修司が避難所生活を強いられることになった。首都圏でも大きな揺れが観測されたこの事態から、各団体は興行の延期や中止など対応に追われることとなる。

 たとえばドラゴンゲートは3月20日に予定していた両国のビッグマッチを中止。全日本は翌21日の同所での大会を節電のため照明を落とすなど、「チャリティー大会」として開催に踏み切った。試合では三冠ヘビー級王者・諏訪魔がKENSOを破り王座防衛。大日本の関本大介&岡林裕二組が真田聖也&征矢学組を破りアジアタッグ王座を奪取。新王者組は夜の大日本後楽園大会にベルトを持参、元王者でもあるグレート小鹿に王座奪取を報告した。また、ZERO1の大地が武藤敬司を相手にデビュー第2戦を行った。なお、大地はZERO1の3・27靖国神社奉納プロレスにて初のタッグマッチに出場、大谷晋二郎と組んでベイダー&ジェシー・ホワイトの親子タッグと対戦した。

 全日本が両国大会を開催したこの日、プロレスの聖地と呼ばれる後楽園ホールでの興行が女子プロレス、アイスリボンで再開した。また、震災の影響から延期されていたディアナの旗揚げ戦が1か月遅れで開催(4・17ディファ有明)。15歳のSareeeが里村明衣子を相手にデビュー戦を行った。

 全日本4・13後楽園では新日本の永田裕志が真田を破り、「チャンピオン・カーニバル」優勝。新日本の選手が同大会を制するのは史上初の出来事だった。永田は3月に行われた新日本「ニュージャパンカップ」でも優勝。両団体のシングルの祭典でトップに立つ快挙だった。

 4月13日、復興支援のためプロレス界が動いた。新日本&全日本&NOAHが合同会見を行い、震災復興チャリティープロレス「ALL TOGETHER」開催を発表したのである。5月8日には東北を拠点とするみちのくプロレスが、岩手・矢巾町民総合体育館にて震災後初めてとなるみちプロ聖地での興行を開催。メインではザ・グレート・サスケを破った日向寺塁が東北ジュニアヘビー級王座を戴冠した。その3日前の5月5日には後楽園でブシロードレスリングが開催され、格闘家の長島☆自演乙☆雄一郎がプロレスデビュー、佐藤耕平からギブアップ勝ちを奪ってみせた。

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