日本の幸福度56位のなぜ フィンランド大使館職員のライターが語る本当の理由

フィンランドの首都ヘルシンキ【写真提供:ヘルシンキ市】
フィンランドの首都ヘルシンキ【写真提供:ヘルシンキ市】

フィンランド政府のコロナ対策は? 国民の反応は?

 国が男女逆のクオータ制を採用するとは興味深いが、きちんと公表して行うことで国への信頼度が高まるだろう。国への信頼度は、国のとる新型コロナウイルス感染症対策に対する国民の態度・姿勢にも表れている。日本は批判が強いように見える。

「フィンランドのコロナ感染者や死者数はEUの中では少なく“優秀”といわれています。マスクの着用や行動制限などの政策は地域によって違うのですが、大きな混乱はありません。国民は国を信頼し協力していて、ワクチン接種も進んでいます。フィンランドの政治は汚職が少なく、透明度が高いといわれているので、もともと政治に対する信頼度が高いんです。国民のお互いへの信頼度も高いですね。根本に、国民みんなで良い国にしたい、そのためには協力して助け合うことが大事だ、という共通認識が強いと思います。マスク警察の存在も、聞いたことがありません。他者への寛容さの高さも関係しているのでしょうね」

 コロナ対策を巡って争いが起こっているのは日本だけではないものの、日本人が他者にあまり寛容でないのは、島国であるという地理的なことが関係しているのかもしれない。

「他国に支配されたことがほとんどない、という歴史的なことも関係していると思います。フィンランドは大国ロシアとスウェーデンに挟まれ、支配されてきた歴史があり、他者を受け入れざるを得ませんでしたし、今はEUの一員です。フィンランドは人口約550万人の小さな国。ビジネスを考えても、国の中だけを見て他者を受け入れなかったら成り立たない、という現実的な事情もあります」

フィンランドでは子を持つことは女性だけの問題ではないという認識

 世界経済フォーラムは3月に男女格差を指数化した「グローバル・ジェンダーギャップ・リポート」(21年度)を発表。日本は156か国中120位と、これまた残念な結果だった。さまざまな面で女性は厳しい状況に置かれている。とくに妊娠・出産、子育てを理由に不利な扱いを受けているが、2位のフィンランドではそれについてはどう考えられているのか。

「子どもができれば男女ともに育休をとるのが普通なので、子どもを持つことは女性だけの問題ではありません。また、産休・育休で一時的に勉強や仕事を休んだとしても、その人の価値が下がるわけではない、逆にバランスの取れている人としてプラスに考えられています。そのため、妊娠・出産や子育てをする女性や、育休をとった男性が不利で出世に響く、とはならないわけです。妊娠・出産、子育ては適齢期の男女にとって特別なことではなく、当たり前のことですから」

 子育てのための社会保障制度も整っているフィンランドだが、実はフィンランドの出生率は日本より低く、ここ数年、危機感が増してきているという。

「コロナ禍の2020年の出生率は若干上がったのですが、出生率が下がってきた理由はフィンランドでもまだよく分かっていません。税金で成り立っている国なので、少子化は大きな問題です。考えられることとしては、雇用が不安定なので先行きが不安定、ということ。そして、価値観の変化。ワークライフバランスが良く、個人の人生が充実し選択肢が増えているため、かえって子どもを持つことが人生の重要な選択肢じゃない、と考える人が増えているのでしょう」

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