休業決断のタクシー運転手 給付金申請月11万円 「頑張っている人ほど損をする」

新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために発出された緊急事態宣言が全面解除されて初めての週末を迎えた。全国各地の繁華街の人出は増大しており、1都3県より3週間早く宣言が解除された大阪ではコロナ感染の第4波入りが現実味を増している。飲食店には営業時間を午後9時まで、酒類の提供を午後8時半までとする営業時間短縮要請が続いているが、感染拡大に歯止めがかからない。大阪市内の歓楽街を熟知しているタクシー運転手は「客足の戻りは思ったより鈍い」と判断し、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の申請を行った。「頑張っている人ほど損をする」。これが決断の理由だ。

タクシー運転手が見た北新地の本通界隈。人出はまばらだ【写真:タクシー運転手提供】
タクシー運転手が見た北新地の本通界隈。人出はまばらだ【写真:タクシー運転手提供】

コロナ感染者数のリバウンド傾向を受け、飲食店への時短要請は続行

 新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために発出された緊急事態宣言が全面解除されて初めての週末を迎えた。全国各地の繁華街の人出は増大しており、1都3県より3週間早く宣言が解除された大阪ではコロナ感染の第4波入りが現実味を増している。飲食店には営業時間を午後9時まで、酒類の提供を午後8時半までとする営業時間短縮要請が続いているが、感染拡大に歯止めがかからない。大阪市内の歓楽街を熟知しているタクシー運転手は「客足の戻りは思ったより鈍い」と判断し、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の申請を行った。「頑張っている人ほど損をする」。これが決断の理由だ。

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「緊急事態宣言中は1日の売り上げが2万円に届かないという“2万円の壁”がありましたが、解除後は4万円前後にまで戻ってきました」。こう明かすのは大阪市内の繁華街を拠点とする50代のタクシー運転手だ。売り上げ2万円のころの客数は10組前後だったが、最近は20組以上に増えているという。緊急事態宣言解除により繁華街の人出が増加していることが背景にあるようだ。

 しかし、この運転手の表情は暗い。「確かに日中の人出は増えていますが、飲食店への営業時短要請が続いているため午後9時から10時以降になるとガクンと落ちる。大阪でいちばんお客さんの手が上がると言われている阪急百貨店前もコロナ前は信号1回待ちの間に5~6組のお客さんの手が上がっていましたが、最近は信号4回、5回待ちでもだれも乗ってこない。飲食店の廃業が続いているためテナント募集の看板がどんどん増えています。客足の戻りは思ったより鈍く、元に戻るには相当な時間がかかると見ています」

売り上げアップはタクシーの台数減少が理由

 では、最近の売り上げ増加の理由は何か。「簡単に言えば需要と供給のバランスです。客足の激減により休業を余儀なくされたタクシー運転手がすごく多い。つまり大阪市内を走っているタクシーの台数が減少しているのです。夜勤の私はこれまでの経験と勘を頼りにまずは梅田から天神橋筋など人出があるところを流し、午後9時ごろからは北新地のタクシー乗り場、午前3時ごろからはミナミでコツコツとお客さんを拾ってきました。5000円以上のロングがどこから出たかなど運転手仲間との情報共有や励ましあいもあって今まで頑張ってこれましたが、タクシーの台数が戻ってくると今度は供給過剰による競争激化で苦戦するのは明らかです」

 勤務シフトはおおむね午後8時から翌朝7時まで。これを月23、24日続けてきた。車内の毎回のアルコール消毒や窓開けなどコロナ対策にも手を尽くした。ただ、運転席と後部座席の間にビニールカーテンを吊るすことはしなかった。「バックミラーに映る車両後方の様子が見えにくくなり交通事故の原因になるからです」。乗客の安全第一を考えての行動だが、感染リバウンド傾向のなか、マスクを着用していない客を後部座席に乗せざるを得ないこともたびたびあり、感染の恐怖と背中合わせで闘ってきた。

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