【プロレスこの一年 ♯39】猪木と前田、明暗分けた異種格闘技戦 元横綱・輪島のプロレスデビュー 86年のプロレス

本稿掲載は3月27日。今から35年前のこの時期、新日本プロレスとUWFが激しい戦いの火花を散らしていた。UWFは関節技と打撃を主体にロープに走らないプロレスを展開、源流は新日本ながらも、より本格的な格闘スタイルが猪木の新日本プロレスには脅威に映っていた。しかし、自主興行が不可能となったUWFは業務提携の形で前年末に古巣へ出戻り、同じリングの上での対抗戦が勃発したのだった。そして3月26日、東京体育館で5対5のイリミネーションマッチに発展。1986年、昭和61年の出来事である。

ニールセンの異種格闘技戦で「新・格闘王」の称号を得た前田日明(86年10月)【写真:平工 幸雄】
ニールセンの異種格闘技戦で「新・格闘王」の称号を得た前田日明(86年10月)【写真:平工 幸雄】

新日本とUWFの5対5イリミネーションマッチが行われた86年3月26日

 本稿掲載は3月27日。今から35年前のこの時期、新日本プロレスとUWFが激しい戦いの火花を散らしていた。UWFは関節技と打撃を主体にロープに走らないプロレスを展開、源流は新日本ながらも、より本格的な格闘スタイルが猪木の新日本プロレスには脅威に映っていた。しかし、自主興行が不可能となったUWFは業務提携の形で前年末に古巣へ出戻り、同じリングの上での対抗戦が勃発したのだった。そして3月26日、東京体育館で5対5のイリミネーションマッチに発展。1986年、昭和61年の出来事である。

 この試合には新日本が、昭和を代表するヒールレスラー上田馬之助を助っ人として加える意表を突く構成で、アントニオ猪木&藤波辰巳&木村健吾&上田馬之助&星野勘太郎組で出陣。このときの上田が、のちに三沢光晴が使用する「スパルタンX」のテーマ曲で入場したことはあまりにも有名なエピソードだ。対するUWFは前田日明&藤原喜明&木戸修&高田伸彦&山崎一夫組のフルメンバー。試合は山崎、星野、木村が脱落し、藤波と木村が両者リングアウトでともに失格。つづいて上田が前田と場外心中。新日本側にはファインプレーで、同時に猪木との対戦を期待する(特にUWF)ファンをガッカリさせた。最後は猪木が高田、木戸を連破し、新日本サイドの勝利となった。

 この年、プロレス界では新日本がUWFなら、全日本はジャパンプロレスと、ともに元・新日本からの離脱組が2大マットを席巻、二大潮流となっていた。今回は、81年のプロレス界を振り返る。

 新日本が出戻りのUWFに課したのは、猪木への挑戦者を決める代表者決定リーグ戦だった。UWF内だけで争われる公式戦は1・3後楽園ホールでスタートし、2・5大阪城ホールで決勝戦。前田に勝った藤原が、UWF代表として翌6日、両国国技館メインのリングに上がったのである。しかし、両国での試合は藤原が猪木のスリーパーホールドに沈み決着、猪木に凱歌が上がった。ところが、試合直後に前田が乱入し、猪木にハイキックを見舞い大混乱。ここから新日本とUWFの対抗戦が本格開戦となったのである。また、同大会では越中詩郎がザ・コブラを破り、初代IWGPジュニアヘビー級王者に輝いている。

 3・26東京体育館でのイリミネーションマッチを経た5月1日の両国では、5対5シングル勝ち抜き戦が実現。UWFが高田(先鋒)、山崎(次鋒)、木戸(中堅)、藤原(副将)、前田(大将)で臨めば、猪木抜きの新日本はヤングライオン杯準優勝の山田恵一を抜てき。山田(先鋒)、坂口征二(次鋒)、越中(中堅)、木村(副将)、藤波(大将)の布陣となった。最後は藤波と前田の一騎打ちとなり、2試合目の藤波に前田がレフェリーストップ勝ち。UWFが雪辱を果たしてみせた。なお、前田はこれに先立つ4月29日の津大会でアンドレ・ザ・ジャイアントと不穏試合を展開、物議を醸した。

 写真週刊誌に浮気報道が掲載された猪木は、5月21日に丸刈り姿で登場。新日本はIWGPシリーズへと突入し、6・12大阪城ホールで藤波と前田がこの年のベストバウトとなる激闘を展開した。前田のニールキックで目の上がザックリ割れ大流血の藤波だったが、結果は両者KOの引き分けに。猪木は6・17名古屋でアンドレから腕固めでギブアップ勝ちを収め、決勝進出。最終戦は6月19日の両国で、相手は決勝戦初登場のディック・マードックだった。最後は猪木がマードックを仕留め、3連覇を達成したのである。

 一度は新日本マットから消えていたブルーザー・ブロディがカムバックし、9・16大阪城ホールで猪木と通算7度目の一騎打ち。試合は60分戦い抜いての時間切れ引き分けだった。猪木は10・9両国で元プロボクシング世界ヘビー級王者レオン・スピンクスとの異種格闘技戦に臨み勝利を飾るも、この大会で主役の座をかっさらったのはむしろ前田の方だった。前田はドン・ナカヤ・ニールセンとの異種格闘技戦に逆片エビ固めで快勝。猪木が不完全燃焼のフォール勝ちだったのとは対照的に、前田はこの1戦で大いに株を上げた。くっきりと明暗が分かれ、前田が「新・格闘王」の称号を得たのである。猪木は「落日の闘魂」とやゆされるまでに…。

 10月13日には武藤敬司が藤波を相手に凱旋試合。11・24札幌ではブロディが来日を中止するアクシデントが発生した。このドタキャンには坂口が出陣、前田とのシングルマッチに急きょ出場することとなったのである。

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