震災10年「漂流ポスト」管理人が訴え 「漂流ポストは心の復興。区切りをつけるつもりはない」
公開中の映画「漂流ポスト」の記者会見が26日、都内で行われ、実在する漂流ポストの管理人・赤川勇治さんと監督・脚本・編集・プロデュースを務めた清水健斗監督が登壇した。
「漂流ポスト」設立までの経緯明かす
公開中の映画「漂流ポスト」の記者会見が26日、都内で行われ、実在する漂流ポストの管理人・赤川勇治さんと監督・脚本・編集・プロデュースを務めた清水健斗監督が登壇した。
“漂流ポスト”とは、「手紙を書くことで心に閉じ込められた悲しみが少しでもやわらぎ、新たな一歩を踏み出す助けになるなら」との思いから、被災地である岩手・陸前高田市の山奥に建てられた郵便ポストのこと。
当初は東日本大震災で亡くなった人への思いを受け止めるためのポストだったが、今では病気や事故など、震災に限らず亡くなってしまった最愛の人に向けた思いを手紙につづり、届ける場所になっている。震災から10年経った現在も多くの手紙が届き、その数は500通を超える。手紙は同じ境遇の人々にシェアされ、心の復興を助けている。
2011年3月12日に仕事で岩手を訪れる予定だった清水監督は、自分が1週間前に訪れた場所が津波に流されてしまう様子をニュースで見て、他人事とは思えず、長期ボランティアに参加。そこでじかに見聞きした被災者の思いを風化させないために、ニュースで知った“漂流ポスト”を舞台に、心の復興の映画を製作した。
漂流ポストの管理人・赤川さんの協力により、実際に漂流ポストのあるガーデンカフェ森の小舎での撮影を敢行。東日本大震災で親友の恭子を亡くした主人公・園美役の雪中梨世が実際に漂流ポストに届いた手紙を初めて読んでいるところを撮影したドキュメンタリー映像を本編で使うなど、リアリティーを大切にして製作された。
会見では、冒頭、赤川さんが、漂流ポストがいつ、どのような経緯でできたのかを詳細に伝えた。
東日本大震災後、森の小舎を再開すると、来訪者から「少しお話聞いてくれるかな?」と相談を受ける機会が増えた。
「ただ聞いてさしあげるだけで、その方たちは『来てよかった。聞いてくれてありがとう』とすっきしりた顔で帰られるんです。そうやっていくうちに、ここに来られる方は聞いてさしあげられるけれど、被災三県の遠い方たちは胸の吐き出しをどう解決つけているのか疑問に思い、3年間考えました。震災から3年が過ぎた4年目の3月11日に、ここまで来なくても文字に、手紙に1行でもいいから吐き出せるものが書けたら、その方たちが少し楽になるのではないかと思い、漂流ポストとして苦しさの手紙を受け付けることを始めました」とポスト設立の理由を語った。