【Producers TODAY】「めざましテレビ」長寿の秘密とは 軽部アナが27年担当の“元祖”エンタメコーナーの発明

「きょうのわんこ」などの各コーナーは27年間変わらないフォーマット【写真:(C)フジテレビ】
「きょうのわんこ」などの各コーナーは27年間変わらないフォーマット【写真:(C)フジテレビ】

「めざましテレビ」の役割は1日の始まりに心のスイッチを入れてもらうこと

――エンタメ情報は学校や職場で共通の話題にしやすい?

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「そうですね。昨年は関西ジャニーズJr.のグループ、『なにわ男子のなんでやねん!』という冠コーナーがスタートしました。ティーンの視聴者には、例えば『なにわ男子の道枝駿佑くん、カッコよくて学校で話題なんだよ』とお母さんに伝えてほしい。逆にお父さんお母さんは『コロナ禍で今こういう問題が起きているんだよ』ということを子どもたちに伝えてほしい。こんな会話が家族同士で生まれる番組になればいいなと思います。学校でも同世代同士で情報をシェアしたり話したくなるような出演者やニュースをそろえています。コロナ禍で伝えるべきニュースはたくさんありますが、すべてまじめなニュースだと息が詰まってしまうのではないでしょうか。朝起きた瞬間から切実な危機を伝え続けることだけが情報番組ではないと考えていて、あえて前向きでポジティブな情報を探して放送を続けています」

――それも番組の特徴?

「『報道ステーション』には『報道ステーション』の役割があって、『とくダネ!』には『とくダネ!』の役割がある。『めざましテレビ』の役割は、親子や家族で朝の支度をしながら見ていただいて、1日の始まりに心のスイッチを入れてもらうことです。困難が続いているからこそ、頑張ってキラキラ輝いている人や、応援したくなるアスリート、みんなに元気をくれるアーティストがいて、昨年でいうとYOASOBIさんや瑛人さんの曲がヒットしましたが、こういう状況の中でも今、こういうアーティストが大切なメッセージを発信していて、はやっているんだよ、と伝えたい。皆さんの力を借りながらポジティブな空気を作り出すということかなと思います」

――制作側にとって朝の情報番組の難しさとは何でしょう?

「視聴者の皆さんそれぞれの視聴習慣がある中で、生活にいかに溶け込めるかどうかですね。『めざましテレビ』の場合は脈々と受け継いで大切にしてきたものがあるので、それをどう継承して発展させていけるかという思いで作っています。視聴者の皆さんの生活の中に必要な存在として根付く番組作りはなかなか難しくて、自分が総合演出を手掛けた2013年放送の昼の情報番組『アゲるテレビ』を半年で終わらせてしまったこともありますし」

「必要とされる番組」と「必要とされない番組」の違いとは?

――苦い経験があったわけですね。

「はい。そうした経験の中で“視聴者の皆さんに必要とされる番組とはどういう番組かな”と、常に空気をビシビシ感じながら番組作りをしています。世の中の空気、視聴者の皆さんの空気とズレていってしまうと、番組は急速に飽きられてしまう。しかし、時代にただアジャストすればいいだけではないので、その中で大切なことはこういうことだよね、とメッセージングしていく。その両輪によって必要とされる番組か、必要とされない番組かが変わっていく気がします」

――番組を作っていく上でのこだわりは?

「まずは、視聴者の生活に必要な新しい情報をどれだけ発信できるか。そして視点の提示ができているか、というところですね。『めざましテレビ』は“新情報のシャワー”というコンセプトをスタッフで共有していますが、実際に3時間5分が“新情報のシャワー”になっているのか? 古い情報ばかりになっていないか? という点はこだわっています。誰でもスマホで簡単にニュースが見られる時代、昨夜やっていたニュースの焼き直しばかりでは見向きもしてもらえない。朝の時間帯でも、各局いろいろな番組がありますが、まずは情報量という点で『めざましテレビ』は負けたくない。そしてちゃんとニュースを解釈して、この視点から見ることが大切ですよ、と伝えたい。プラスαで番組を見てポジティブな感情になってもらい、“1日を頑張ろう”と思っていただくことが大事だと考え、日々番組を作っています」

――どのような視聴者層を想定していますか?

「朝の時間帯、とくに朝8時までは家族みんなが同じものを情報のツールとして見ている数少ない時間帯なので、家族で情報をシェアしてほしいと思っています。個々でテレビを見る習慣が広がるなか、家族みんながリアルタイムで同じ番組を見る、という意味では、朝の情報番組は最後の砦だと思っています」

□高橋龍平 1978年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学では體育會蹴球部(ラグビー部)に所属。卒業後、2001年にフジテレビジョン入社。情報制作局で、『とくダネ!』『スタメン』のほか、『椎名誠のでっかい旅!』『ザ・ノンフィクション』『NONFIX』『FNSドキュメンタリー大賞』などを担当し、『ノンストップ!』『アゲるテレビ』総合演出を経て、『めざましテレビ』でプログラムディレクター、総合演出、19年7月からチーフプロデューサー。

(取材/構成・鄭孝俊)
全国紙社会部、スポーツ紙文化部デスクを経て「ENCOUNT」記者。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程在籍中。異文化コミュニケーション論、メディア論を専攻。成蹊大学文学部ゲスト講師、ARC東京日本語学校大学院進学クラスゲスト講師などを歴任。

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