専門医が語る“コロナうつ”の3つの黄信号 「2回目の緊急事態宣言下は女性が危ない」
「コロナ禍だからこそ、普段の生活をより心地よいものにするよう心がけてほしい」
職場と家庭以外の第3の場をもつこともおすすめです。テレワークで家庭と職場の境目が無くなり、仕事で成果が出ない、家庭の雰囲気が良くない、となった場合には息抜きの場が無く窮屈です。家庭でも職場でもない、第3の場をもっているとゆとりが出ると思います。近くのカフェやお店を行きつけにしてみたり、副業やボランティア、ZOOMでのオンラインヨガやオンラインサロンでの朝活など、必ずしも遠くへ外出をしたり、多くの時間をとる必要はありませんが、第3の場を意識的に作ってみてください。
心療内科や精神科の受診は敷居が高いですし、また、受診さえすれば心身の不調が改善される、というものでもありません。“コロナうつ”は何より自分自身が不調のイエローサインに気づいて生活を整えることが大切です。
イエローサインは次の3つです。
(1)起床後、4時間後に頭がぼーっとする。
(2)意思決定が遅くなってきた。
(3)大丈夫だと思ったり、不安やイライラしたりと気分の波が多くなってきた。
テレワークだと、勤勉な日本人は際限なく仕事をしてしまいがち。深い睡眠をとるには、寝る前のリラックスも重要です。寝る前に5分でも10分でもいいので、自分のための時間を作ってください。自分の心身が「いいな」と感じることをしてみましょう。アロマオイルを炊いてみるとか、マッサージをするでもいいですし、音楽を聴いてもいいでしょう。寝る前のルーティンとして、自分自身をケアしてあげる時間をもつと、より良い睡眠がとれるようになるでしょう。
コロナ禍で自殺が多くなっているとニュースで流れますが、元気だった人が突然、自ら命を絶つわけではありません。解雇や人間関係の変化、経営がうまくいかない、今後の見通しがたたないなどの理由もありますが、心身のバランスが崩れていると必要以上に追い詰められ、極端な選択をしてしまうのです。コロナ禍で外出がしにくくなったこともあり、家での生活の時間がより多く占めるようになったと思います。だからこそ、この機会に改めて普段の生活を見直し、より自分の心身に心地よいものにするよう心がけてみることをおすすめします。
「身体が資本」といいますが、今後の見通しがたたない今だからこそ、自分の心身を整え、いざというときに対応できるようにすることが大事です。見えない将来を思って不安を募らせるよりも、日々の生活を楽しみ、今できることは何かを考え、生活と体調を整えることをまず意識してみてください。
□田中奏多 (たなか・かなた)熊本県生まれ。福島県立医科大学医学部卒。ハーバード大学TMSコースを修了し、集中力や思考力をつかさどる新しいうつ病の治療である、TMS治療を専門的に行う「東京TMSクリニック」を東京・恵比寿に開院。2014年、働く人のための薬に頼らない心療内科として東京・神田に「BESLI CLINIC」を協同創設した。産業医として働く女性のメンタルヘルスに力を入れている。