山下久美子独白、歌手として母として双子の娘たちと愛を育んだ20年

今は1曲1曲に深く向き合って歌っていきたい【写真:荒川祐史】
今は1曲1曲に深く向き合って歌っていきたい【写真:荒川祐史】

私の歌は教師のような存在、育ててもらっている

――昨年リリースされたベスト盤「愛☆溢れて!」は、そういった久美子さんのターニングポイントとなった時代の凛とした生き方が、ギュっと歌に詰まっている印象です。

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「さすがに長く生きているなって実感しますね (笑)。こういった歌との出会いからたくさんのことを教えてもらって、1曲1曲の思いが昔よりも断然強くなっていると思いますし、考えて理解しようとしなくても、すーっと自然に体の中に入ってきます。今回のベスト盤は今私が歌いたいと思う曲を集めました」

――久美子さんにとってご自身の歌も子どものような存在ですか?

「私の歌は子どもじゃなくて先生ですね。教師のような存在。私が育てるのではなく、育ててもらっています。瞬間的に理解できるものから、時間をかけて理解を深めるような歌まで、すべての曲が私に教えてくれるんです」

――ベスト盤に収録された新曲「Morning Star」は、大切な人を思う気持ちを教えてくれるようなそんな大きな愛を感じました。作曲は、デビュー曲「バスルームから愛をこめて」の亀井登志夫さん、作詞は奥様の知永子さんです。

「この曲は、2018年の還暦のお誕生日に亀井さんからプレゼントされた大切な曲です。ずっと長く連れ添った人との別れを想像させる大きくて深い愛を感じる歌詞だったので、すぐに知永子さんが書いた詞だと伝わってきました。実は知永子さんは、2年前にお亡くなりになり、まるでご自身の未来を予感していたようなそんな曲なんです」

――この曲はリリース前に還暦ライブで披露しましたが、久美子さんのライブも一貫して変わらないパワフルでエネルギッシュなステージですよね。

「デビュー当時のプロデューサーだった木崎賢治さんが、私のライブを見て『動物園のオリの中にいる動物みたいだ』とおっしゃっていたことを今でも覚えていて、『オリの中にいるにいる動物が、予期できない行動を起こすその面白さに興味を持って人は見にくるんだ』って。そういう意味で、私はその場の空気を本能的に瞬発力で変えていきながらステージに上がっていたんですが、今はその瞬発力よりも、もっと深く1曲1曲に向き合って歌いたいという思いが強くなってきました。だから動物園の檻の中の動物としては、“動”から“静”に移ってきましたね」

――むしろライオンやトラみたいに普段あまり動かなくても、ちょっとした動きに迫力や存在感を感じるような?

「それは格好良いけれど私は違うかな。もうちょっとちょこまか動いている感じ。カピバラみたいな(笑)。でも、今も平気で1時間半から2時間位のライブは出来ますし、エネルギーが満ちてくると、それをステージで爆発させたいんです。だから必ずライブのどこかで爆発しているので今度発見してほしいですね。それがあるからライブは止められないんです」

――無観客配信のライブには慣れましたか?

「今でも『配信て何?』ってよく分かってない(笑)。テレビの収録みたいな感覚で逆に知らないだけストレートにやれている感じです。ライブが無くなってしまうより、カメラの前にお客さんがいて、そこでお互いに元気だって確認できる手段があるっていいことですし、それで楽しいライブだったら最高じゃん!って(笑)」

――最近は次の世代を担うミュージシャンたちと一緒にライブをしていて、音にも顔ぶれにもフレッシュさがありますよね。

「今までイカつい人たちばかりに囲まれたロックの世界でずっとやってきましたから(笑)。でも私の中では“ついてきて!”っていう時代はもう終わったかな。今は、それぞれのミュージシャンたちの素敵な演奏の中で、どう私が歌っていくか。そこにお互い刺激があればいいなって思っています」

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