NHK連続テレビ小説「おちょやん」(月～土曜、午前8時)はヒロイン・千代を演じる杉咲花(23)の好演が光るが、千代の奉公先「岡安」の女将・シズと、若かりし頃に恋仲だった歌舞伎役者・早川延四郎の物語が切なく視聴者の心を揺さぶった。その延四郎を演じたのが上方歌舞伎の役者・片岡松十郎さん(45)だ。「あの人は誰？」「俳優・伊勢谷友介に似てる」の声がネットで上がったが、松十郎さんの素顔はほとんど知られていない。関西在住の松十郎さんを直撃した。

　ネットで僕のことが取り上げられてるよ、と友人に聞きましたけど、よく分かりません。僕はネットを見ないし、SNSはまったくやらないので。携帯は今もガラケーを使っているし、自宅にはパソコンもないんです。「おちょやん」に出たからといって、道で声をかけられることもないですしね。伊勢谷友介さんに似てると言われてる、とも聞きましたけど、恐れ多いことです。元体操選手の池谷幸雄さんに似ている、と言われたことはありますが……。

「おちょやん」出演の話がきていると聞かされたのは、2019年12月です。しかも、20年の春頃になって、相手役が篠原涼子さん(47)だと聞いてビックリ。僕でいいのか!?と思いましたけど、ありがたいことだと思いました。実は、NHK連続テレビ小説をほとんど観たことがなくて、出演することになってから、「スカーレット」「エール」と観てきました。いや、朝ドラって面白いですね！　役者の方もみんなすごいうまくて。それに比べて僕の芝居は……「おちょやん」に出て日本中に恥をさらしていると思っていたら、NHKの放送だったんで世界中だったんですね。

　篠原さんは瞬発力がすごい。状況説明されたらすぐに理解されて、パッと役に入られる。ちゃんと“昔好きだった延四郎への思い”が表現された顔になられているんですよ。僕はそれに乗っかって芝居をさせてもらっただけです。杉咲さんも東京出身なのに、関西人が聞いてもまったく違和感のない関西弁で、ほんまに自然な芝居をされ恐ろしい方だと思いました。

　僕は歌舞伎のシーンでさえ、普段やらないお役を演じさせてもらったのですごい緊張しましたし、「声が大きすぎる」など指摘していただいて、汗だくになりました。でも、歌舞伎をテレビで演じられるのはうれしかったです。病気を抱えている役だったから太ってたらいけないと思い、緊急事態宣言が出た頃から、好きなお酒は1日350ミリリットルの缶ビール1本にして、ほぼ毎日、人のいない夜中に毎日4.5キロ走り、体幹トレーニングして10キロ弱落として撮影に臨みました。