寺田心に「泣くな」と言ったワケ
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――寺田心のキャスティングの決め手は?
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「僕がキャスティングする上で、一番大事にしているのは、悩んでいる役者であるか、どうか。悩んでいる役者には可能性と輝きがあると思っています。心君にそういうものを感じ、今までにない違う側面を出してあげたいと思いました。オーディションでは、泣くシーンを見せてくれたのですが、『泣かないでくれ、涙はいらないから』と話しました。その言葉で、本人は『落ちた』と思ったらしいんですけど……」
――心君にはどういう演出をしましたか?
「『新しい心君を出そうよ』と言いました。本人も『変わりたい。俳優を一生やっていきたいんで』と言っていました。ある意味、なにか一つ抜けてくれたのかなという気がします」
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――「泣くな」と何度も言ったようですが、その意図は?
「お涙ちょうだいの映画だけは撮りたくないと思っています。泣くという演技は何回もやっていくと、それはテクニカルなもので、なにかに対して、悲しいという涙ではないんです。そんな涙はいらないんです」
――監督自身も俳優としてのキャリアがあります。その経験は演出にも活かされていますか?
「映画祭の規模は小さいですが、イギリス、イタリア、フランスなど国際映画祭で最優秀主演男優賞を頂いたことがあります。なので、主役がどんなに孤独でどれだけプレッシャーの中で闘っているかっていうことは分かります。主役は何十人というスタッフに見つめられながら、1テイクで撮影を済まさなければいけない使命があるんです。こんな過酷な仕事はありません。こういう主役の気持ち、辛さ、恐怖が分かる監督はそんなにいないと思います。そういう意味では、キャストの方に共鳴していただいた部分もあるのかなと思います」
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