きゃりーぱみゅぱみゅ、出産で外れた“リミッター” 活動の閉塞感を壊した「どうでもいい精神」

歌手のきゃりーぱみゅぱみゅが8月にメジャーデビュー15周年を迎えた。来年1月には6枚目の新アルバム、3月からは5年ぶりの国内ツアーを控えるなど、精力的に活動を続けている。10周年からの5年間は、結婚、出産を経験し、私生活だけでなく、アーティストとしての考え方にも大きな変化が生まれた期間となった。一時は活動が止まることへの不安を抱え、世界最大級の音楽フェス『コーチェラ』への出演後には、燃え尽きたような感覚を覚えたという。母親になったことで生まれた新たな価値観、育児と仕事の両立、そして今後の音楽活動について。きゃりーが抱く現在の思いを聞いた。

インタビューに応じたきゃりーぱみゅぱみゅ【写真:高田啓矢】
インタビューに応じたきゃりーぱみゅぱみゅ【写真:高田啓矢】

結婚・出産で大きな変化、「コーチェラ」出演後の葛藤も告白

 歌手のきゃりーぱみゅぱみゅが8月にメジャーデビュー15周年を迎えた。来年1月には6枚目の新アルバム、3月からは5年ぶりの国内ツアーを控えるなど、精力的に活動を続けている。10周年からの5年間は、結婚、出産を経験し、私生活だけでなく、アーティストとしての考え方にも大きな変化が生まれた期間となった。一時は活動が止まることへの不安を抱え、世界最大級の音楽フェス『コーチェラ』への出演後には、燃え尽きたような感覚を覚えたという。母親になったことで生まれた新たな価値観、育児と仕事の両立、そして今後の音楽活動について。きゃりーが抱く現在の思いを聞いた。(取材・文=中村彰洋)

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――この5年間で、結婚や出産ときゃりーさんの環境にも大きな変化がありました。現在は母親としての姿も積極的に発信されていますね。

「実は、子どもが生まれるまでは『子どものことは一切公言しない』と考えていて、『出産がなかったかのように過ごしたい』と事務所の方にも伝えていたんです。それがこうなってしまったんだからびっくりですよね(笑)。子どもが生まれたら、子どもがそばにいることが当たり前で、会話の内容も子どもの話ばかりになる。だから、表現の中に子どもが出てくることは自然なんだと思うようになりました」

――妊娠期間は活動ができない期間もありましたが、不安はありましたか。

「ありました。私はアイドルではないですが、結婚や妊娠をして活動が止まる恐怖みたいなものはずっとありました。一人の人生じゃないし、みんなを背負っている感覚もあるので、出産してからも、ステージに立つまでは『みんなどんな感じなんだろう』と不安な気持ちはありました」

――実際に復活されてみていかがでしたか。

「みんな、『おかえり』と温かく迎え入れてくれて本当にうれしかったです。再開後も満足のいく活動ができています。あーみーさん(アソビシステムの中川悠介社長)は、私が18歳の時から『きゃりーが結婚して子どもを産んでも、アーティストとして活動できるような空間を作りたい』と、ずっと言ってくれていたんです。当時の私からしたら『何年後やねん!』みたいな(笑)。でも、いざ妊娠した期間も、『今日きゃりーの件で打ち合わせしてきたよ』『いろいろ準備してるから安心してね』と、連絡をくれたり、心のサポートまでしてくださいました。しかも、事務所のイベント『ASOBIEXPO』という復帰の場を作ってくださって、本当にありがたいです。親でもあり、おじいちゃんでもある存在です(笑)」

――今では、新しい学校のリーダーズさんやFRUITS ZIPPERさんといった、アソビシステムのアーティストが多数ご活躍されていますね。

「めちゃくちゃうれしいです。みんなの活躍があったからこそ、私も安心して出産をすることができました。“私の活動が止まる=会社の活動も止まる”と思っていた時期もあって、それが怖かったんです。でも、今はこんなにもいろんな人が活躍してるんだから、任せても大丈夫と思えたからこそ、出産に踏み込めたんだと思っています」

娘の存在が“きゃりーぱみゅぱみゅ”としての活動にも大きな影響を与えた【写真:高田啓矢】
娘の存在が“きゃりーぱみゅぱみゅ”としての活動にも大きな影響を与えた【写真:高田啓矢】

娘の誕生で意識に変化「誰にどう思われてもどうでもいい」

――現在は仕事と育児のバランスはいかがですか。

「今は子育てと活動のどちらも100%でできています。それを両立させてくださっている事務所に感謝です。空き時間に保育園のお迎えに行ったり、夫とも相談しながら、ライブの現場に子どもを連れて行ったりもしています。現場に連れて行くと、いろんな方と遊んでいただけるので、楽しくてうれしいです」

――出産されてから、自分自身への意識に変化はありましたか。

「めちゃくちゃ変わりました。これは黄色信号だなと思ったのが、自分のことはどうでもよくなっちゃうんです。それこそ身なりやおしゃれもどうでもいい。『誰にどう思われてもどうでもいい』みたいな。でも、復帰してステージに立たせていただいた時に、『どうでもいいじゃダメだ!』って思ったんです。きゃりーぱみゅぱみゅである以上、ちゃんと体力やビジュアル面も頑張らないといけない。『どうでもいい』って思っちゃダメだなって。だけど、心の奥底では『どうでもいい』と思い続けています(笑)」

――人の目を気にしなくなったという意味での強さが備わったわけですね。

「そうなんです。誰にどう思われてもどうでもいいからこそ、無敵ですよね(笑)。それまでは『誹謗中傷された』とか、『私のこと嫌いなのかな?』とか思っていましたけど、今はどうでもいいんで、『人生最高!』みたいな気持ちです。髪がボサボサでも、服がダサくてもどうでもいい。子どもが元気にご飯を食べていてくれればそれでOKなんです」

――そんな娘さんは、きゃりーさんの影響を受けたりもされているのでしょうか。

「結構大きいと思います。私が現場でメイクしていただいたり、かわいいお衣装を着させていただいたりするので、興味があるみたいです。この前、マネジャーさんからおもちゃのコスメキットをいただいたんですけど、毎日『見て~』って、パフしたりリップを塗ったりする姿を見せてきます。料理のおままごとはあまりしないで、コスメばっかりです(笑)」

――お子さんの性別が女の子でることも9月に公表されたばかりですね。

「それも隠していたわけではないのですが、今は多様性の時代でもあるので、自分が好きと思うことを好きになってほしかったんです。『女の子です』と公表した時に、本人が苦しい思いをすることがあるかもなと思っていたのですが、もうバリバリの女の子すぎて(笑)。そういったこともあって、公表させてもらいました」

「コーチェラ」出演後には燃え尽きた感覚に陥ったとも明かした【写真:高田啓矢】
「コーチェラ」出演後には燃え尽きた感覚に陥ったとも明かした【写真:高田啓矢】

「ここからのきゃりーぱみゅぱみゅは絶対に面白くなっていく」

――実際にお子さんから刺激を受けることもありますか。

「めちゃくちゃあります。小さな幸せがたくさんあって、娘がポロっと言ってくれた一言がすごくうれしかったり、子どもから学ぶこともたくさんあります。ライブを観てくれている娘の様子も、たまにSNSに載せているんですけど、袖で歌ったり踊ったりしてくれていて、そんな姿を皆さんに、きゃりーぱみゅぱみゅという活動の中で見せられるなんて考えてもいなかったです」

――活動のモチベーションにもつながっているんですね。

「そうですね。正直、2022年に『コーチェラ』に出た時に、ちょっと燃え尽きた感じがあったんです。ハプニングでダンサーさんが出演できず、急遽1人でステージに立たなきゃいけなくなって、めちゃめちゃ追い詰められたんです。でも、いざステージに立ってみたら、すごく楽しくて。1人でも知らない土地でライブができていることに、『私はここまで来たんだ』と過信しちゃった部分も多少あったんだとは思います。それからは、『何をやりたい?』となっても、それ以上の体験がなかなか出てこない。活動もライブも楽しいけど、『果たして自分の幸せってなんだろう』とモチベーションの維持が難しい時期でした」

――その感覚が、お子さんが生まれたことで変わったということですね。

「そうなんです。娘が生まれて、あんなにライブで楽しんでくれて、すごくうれしいです。今年の夏はフェスにもたくさん出演したのですが、遠い場所でも、ファンのみんなが来てくれて、『この人たちのために頑張りたいな』という気持ちにもなれたんです。

 客観的に考えて、きゃりーぱみゅぱみゅの活動としても、子どもが生まれてめちゃくちゃ良かったと思います。プライベートでもそうですが、表現できることが増えたし、何よりリミッターが解除された気がします。これまでだったら、『きゃりーぱみゅぱみゅはこういうんじゃないんで』と断っていたかもしれないお仕事も、『とりあえずやりましょう!』という感覚になれました」

――これまでは、きゃりーぱみゅぱみゅというブランドを守る意識もあったということでしょうか。

「私だけじゃなくて、みんなで積み上げてきたものでもあるので、新しい表現をするにも、『無難にいっておきましょうか』みたいなのは、これまでもありました。でも、“どうでもいい精神”が、その壁をぶっ壊してくれて、いろんな挑戦をさせてくれるんです。時には失敗することもあると思いますが、『失敗しても、それって人生じゃん』と考えられるようになってきました」

――これからきゃりーぱみゅぱみゅとして、どのような景色を見ていきたいですか。

「今後は、お子さんも楽しめるようなコンテンツも考えていけたらいいなと思ったりしています。ここからのきゃりーぱみゅぱみゅは、絶対に面白くなっていくと確信しています。これまでにはない、いろんなきゃりーぱみゅぱみゅを表現していきたいです」

□きゃりーぱみゅぱみゅ 1993年1月29日、東京都出身。2009年に読者モデルとしての活動をスタート。2011年、中田ヤスタカプロデュースによるミニアルバム『もしもし原宿』でメジャーデビューした。その活動は国内のみにとどまらず、これまでに5度のワールドツアーを成功させるなど、海外でも存在感を示している。26年10月2日は、NHK Eテレ『パンどろぼう』のエンディング主題歌『Pang Pang Pang』をリリース。プライベートでは、23年3月に俳優の葉山奨之との結婚を発表、24年10月に第1子となる長女を出産した。

○衣装
WRINKLE BIG SOHULDER JACKET、TWISTED PLEATS SKIRT、NEW JEWELRY PUFF LOAFER(全てMIKIOSAKABE)/ETOILE GLOVES(equalment)

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