21歳の新進声優・永瀬アンナの素顔 15歳で業界入り…探求する自分だけの形「無駄な経験なんて一つもない」

新進声優の永瀬アンナが、今月9日公開の映画『どこよりも遠い場所にいる君へ』(和田純一監督)でヒロイン・秋鹿七緒役を務めている。今年は、17歳の高校生・酒寄彩葉を演じた『超かぐや姫!』がヒット。ブレイクを感じさせる21歳の素顔に迫った。

インタビューに応じた永瀬アンナ【写真:高田啓矢】
インタビューに応じた永瀬アンナ【写真:高田啓矢】

映画『どこよりも遠い場所にいる君へ』でヒロイン

 新進声優の永瀬アンナが、今月9日公開の映画『どこよりも遠い場所にいる君へ』(和田純一監督)でヒロイン・秋鹿七緒役を務めている。今年は、17歳の高校生・酒寄彩葉を演じた『超かぐや姫!』がヒット。ブレイクを感じさせる21歳の素顔に迫った。(取材・文=大宮高史)

『どこよりも遠い場所にいる君へ』は、阿部暁子氏の同名小説が原作の青春ストーリー。秘密を抱えて都会から島にある高校へ進学した月ヶ瀬和希(声・石橋陽彩)は、「神隠しの入り江」と呼ばれる場所で倒れていた秋鹿七緒をその場に居合わせた高津(声・玉木宏)と一緒に介抱。目を覚ました七緒は現在の西暦を尋ねられると「1974年」と答えるのだった。

 永瀬は、原作を中学時代に読んでいた。親友に勧められたのがきっかけだった。

「初めて読んだ時にほれ込んで一気読みしましたが、ものすごい喪失感も感じました。私が全部素直に受け取ってしまう性格なので、『悲しい物語だ』っていう第一印象で終わっていました」

 だが、オーディションに際して読み返し、印象が大きく変わったという。

「読み手にも気づきをもたらしてくれる作品なんだと思えました。和希を信頼している七緒の言葉をあらためてかみしめてみると、未来につながる希望も感じました。それに、この本を教えてくれた友達に恩返しをしたい気持ちもあったので、オーディションの時から個人的には強めの責任感も持っていました」

 オーディション時から、永瀬は直感的な感性を信じてマイクに向かっていた。

「セリフを読み、自分が素直に思ったことをダイレクトに頭から口へつなげていく。そのことを意識していました。原作を読んで以来の思いをぶつけるにはそれが一番。そう思っていたので、余計なフィルターを通さずに出していく作業はすごく楽しかったです」

 今年4月期のテレビ朝日系アニメ『あかね噺』では、落語家を目指す女子高生を演じ、本職の落語家からの稽古を受けるなどストイックな役作りもゆずらない。しかし、今作のアフレコでは、共演者との生きた掛け合いを大切にしたという。

「今回は、10代の男の子や女の子がその時にどう思ったのかをダイレクトに伝えることが大切だと考えました。だから、台本は読み込んでも家でお芝居を固めていかないように意識していました。和希役・石橋陽彩さんたちと掛け合って、初めてそこで形ができるようにしました」

 さらには「この映画のモノローグが少ないところが好きです」と言い、「語りが少ないからこそ、『この時、2人はどんな気持ちだったんだろう』と観客が想像できる余白が生まれていると思います。おかげで、深く物語に没入できる作品になりました」と明かした。

 永瀬が演じた七緒は、74年から現代へ時を越えてやってきた少女。未知の時代に戸惑いながらも、少しずつ周囲に馴染んでいく過程を丹念に表現した。

「七緒は意外と前向きな子です。ただそのポジティブさは、『もう、1974年には戻りたくないから今ここでどうにかしなきゃいけない』という切実な思いからきているんですよね。さらに和希や高津さんと出会ったことで遠慮がなくなっていって、勢いも出るし、人に怒ることもできる素直な子になります。迷い込んでしまった時代で自分はどうすればいいのか。それを必死に考えていると感じました」

 心を開いていく七緒の変化を際立たせるため、技術的な工夫も凝らしていた。

「冒頭の七緒と、後半にかけての七緒では、声の音圧から全然違うんです。少しずつ出力を上げていくようなグラデーションは意識して演じ分けました。今の私自身も『変わりたいけれど変われない』という気持ちが心のどこかにあるんです。でも、七緒は知らない時代で何ができるか分からなくても助けを求めたり、『話を聞いてほしい』と言えたりします。和希との出会いで未来のことも信じられるようになっていく彼女は、『海みたいな人だな』と思います(笑)。包容力があってなんでも受け止めてくれるのに、だんだん感情の出し入れが豊かになっていくのも波みたいです」

 落ち着いた受け答えからは理知的な印象を受けるが、「自分は完全に感覚派」だと笑う。

「以前は人にうまく意図を伝えられませんでした。でも、先輩方の姿を見て、皆さん自分の考えをしっかりと言葉にして言語化されていることに気づきました。本当は感覚派の人って、もっと多いのかもしれないけど、お芝居の意図を伝える時には言葉が必要です。しっかりと言語化する意識を持つようになりました」

「自分だけの形を探していきたい」と語った【写真:高田啓矢】
「自分だけの形を探していきたい」と語った【写真:高田啓矢】

表現者としての理想像は「まだ探し途中」

 周囲の状況を見つめ、対話を重ねていく姿勢は日常で培われたものだという。

「以前は自分のやりたいお芝居ばかり考えていましたが、今は周りの様子が見えるようになって。でも、声優としてだけでなく、自分が子どもから大人になったお陰かなとも思います。声優の現場でも、人として学ばせていただいている感覚があります」

 もともと、演劇や俳優に興味を持って15歳で声優事務所に入所。表現者として目指す理想像について聞くと、屈託のない笑顔で「まだ探し途中です」と返した。

「(声優は)性別の垣根も越えられますし、吹き替えをいただければ外国人にもなれて、人でないキャラクターにもなれます。絵や共演者の方たちと作り上げて、自分の声と絵がカチッとはまった瞬間は気持ちいいですね。憧れの俳優さんもたくさんいますし、これから実写も舞台も、何でもやらせていただきたいと思います。『無駄な経験なんて一つもない』と信じて、自分だけの形を探していきたいです」

 迷いを乗り越えて自らの足で前を向く七緒。その姿は、表現者として歩みを進める永瀬の「現在地」と重なっている。

□永瀬アンナ(ながせ・あんな) 3月31日、東京都生まれ。2021年に声優デビューし、翌年にTOKYO MX『サマータイムレンダ』でアニメ初ヒロイン。23年に第17回声優アワード新人声優賞を受賞。今年はテレビ朝日系アニメ『あかね噺』に主演し、映画『スーパーガール』日本語吹き替え版でスーパーガール役を担当。Netflixからロングランヒットのアニメ映画『超かぐや姫!』では、17歳の高校生・酒寄彩葉を演じた。

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