印旛沼決壊でカミツキガメが急拡大? 「繁殖スイッチが入る」年間最大50倍、脅威の繁殖力に識者懸念

千葉や神奈川など、関東地方を中心に甚大な被害をもたらした台風25号から2週間あまり。22日未明に複数箇所が決壊した印旛沼周辺では、沼に定着しているとされる特定外来生物・カミツキガメの生息域拡大が懸念されている。人への危険性や生態系への影響はどの程度あるのか。複数の専門家に見解を聞いた。

印旛沼決壊で生息域拡大が懸念されるカミツキガメ(写真はイメージ)【写真:写真AC】
印旛沼決壊で生息域拡大が懸念されるカミツキガメ(写真はイメージ)【写真:写真AC】

寿命は約50年、年1度の繁殖期には1組のペアから最大100個の卵を産卵

 千葉や神奈川など、関東地方を中心に甚大な被害をもたらした台風25号から2週間あまり。22日未明に複数箇所が決壊した印旛沼周辺では、沼に定着しているとされる特定外来生物・カミツキガメの生息域拡大が懸念されている。人への危険性や生態系への影響はどの程度あるのか。複数の専門家に見解を聞いた。

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 アメリカ大陸原産のカミツキガメは、1960年代頃からペットとして日本へ輸入・流通。寿命は野生で約50年、飼育下では100年近く生きる個体もおり、年1度の繁殖期には1組のペアから最大100個もの卵が生まれるため、天敵のいない日本の環境では爆発的に増えることが確認されている。

 印旛沼水系ではペット業者の遺棄などにより、78年に生息が初確認。特定外来生物に指定された2005年以降、千葉県により防除・捕獲計画が実施されており、15年に約1万6000頭とされていた生息数は、現在では推定8000頭ほどまで半減しているとされる。

 環境保全の専門家で、テレビ東京系『緊急SOS! 池の水ぜんぶ抜く大作戦』などの番組にも出演する特定非営利活動法人「NPO birth」の久保田潤一氏は、カミツキガメの生態について「水の中にいるときは基本的にはおとなしい性格で、積極的に人を襲うことはありません。ただし、かむ力は非常に強いため、農作業中に気づかずかまれたり、漁具が食いちぎられたりする可能性はあります。また、陸に揚げると攻撃的になり危険です」と説明。「扱いを間違えたり、不注意によって大けがを負う可能性がある生物であることは間違いありません」と注意喚起する。

 危険性もさることながら、それ以上に懸念されるのが、生態系への影響だ。久保田氏は「魚類、両生類、カメ類、甲殻類、貝類、昆虫類、水草や果実まで何でも食べます。また、カミツキガメの駆除が進んだ地域で、条件付特定外来生物のアカミミガメが増えたという報告もあります。池のかいぼりでも、オオクチバスを駆除したらアメリカザリガニが増えたということがよく起きます」と長期的な影響を危惧する。

 実際に行政と協力し、印旛沼水系でカミツキガメの捕獲・保護活動を行うワニガメ生態研究所の荻野要所長は、意外な実態を口にする。

「印旛沼水系のカミツキガメは、どんどん小型化しているんです。本来40~50センチまで成長する種類ですが、今定着しているのは20センチくらいのやつがほとんど。日本の狭い環境では、原産国ように大型化できない。逆に言えば、完全に日本の環境に適応しているということ」

 荻野氏は、小型化に伴い、性質が大人しくなり繁殖力も低下傾向にあるというカミツキガメが、今回の水害をきっかけに、生息域や個体数を急拡大させる可能性があると指摘する。

「元来、大規模な災害が新天地進出のきっかけになるのは自然界ではよくあること。カメにも動物の本能がある。今回の災害で危機感を感じて、環境要因で弱まっていた繁殖スイッチが再び入ることは大いにあり得る。あれだけの範囲に水があふれたのだから、より広範囲に生息域を広げることも、すでに広がっていたカメが故郷の印旛沼に戻ってきて、これまで以上に大繁殖することも考えられます」

 行政間の連携も不可欠だ。駆除に積極的な千葉に対し、印旛沼水系上流の埼玉では予算の兼ね合いなどから、なかなか防除が進まない事情があるという。その名の通り、かみつく力が強く、人間の指をかみちぎってしまうこともあるというカミツキガメ。今後の影響が懸念される。

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