「地獄絵図」台風25号で今なお孤立、SNSで自衛隊派遣要請も「来るわけない」 心ない声に住民が怒り

台風25号により大規模な冠水被害に見舞われた千葉・酒々井町(しすいまち)の「開運団地」では、発生から10日あまりが経過した現在もなお地区へと続く道路が冠水、住人たちが孤立状態に陥っている。水が引かない原因の一つが、大雨で崩壊し水路をふさぐ「盛り土」の存在。影響が懸念されながらも長年放置されてきた「人災」に直面し、不便と不安に耐え続ける現地住民の切実な声を聞いた。

台風25号により大規模な冠水被害に見舞われた千葉・酒々井町の「開運団地」【写真:ENCOUNT編集部】
台風25号により大規模な冠水被害に見舞われた千葉・酒々井町の「開運団地」【写真:ENCOUNT編集部】

自然豊かな環境に魅せられ、9か月前に家族で東京都内から「開運団地」へ移住した男性

 台風25号により大規模な冠水被害に見舞われた千葉・酒々井町(しすいまち)の「開運団地」では、発生から10日あまりが経過した現在もなお地区へと続く道路が冠水、住人たちが孤立状態に陥っている。水が引かない原因の一つが、大雨で崩壊し水路をふさぐ「盛り土」の存在。影響が懸念されながらも長年放置されてきた「人災」に直面し、不便と不安に耐え続ける現地住民の切実な声を聞いた。(取材・文=幸田彩華)

元坂道メンバーの熱烈なクルマ愛「最初の一台は国産車」…現在の愛車を告白(JAF Mate Onlineへ)

「この街の自然が大好きで、ここに移住を決めたんです。盛り土の問題自体は2016年頃からあったと入居後に自治会で聞いていましたが、正直『自分には関係ないかな』と思っていました。でも数か月後にこんな状況になってしまい……もっと詳しく聞いておけばよかった」

 自然豊かな環境に魅せられ、9か月前に家族で東京都内から「開運団地」へ移住してきたという40代の男性。越してきたばかりの自宅は床下浸水の被害に見舞われており、生活が一変した現在の状況に頭を抱える。

 台風の到来直後から、水位は数時間単位で上昇。男性は家族を避難所へ避難させ、自身は家を守るために2階に留まり続けていたと振り返る。

「いつ浸水するかわからない恐怖はありましたが、家を守りたいし、団地に残っている住民の方もいるなら一緒にいようと思ったんです。でも、地獄絵図でした。台風の前は近所の方が『野菜持っていきな』と言ってくれたり、ささやかな日常がありましたが、台風翌日からはそのすべてが奪われてしまった」

 備蓄により食料こそ確保できているものの、生活再建にはインフラの停止が重くのしかかる。現在、地区では排水機能がストップしており、逆流の恐れがあるため、洗濯はもちろん、水を使うこと自体が制限されている。また、道路は冠水しており、徒歩で山を越えなければ地区へと立ち入れない状況が続いている。

「火事を出したり体調を崩しても、消防車や救急車すら入れない。なるべく火を使わず、非常用の体拭きタオルや水のいらないシャンプーを使って過ごしています。ここ数日は鼻をつくような、こげ臭い独特の異臭も漂い始めました」

 男性は被害発生から現在に至るまで、水位の上昇や不測の事態に備え、ほとんど眠れない日々を過ごしている。

「水位が上がる恐怖と、この団地を守るのは自分しかいないという思いがあり、寝るに寝られない。いつ何が起きても動ける体勢をとっています。みんなが困っているのに、自分だけ『困った』なんて言いたくありません。水位をチェックして、避難所にいる人たちに『今日、水が下がったよ』と少しでも安心できる報告を作りたいんです」

 元々は見知らぬ人にもあいさつが飛び交い、手作りの野菜を分け合うような温かい地域。避難所に顔を出すと、高齢の住民たちが「あなたが来ると元気をもらえるわ」と笑顔を見せてくれることが、支えになっているという。行政には被害発生直後から救援を求め続けているが、周辺一帯が大規模な被害に見舞われていることもあり、復旧は一向に進んでいないのが現状だ。

「被害直後、隣の佐倉市や成田市での河川決壊などが大きく報道され、上空にはヘリコプターがたくさん飛んでいました。でも、こちらは『どんどん水位が上がっている』と訴えても手立てがないと言われ、一機もヘリが来なかった。あの時は本当に悔しかったです。一機でも上空に来てくれれば、この状況に気づいてくれたはずなのに」

 助けを求めようとSNSで「自衛隊を出してほしい」と発信した際には、「来るわけない」といった心ないコメントも寄せられたという。いつ水が引くのかという保証もないまま、日々恐怖と孤立感に苛まれている。

「本当に悔しいし、悲しかった。最初は自然災害だと思っていたんですけど、今回、人災と騒がれていることを知り、腹立たしい思いも抱いています。防げたはずの被害を防げなかったのがものすごく悔しい。これを機に、国や自治体はいろんな危険箇所に目を向けてほしい」

 今も不安で眠れぬ日々が続く開運団地。一刻も早い対応と、被害を繰り返さないための対策が求められている。

次のページへ (2/2) 【写真】台風通過から11日以上 千葉・酒々井町の「開運団地」の様子
1 2
あなたの“気になる”を教えてください