「母がいなかったらここにいない」 戸田菜穂が明かす女優の原点、幼少期に見た『スタンド・バイ・ミー』の記憶
俳優・戸田菜穂が、世界的漫画家・谷口ジローさんの名作を日本人の監督・キャストで新たに実写映画化した『遥かな町へ』(10月9日公開、監督・錦織良成)に出演した。鳥取県倉吉市を舞台に、中年の主人公(大谷亮平)が少年時代へタイムスリップし、家族や自らの過去と向き合う物語で、主人公の母・和江を演じた。戸田が倉吉での撮影、そして実母との思い出を語ってくれた。

台本と共演者との呼吸を大切に…映画『遥かな町へ』で演じた芯の強い母親役
俳優・戸田菜穂が、世界的漫画家・谷口ジローさんの名作を日本人の監督・キャストで新たに実写映画化した『遥かな町へ』(10月9日公開、監督・錦織良成)に出演した。鳥取県倉吉市を舞台に、中年の主人公(大谷亮平)が少年時代へタイムスリップし、家族や自らの過去と向き合う物語で、主人公の母・和江を演じた。戸田が倉吉での撮影、そして実母との思い出を語ってくれた。(取材・文=平辻哲也)
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『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』(2010年)や『たたら侍』(2017年)など島根県を舞台にした映画で知られる錦織監督作品への出演は『高津川』に続き2度目。
戸田は「とてもやりがいのある役だと思ったので、是非演じたいと思いました」と振り返る。役に引かれたのは、母親という一面だけではなかった。
「戦時中の悲しい過去もありながら、芯の強さや家族への愛のある素敵なお母さんだと思いました。だからこそ『母さんあなたは幸せだったのでしょうか』と、主人公が思い続けるのでしょうね」
撮影は前年の夏の終わり。舞台となった倉吉の町には、どこか懐かしさを感じたという。
「私の生まれ育った町(広島市)にもちょっと似ている感じがあって、小京都のような雰囲気というか、白壁があったり川が流れていたり、昭和が本当にいい形で残っているなと思いました」
映画には、玉川沿いに白壁土蔵や赤瓦が並ぶ倉吉の風景が映し出される。撮影はオールロケ。さらに昭和の空気をよみがえらせるため、地元の人々の協力を得ながら美術スタッフは徹底して町を作り込んだ。
「街並み全部、本当にアスファルトも剥がして砂利道に変えてくださったり、街ぐるみで。大きな体育館にエキストラとして町の方々が集まり、何時間も文句一つ言わず待っててくださって。『みんなで作った映画だな』というのが印象的です」
劇中にはボンネット型のバスが走り、通りには大勢の人が行き交う。CGで作った昭和ではない。実際の町を使い、人の力で時代を作った。
「あの時代のあの街並みを再現してくださった素晴らしい美術の方たち、そこで演技ができてただ幸せです」
完成した作品を見たのは試写室だった。
「ドキドキしながら見ました。モニターチェックとかはないので『どんな感じだったのかな』って、最初の1回目はドキドキですね」
錦織監督の現場も、映画のたたずまいそのものだったという。
「いつも穏やかで怒った姿を見たことがないんです。柔らかい温かい空気で皆さんを包むような包容力がある方で。それがすごく映像に出ているなと思いました」
戸田自身、役作りに決まったルーティンは持たない。
「いかに台本と原作から読み取るか、それが大事なこと。あとは共演者の方との呼吸や空気感というか、情熱を持っていらっしゃる方と一緒だとこっちも燃えるというか」
作品で演じた和江は、子供に深い愛情を注ぐ母親だ。戸田の女優としての原点をたどっても、そこには一人の母親の存在がある。広島で育った戸田に、映画や芸術の楽しさを教えたのは実母だった。
「母は私の今回の役とはまた違って、今も韓国語を勉強していますしフランス語を勉強したり、常に好奇心があるというか。その影響もあって映画が好きになったんです」

映画好きは母の影響「どういう世界なのかな、楽しそうだな」
母親はカトリーヌ・ドヌーヴやアラン・ドロンが好きだった。戸田も幼い頃から、母と一緒に映画に親しんだ。
「『母が夢中になっている映画ってどういう世界なのかな、楽しそうだな』って。母のおかげですかね」
映画だけではない。広島を訪れたバレエ団、日本の伝統芸能にも連れて行ってくれた。
「本物に触れさせてくれましたね。感性を大事にしてくれて、3人きょうだい皆共に平等に。母がいなかったらここにいないかもしれないですね」
テレビでは『北の国から』を一緒に見た。映画館にもよく足を運んだ。当時は二本立ても珍しくなかった。
「『スタンド・バイ・ミー』とか。二本立てで確かチャッキー(『チャイルド・プレイ』)が一緒だったんです(笑)。感動した後に怖い、みたいな。気持ちが忙しい(笑)」
広島の街中の映画館では『ネバーエンディング・ストーリー』も見た。映画だけでなく、バレエや日本の伝統芸能にも触れた。戸田の言う「本物」を、母は惜しみなく見せてくれた。その母から受け取ったものは、今度は戸田から2人の娘へと渡っている。
□戸田菜穂(とだ・なほ)1974年3月13日生まれ、広島県出身。1990年「第15回ホリプロタレントスカウトキャラバン」でグランプリを受賞し芸能界入り。91年に『五月の風』で女優デビューを果たし、同年『葡萄が目にしみる』でドラマ初主演。93年NHK連続テレビ小説『ええにょぼ』のヒロイン役に抜てきされ全国的な人気を得る。以降、ドラマ『ショムニ』シリーズ、『人生は上々だ』、『続・星の金貨』、『JIN-仁-』、映画『女はバス停で服を着替えた』、『沈黙のパレード』など多数の話題作に出演。
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