「コロコロコミック」を支える独自の作法 『イナイレ』漫画家・やぶのてんや氏が語る“ルール”と想定読者
『イナズマイレブン』『デジモン』シリーズなど、数多くの子ども向けヒット作を手がけてきた漫画家・やぶのてんや先生。その根底にあるのは、児童誌ならではの「作法」と、想定読者に「あのころの自分」を置くまなざしだ。「月刊少年ジャンプ」(集英社)から「コロコロコミック」(小学館)へ軸足を移した先生に、長く子どもたちに支持され続ける技術と、オリジナル作品への思いを聞いた。

月刊少年ジャンプからコロコロへ…30代後半の決断
『イナズマイレブン』『デジモン』シリーズなど、数多くの子ども向けヒット作を手がけてきた漫画家・やぶのてんや先生。その根底にあるのは、児童誌ならではの「作法」と、想定読者に「あのころの自分」を置くまなざしだ。「月刊少年ジャンプ」(集英社)から「コロコロコミック」(小学館)へ軸足を移した先生に、長く子どもたちに支持され続ける技術と、オリジナル作品への思いを聞いた。(取材・文=関口大起)
2000年代半ば、『デジモン』シリーズのコミカライズを経て、やぶの先生は「月刊少年ジャンプ」で次の連載企画を立ち上げていた。しかしその矢先、雑誌の休刊に直面する。
「『月刊少年ジャンプ』が休刊し、それに変わって少し垢抜けた感じの『ジャンプSQ』が立ち上がりました。ただ、僕の漫画のスタイルとは違うなと。その先の選択肢として、青年誌で描くか、それとも児童誌か、ということで悩んだのですが、結局児童誌を選びました。青年誌はその先の未来でもチャレンジできるけど、青年誌で一度書くと、そこから児童誌にチャレンジするのは難しいだろうと思ったのです」
当時、やぶの先生は30代後半。その決断の先にあったのが、「コロコロコミック」で連載する『イナズマイレブン』シリーズだ。キャリアを左右する決断だったといっていいだろう。
「『コロコロ』で描き始めて最初に感じたのは、独自の作法ですね。セリフを簡潔にまとめるとか、情報を分割しすぎないとか、逆にアクションは分割して見せたほうが伝わりやすいとか」
大人がなんとなく「コロコロっぽい」と感じるあの表現は、実はこうした“ルール”に支えられている。そして、その技術がもっとも生きるのが、コミカライズの現場だ。
「たとえば1話に収まりきらないような大ボリュームのシナリオが送られてきたとき。それをまとめ上げることに対して、腕の見せどころだなと思うのです」
また、常に「はじめての読者」の存在を意識することも重要だという。児童誌の読者は、毎号欠かさず買って読んでいるとは限らない。またコミカライズ作品は、そのコンテンツと子どもの最初の接点になるかもしれない、という責任が生じる。たとえ、原作となるゲームやアニメが存在していたとしても、その子どもにとっては漫画が出会いになるかもしれないのだ。

想定読者は「あのころの自分」
長らく児童誌での活躍を続けるやぶの先生だが、自身が歳を重ねることで、作品と読者の求めることとの間に乖離が生まれることはないのだろうか。児童に支持される秘けつを聞いた。
「僕の中にいる想定読者が、当時の僕なんですよ。幼い頃、病気がちだったり、親戚の家に預けられている時期があったりしました。その頃の僕を楽しませられるか、勇気づけられるのか、という視点は常に持っています」
先生はデビューから30年を超え、時代を代表するコンテンツに携わってきた。現在は『イナズマイレブン 英雄たちのヴィクトリーロード』の連載に全力を注いでいると言うが、まだまだ挑戦したいことがあると語る。
「コミカライズを中心に歩んできたキャリアですが、オリジナル作品も手掛けたいという気持ちは常に持っています。僕自身、もっとも自分らしさを発揮できたのは、2014年から4年ほど『コロコロイチバン!』で連載した『ボッチ わいわい岬へ』という作品です。そういった児童書の世界観で、たくさんの子どもに愛される作品を描きたいと思っています」
児童漫画の作法を身につけ、「あのころの自分」を想定読者に描き続けてきたやぶの先生。デビュー30年を超えた今も、『イナズマイレブン』の連載と並行して、児童書の作画を手がけるほか、オリジナル作品への情熱も燃やしている。コミカライズで培った技術が、これから生まれる物語にどう注ぎ込まれるのか。先生の「ご期待ください」という言葉を胸に、その日を待ちたい。
○新刊情報
10月28日
『イナズマイレブンGO』完全版上巻
『イナズマイレブン 英雄たちのヴィクトリーロード』2巻
11月28日ごろ
『イナズマイレブンGO』完全版下巻
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